The Game is Afoot

ミステリ関連を中心に 海外ドラマ、映画、小説等々思いつくまま書いています。

グラナダ版『ボヘミアの醜聞』再掲 :(1) 

2018-02-18 |  ∟グラナダ版SH
グラナダ版 ”A Scandal in Bohemia ”REVISION : (1)

The Adventure of Sherlock Holmes
(1984年)

「ボヘミアの醜聞」はグラナダ版として最初に放送された記念すべきエピソードであると同時に、
BBC版「シャーロック」S2E1の”A Scandal in Belgravia”『ベルグレーヴィアの醜聞』の基になった
作品でもあります。

そんな訳で拙ブログで最初に取り上げたグラナダ版でしたが、当時ブログを始めたばかりの初心者
でもあり非常にお粗末でザッと概略を書いただけ、そして古い映像しか手に入らなかったので画像
もお粗末というお恥ずかしい記事となっていました。
今回映像もデジタル・リマスター版が手に入った事もあり もっと詳しく書き直そうと考えました。
内容は以前と重複する事もありますが、お見逃し下さいマセ。
やり直し!です。

”A Scandal in Bohemia” 『ボヘミアの醜聞』は 先にも書きました様にグラナダ版として最初に
放送された記念すべき作品ですが、撮影は『美しき自転車乗り』、『まだらの紐』、『海軍条約
事件』が先になされており実質的には4作目となっていた作品です。

これまで特に書いた事がないのですが、今回はキャストを :
監督 : ポール・アネット
脚本 : アレキサンダー・バロン
出演 :
シャーロック・ホームズ : ジェレミー・ブレット
ジョン・ワトソン : デヴィッド・バーク
アイリーン・アドラー : ゲイル・ハニカット
ボヘミア国王 : ウルフ・カーラー
ミセス・ハドソン : ロザリー・ウィリアムズ

以前も触れましたが、この作品で登場する”Irene Adler”ですが、BBC版等でも”アイリーン”と
表記されていますが、作品中の発音を聞いていると”エレイナ”、又は”アイレーナ”に近いよう
に聞こえます。 ただ、このところずっと”アイリーン”で慣れ親しんでいるので 今回も”アイ
リーン”表記させて頂きます。


冒頭のシーンは、屋敷に侵入して家探しをしている盗賊を果敢にも拳銃で追い払うアイリーン・
アドラーが描かれています。
 これは正典には無い部分ですが、グラナダ版では彼女が美しいだけでは無く 勇気がある
女性である事を印象付ける意味で加えられたそうです)

そして、正典通りワトソンのモノローグで始まります。
『シャーロック・ホームズにとって彼女は常に”The Woman”「あの人(ひと)」であった。美し
く謎多きアリーン・アドラーだ』

ワトソンは数日間田舎に出掛けていたが、雨の中不安を抱えながらベーカー街に帰宅します。
『1人にしておくと心配なホームズ』のモノローグと共に 雨にもかかわらず開けっ放しの窓を見
上げるワトソン。
 正典では「4人の署名」でメアリー・モースタンと結婚後、別に住んでいたワトソンですが、
グラナダ版ではワトソンを結婚させなかった為この様な設定にした様です)。


雨に濡れて帰宅したワトソンに対して、「古傷にさわりますよ」と心配するハドソンさんに、朝か
ら何も食べていないので直ぐに夕食を頼むワトソン。
 ここでさり気なくワトソンの古傷に触れています。これは、「緋色の研究」にもある様にア
フガン戦争で負傷した事を指しているのですが、グラナダ版では残念ながら「緋色の研究」は製作
されていないので、ここで正典には書かれていないエピソードとして挿入されたのだと思えます)


部屋に入ると物憂げに暖炉の前に膝を抱え込み座るホームズを見て不安を抱くワトソンが見つけた
のは引き出しにある注射器。
JW : 今夜はモルヒネか、それともコカインか?
SH : そうだな、コカインの7パーセント溶液を勧めるよ。君もどうだ?
それを聞いたワトソンは、お説教モードに入ります

JW : 友人として、又医者としても身体を痛めつける習慣は許せん。 せっかくの頭脳が台無しだ。
と云うと、
SH : 精神が浄化され,高揚する
JW : そうか、だがいずれ崩壊する

この後、ホームズは探偵としての自分の考え方を披露します。 ( この部分も正典には無い部
分ですが、初作品でもありホームズ像を示したオリジナルシーンだと思われます。)


