「挽歌」 陶淵明
生有れば必ず死有り 早く終わるも命の促(ちじ)まるには非ず 昨暮は同じく人たりしに 今旦は鬼録に在り 魂気は散じて何(いず)くにか之(ゆ)く 枯形を空木に寄(あず)く 嬌児は父を索(もと)めて啼き 良友は我を撫でて哭す 得失は復(また)知らず 是非を安(いずく)んぞ能(よ)く知らん 千秋万歳の後 誰か栄(ほまれ)と辱(はじ)とを知らん 但(ただ)恨むらくは世に在りし時に 酒を飲んで足るを得ざりしを
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生きていればきっと死ぬ。あっという間に死ぬこともある。が、それはそれ。運命に従うしかない。昨日までは人間だったのが、今日はもう亡者の名簿に載っている、ということもある。死ねば我が魂は、我を去って何処へ行ってしまうのだろう。亡骸は木製の棺に収められて悄然としているしかない。そうなれば、幼い我が子は父は何処へ行ったかと探して泣くばかり。親友は亡骸に手を延べて号泣する。どう生きたかの判断、是非善悪得失は人に預けよう。千年も万年も栄華の思いが続くこともないし、悪口を言われ続けることもあるまい。
酒を十分に飲み尽くせなかったこと、それだけが心残りと言えば心残りだ。
(さあさあ、飲もう飲もう。今夜は飲もう)