猛暑の夏がやって来た。室内といえど暑くて暑くて、あえぎあえぎしてしまう。上半身は裸でいる。弟の見舞いに行って来た。もうずいぶん楽になったようだ。同室の方から聞いたというおいしい魚料理屋さんに、退院したら是非行ってみたいと言う。お腹も空くようになっているらしい。ここまで回復を果たしているのが嬉しい。病院の中は冷房が効いていて涼しい。今しばらくはここで暮らした方が夏ばてにならずにいいよね、とさぶろうは言ったけれども、弟は帰心矢の如しのようだった。本屋さんから伊藤健太郎著「親鸞聖人に学ぶ」を買って来て届けた。傷口もふさがり、痛みからも遠離って、幾分か退屈を覚えているようだった。まだ傷口へ通した点滴チューブが外れていなかった。
今日の湿度は77%。じめじめする。むしむしする。夏本番だ。外に出て農作業をするのは無理だ。室内に止まって安楽を決め込む。それでも暑い。立ってお風呂場に行き、窓を開放し、裸になって冷水摩擦をする。ごしごし。これで汗を拭き取る。皮膚が真っ赤になる。体温が一気に下がる。さっぱりする。下着を着替える。着替えた下着をじゃぶじゃぶ洗う。固く絞って日光に乾す。夏風が吹いて来てこれを乾かして行く。樫の木の木陰のあたりで蝉が鳴いている。
これだけのことを、さぶろうはやってみて、ふっと安楽が過ぎていはしないかと反省をした。炎天下で一日中働いておられる方がたくさんなのに、さぶろうはひとり黙然と安楽を決め込んでいる。老いているという理由を旗にしてたなびかせているのが、なんだか申し訳なく思えてきた。
「現在未来天人衆(げんざいみらいてんにんしゅう) 吾今慇懃付属汝(ごこんおんごんふぞくにょ) 以大神通方便度(いだいじんづううほうべんど) 勿令堕在諸悪趣(もつりょうだざいしょあくしゅ)」
世尊(釈迦如来)が地蔵菩薩にお願いをしておられます。天界と人界に住む衆生のことをあなたに付属します、と慇懃(丁寧)にお願いをしておられます。現在と未来に亘ってお願いをしておられます。あなたの絶大な神通力を方便としてフル活用をして衆生を救ってくださいよ、地獄餓鬼畜生の悪趣に堕ちないように導いて下さいよと重ねてお願いをしておられます。
地蔵菩薩は畏まって世尊の願いを承り、「我亦百千方便 度脱是人 於生死中 速得解脱」とお答えになって、約束をなさいました。
「はい、わたしは百千万の方便を駆使して、天界、人界の衆生をお救いいたします。彼らが生きているときも死んで行くときも、すみやかに生死の解決が得られるようにいたします」と約束をなさいましたので、世尊は安心をして涅槃にお入りになりました。
この経典は「地蔵菩薩本願経」という経典です。仏さまと菩薩さまとがわたしたちのことをここまで案じておられたのです。
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そしてその通りに事が運んで、さぶろうがここに無事息災に暮らしを立てています。お地蔵様は約束通りに百千万の神通力を駆使しておられますが、さぶろうにはそれは見えていません。さぶろうが三悪趣(地獄界・餓鬼界・畜生界)に堕ちないようにと日夜精進努力を続けておられますが、さぶろうにはそれも見えていません。でも、この救済策の方便をフル活動させておられます。さぶろうが何にも知らないでも、感謝のこころを起こさないでも、それでもおかまいなしです。
今日は青々とした夏空がさぶろうの頭上に広がっています。この青空をさぶろうは見上げます。さぶろうのこの見上げる力の背景にあるのが地蔵菩薩の神通力です。これでさぶろうは爽やかです。ここでさぶろうは一言二言三言、お地蔵様のお名前を呼んで、ありがとうございますを申し上げてみました。
おはようございます。からりと晴れました。すっかり夏空です。青々としています。今日は気温が32度cまで上がるようです。網戸を通して、風がそよろそよろと吹き入れてきますが、それでも暑さを感じます。扇風機がほしいくらいです。
昨日の夕方、サイクリングを決行しました。城原川の川土手をJRの鉄橋線路まで南下して、そこから西へ向かい、利田の聚落で北へ進路を変え、日ノ隈公園を通り、山の裏手に出て戻りました。坂道が続くと息が切れそうになりました。5段階ギアのもっとも軽いギアにしてペダルを漕ぐのですが、なにせ片足は麻痺していますから、添えているだけ。右脚だけがフル回転をせねばなりません。途中の民家の庭からこぼれるようにしてノウゼンカズラの花が咲き誇っているのを見かけました。木槿もあちこちに咲いていました。今日は足の脹ら脛や股が筋肉痛を起こしています。日頃使っていなかったからでしょう。でもここまで体調が回復をしています。嬉しいです。