「私の精神は渋滞を嫌う。事件をくれ。仕事をくれ。難解な暗号が必要だ。そうすれば精神の安定
を保てる。人工的な刺激剤も必要ない。平穏な日々等死んだも同然だ。心の高まりが欲しい。世界
中で私しかやっていないこの仕事を選んだのもその為だ。」
「この世で一番の私立探偵か?」と問うワトソンに、
「ただ一人の諮問探偵だ。名声は期待しない。事件に出会う事こそ最高の報酬なのだ」とホームズ。
そして、「引き出しを閉めろ(注射器が入っていた)。誤診だったな、先生。刺激剤ならここにあ
る」と云って懐から手紙を出します。
今朝届いたという手紙をワトソンに読むように言います。
そこには、日付も署名も無く 今夜7時45分に”ある紳士”が訪ねる事。極めて深刻な事態を相談
したく 欧州の王族間でも信用度の高いホームズを極秘で訪問する旨が書かれていました。


ホームズはワトソンにこの手紙から推測出来る事を尋ねます。

書き手は男性、高級な紙を使っている事から富裕階級である。
紙をかざしてみると透かしに”EgPGt” 。 早速資料を出して調べると、これはボヘミアの
製紙工場で作られたものであり、差出人は動詞の使い方の不自然さからボヘミアのドイツ人ではな
いかと推測します。( ボヘミアとは現在のチェコの西部・中部地方を指す歴史的地名だとのこ
とですので、このあたりの状況はBBC版シャーロックのS1E3 ”The Great Game”で ピンクの電話
の送り主を推理するシーンで踏襲され、封筒に用いられた紙がチェコ製であるとして引用されていま
した。)



そんな時馬車が到着。 その馬車からも相当なお金持ちでありそうだとホームズ。
極秘の依頼だからと同席を辞退するワトソンに, ホームズは同席して欲しいと ”I am lost without my
Boswell”「僕のボズウェルがいないと困る。← 僕の記録者には居て欲しい」( James Boswell
は『Samuel Johnson』の伝記を書いた英国の伝記作家。この事からホームズがワトソンの事を『忠実な
伝記作家』と云う意味で云っている。

そして、BBC版でも同じ”The Great Game”では、『僕のブロガーが居てくれなくては・・・』、そして
”The Abominable Bride”『忌まわしき花嫁』では、『僕のボズウェルも腕を上げたもんだ』みたい
な表現で使われていました)


ホームズはそこいらじゅうに散らかっていた書類等を隅に片付け(隠し?)ていると、そこへ慌てふた
めいたハドソンさんが止める間もなくマスクで顔を隠した一人の紳士が入って来ます。







・・・・・ to be continued です。



→ グラナダ版『ボヘミアの醜聞 再掲 : (2)

● 『グラナダ版シャーロック・ホームズ』 : Index 




6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
懐かしいですね (Misty)
2018-02-21 21:05:17
こんばんは。
私がグラナダ版を見たのは、Γシャーロック」にはまってからだったので、ほんの数年前ですが…NHKのリマスター版が放映されたのを喜んで見ていたのが、何だか懐かしいです。…といってもまだ全部見てないという体たらくですが(汗)このエピソードは最初に見たので、やっぱり印象深いです。アイリーン、きれいで凛々しいですよね。私は吹き替えで見たので、発音わ分かりませんが…こういうのって、これだけの有名作品だともう昔からの定番の訳にするものなんでしょうか。レストレードとかもそうですよね。

私は最初にこれを見たとき、椅子の上で足を抱え込んでるホームズが妙に可愛くて驚いてました。BBC版はかなりデフォルメしてあるんだろうと思ってたら、忠実に描いてもこういう人…?という感じで。事件がないとクスリに手を出してしまう危うい面も、最初のエピソードでちゃんと出してたんですね。何だかグラナダ版スタッフの気合い入ってる感じがします。ワトソンに精神的に頼ってそうで、それをワトソンも分かってて…それが安定していて、いいですね。
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>懐かしいですね (Yam Yam)
2018-02-21 21:54:06
Mistyさん、こんばんは。
以前凄くいい加減に書いたので反省の意味を込めて書き直しました。 記念すべきグラナダ版最
初のエピソードに対して失礼ですもんね(汗)
ワタクシもこのエピソードは凄く印象深いです。 
そうなんですよね~、このアイリーンは凛とした美しさと気品があって 正典のイメージに一番近
い様な気がして 他のどのアイリーンよりも好きなんです。

発音なんですけど、アイリーンもですが 仰る通りレストレードも凄く気になっているんです。
確かに昔最初に翻訳した方がレストレードにしたんでしょうね。 どう聞いてもレストラードですよ
ねぇ。
何度もひつこいですが、グラナダ版は本当に正典に忠実で、内容ばかりでなく姿、風景描写等も
パジェット版挿絵と全く同じですもん。 ワトソンとの関係は正典より親密な感じがしますけど・・・。
この塩梅が良いんですよね。
ジェレミー自身も相当ホームズ研究をしたようですし、ホントグラナダ版のスタッフは皆気合が
入ってます(どこかの誰かももっと見習ってほしかった。って、又言っちゃった)

