●遺留分[序論]・・・<遺言に関係なく、相続人が最低限相続できる割合
>が遺留分。<一定の相続人が最低限相続できる割合のこと>である。
人は、生前でも、死後でも自分の財産は、<遺言>で自由に処分でき
る。しかし、相続人でも遺言がないので、貰えない相続人が出て来る。そ
こで相続人は、全て貰えるようにしよう、という制度が「遺留分の制度」で
ある。つまり、“私有財産処分の自由の原則”もとで、先祖伝来の財産
は、子孫が受け継ぐものという家族主義の要請に配慮した制度だと言わ
れている。
―― <遺留分>は請求しないと取り戻せない ――
「遺留分」は、相続人に認められた権利であるが、必ず遺しておかなけれ
ばならない、というものではない。遺留分を侵害する生前処分や遺言で
も、無効となるわけではなく、故人の意思通り効力が発生する。但し、“遺
留分を侵害された相続人”は、処分された財産を<遺留分を保全するの
に必要な限度>で“減殺を請求することができる”(民法1031条)ので、
その範囲で修正される仕組みになっている。・・・
※例えば、妻と長男と姉と妹の4人が、相続人で、亡父・亡夫が、「全財産を長
男に相続させる」と遺言した場合、この遺言は有効である。だから<遺産分
割の協議>をする必要はなく夫(父)の財産は、死亡と同時に【長男の所有】
となる。その結果、妻と姉、妹は、何も相続できなくなるが、民法が定めた期
間内(遺留分が侵害されたことを知ってから1年以内)に長男に対して“遺留
分相当額を返せ”と請求して自分の遺留分を取り戻すことはできる。1年以
内に請求しないと時効によって消滅する(民法1042条前段)又、遺留分が
侵害されたことを知らなくても相続の開始時から10年を経過すると権利が
行使できなくなる(民法1042条後段)。遺留分の行使は相続人の自由であ
る。
※「遺留分権利者と遺留分の割合」は、兄妹姉妹以外の相続人(配偶者、子・
孫などの直系尊属(民法1028条)。個々の相続人の遺留分は「法定相続
分」で分割した割合である。 ※遺留分は、被相続人(父)の死亡時の財産
に、贈与した財産の価格を加え、その中から<債務の全額>を控除して算
定される(民法)1029条の1項)。
※「遺留分の対象となる財産」・・・
1.相続開始前1年間にした贈与(民法1030条前段)
2.遺留分権利者を害することを知ってなした贈与(民法1030条後段)。
3.不相当な対価の有償行為(民法1039条)
4.共同相続人の特別受益、結婚や養子縁組のため、または生計の資本と
しての贈与(民法1044、903、904条)。2.3.4.は、1年以上のもの
でも算入される。