ところで、NHK放送分はクスリの描写や注射器のシーンはカットされていたそうですね? 
色々見聞きするところによれば NHKで放送した時は他も随分大幅にカットされている場合が
多いようです。
このところAXNミステリーでもずっと再放送していますが(吹き替え版)、その様なカットあまりな
い様な感じがしますよ。
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Unknown ()
2020-08-08 16:57:23
はじめまして、今AXNミステリーでグラナダ版シャーロックホームズを視聴しています漣と申します。何十年も前に一度観た記憶があり、ところどころ場面を覚えていたりしていたのですが、今回最初から見てすっかり虜になり、DVDを揃えていっているところです。
以前観た時は気づかなかったのですが、ジェレミー氏がこんなに艶かしい色気がたっぷりの役者さんとは思いませんでした。体のシルエットがバレエダンサーのようにしなやかで綺麗ですね。私はワトスン役はハードウィック氏の方が役者としては上手いと思いますが、ドラマ全体の作り込みにうまくハマっていると思うのはバーク氏の方で、繰り返し見ているのは最初の13話までが多いです。初代ワトスン君は男気があってちょっと単純でインテリ英国紳士で、役柄としては演じるのはかなり難しかったと思います。(しかも実はすごい男前!)ですから「まだらの紐」のワトスンは脚本上間抜けすぎるキャラにされていて、どうにも好きではありません。
極め付けは「入院患者」の序盤で床屋からの帰りに腕を組んで二人で歩く姿、もうひっくりかえってしまいました、笑。大好きなシーンです。
長文失礼しました、他のエピソードも是非ブログにアップしてください。楽しみにしております。
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>Unknown (Yam Yam)
2020-08-08 19:39:14
漣さん、初めまして。
大分前の記事に辿り着いて頂き有難うございます。
AXNミステリーで再放送しているせいか グラナダ版記事ご訪問下さる方が随分増えているのは気付い
ていました。私も時間が許す限り再試聴して居ります。 随分昔に観て以来何度観直す事やら・・・・。
忘れているエピソードもあり 再放送ある度につい又観てしまいますし、DVDも何枚か手元に持って居り
ます。

本当にジェレミーは麗しいし、手の芝居にも随分気を使ったようですので動きも美しいですね。
でも、後半は病の影が見え隠れして、面代わりした様子を見るのが辛いですが・・・・。
漣さんと同じですが、初代ワトソンのデヴィッド・バークは男気があるワトソンだし、二代目のハードウィック
は心優しい部分もあり、しっかりホームズを理解している 心優しいワトソンの様に感じます。 何と言って
も『空き家の冒険』でホームズ生還の時に”最初で最後の気絶”をして心から喜んでいた姿が本当に好き
です。
『入院患者』は記事にしていませんし、良く覚えていないんです。ご指摘のシーンが気になってしまったの
でもう一度観直そうと思います。

エピソード全部を取り上げるのはとても無理なので(最近気力が衰えました)、ご覧頂いたかもしれません
が 他エピソードは下記カテゴリーに纏めてありますので ご覧頂けると嬉しいです。

https://blog.goo.ne.jp/ocicat0306/c/b286314ed5dcac51271ba1d01ae5e3c9

ご丁寧なコメント有難うございました。 又ご意見聞かせて頂ければ有難いと思います。
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Unknown ()
2020-08-08 21:43:17
こちらこそ丁寧なご返信をありがとうございました。今ホームズを観始めてから自分の英語力のなさを痛感しています。ブレット氏とバーク氏の微妙な阿吽の呼吸など、やはり吹き替えでは再現できませんよね。もっと勉強しておくんだった〜笑 もしお時間がございますときにでも「入院患者」を再見していただけましたら幸いです。
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>Unknown (Yam Yam)
2020-08-09 10:19:32
漣さん、おはようございます。
グラナダ版はその昔からずっと吹き替え版で馴染んでいて、それなりに楽しんでいたのですが、なかなか
字幕版は放送してくれませんでしたね。
数年前にようやく字幕版の放送の放送があり、嬉しかったです。 やはりご本人たちのセリフ回しで聞くと
又違った印象を受けました。 AXNミステリーでも吹き替え版の方が多いですね。
UK版のDVDでは英語の字幕が出せますので これはなかなかと助かります。 もし機会があればお試し
下さい。もっと昔こんな機会があれば英語の勉強に役立ったのに・・・・と思いますが。
『入院患者』DVD探してみますね。
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