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『ゴースト・スナイーパー』ジェフリー・ディーバ―著

2018-02-26 | ブックレヴュー&情報
『ゴースト・スナイパー』 ジェフリー・ディーバ―著

「ゴースト・スナイパー」 ジェフリー・ディーバ―(著)、池田 真紀子(翻訳)
文春文庫 上&下 -2017年11月9日発売
原題 : ”The Kill Room” : Jeffery Deaver (2013発売)

内容紹介
リンカーン・ライム、影なき凄腕スナイパーに挑む 国を跨いだ科学捜査、シリーズ史上最大のス
ケール! アメリカ政府を批判していた活動家モレノがバハマで殺害された。2000メートル先からの
長距離狙撃。まさに神業、〝百万ドルの一弾〟による暗殺といえた。 直後、科学捜査官リンカー
ン・ライムのもとを地方検事補ローレルが訪ねてきた。その暗殺はアメリカ政府諜報機関の仕業
であり、しかもテロリストとして射殺されたモレノは無実だったという。ローレルはこの事件を法
廷で裁くべく、ライムとアメリア・サックスを特別捜査チームに引き入れる。スナイパーを割り出
し、諜報機関の罪を暴け――。ライムたちは秘密裏に捜査を開始する。 しかし、バハマの現場は遠く、
証拠がなかなか収集できない。しびれを切らしたライムは、遂にバハマ行きを決意する。一方、謀略
を隠蔽するため、暗殺者は次々と証人を消していく。魔の手はやがてニューヨークで動くアメリア、
そしてバハマのライムの元にも……

内容(「BOOK」データベースより)
バハマで反米活動家の男が殺害された。神業と言うべき超長距離狙撃による暗殺だった。直後リン
カーン・ライムのもとを地方検事補ローレルが訪ねてきた。その暗殺は米国政府諜報機関の仕業で、
テロリストとして射殺された男は無実だったという―。非合法の暗殺事件を訴追すべく、ライムと
サックスたちは捜査を開始する!

ジェフリー・ディーバ―による ”リンカーン・ライム”シリーズの10作目です。

今作品はリンカーン・ライムが初めて海外(バハマ)に遠征する事になります。
サックスは残り、トムとプラスキーが同行。 全く捜査方法も考え方も違う現地警察にイラつきな
がら 影ながら協力する現地警官の協力を得ながらも苦戦を強いられるリンカーンは車いすと共に
海中に落ちるという事故にもあいます。

原題の”The Kill Room”は、活動家モレノを含む3人が殺害された部屋の事を指すと共に、もう一つ
の対象を指す事が示される。それが分かるとこの小説の見え方ががらりと変わってくるのです。

”リンカーン・ライム”シリーズでは毎回2転3転のどんでん返しがあり最後まで気が抜けず予想を
覆されるのが恒例になっている為、このシリーズを読む際は常に裏を読みながら妄想するのが癖に
なってしまっているのですが、それでもなお期待を裏切られ 考えもしなかった最後のどんでん返
しにあっと驚かされるのが常でした。
が、
今作はそれが余り感じられなかった、と言うか控えめだと感じたのはワタクシだけでしょうか?
そうは言いつつ、終盤近く「あッ!そう来たかッ!」という導き方をされたのは事実です。

それより、この作品ではそれぞれの登場人物の方に興味がそそられました。

何時もリンカーンから”ルーキー”と呼ばれていたプラスキーが成長を見せ、リンカーンでさえ心の
中で賛辞を贈る場面もあり(口に出して褒めない所がリンカーンらしい)、リンカーン、サックスの
大きな力になっています。
サックスに代わり、グリッド捜査も無難に行い リンカーンを満足させます。

超美人でタフなサックスは足の関節炎に苦しめられ、イザという時に捜査の支障をきたす事もある状
況で、それを警察の上層部にひた隠しにしていたものの調査で発覚。 このままではデスクワークに
回されかねない状況下、リンカーンの勧めもあり遂に手術を決心する。

個人的には気に入っているリンカーンの介護士であるトム。
我儘で暴言を吐くリンカーンを上手くやり過ごし献身的に介護する姿や、リンカーンの暴言をさらり
と受け流す姿はもう殆ど母親の様。

又、個人的な好みと言うか興味があるのが リンカーンの言葉に対する拘り。
間違った言葉遣いや文法には苛立ちを隠しません。直ぐに訂正して文句を言うって言う場面が時々あり、
結構好きで楽しんでいます。ストーリーには全く関係ないのですけどね(笑)
そして、今作でチョット気になったのが文中にあるフレーズ『部屋の中の像』”elephant in the room”
『皆が見ぬふりをしている重大な問題』という英語の言い回しですが、これを見てフト思い出しました。
『シャーロック』S3E2 ”The Sign of Three” の中で、シャーロックの回想にある事件にもあったのです。
あのシーンもボンヤリ見ていたのですが、もっと深い意味があったのかも。
ただ、あのシーンは実際に象がパオーンと鳴いていましたけど(笑)

シャーロックついでですが、もう5年程前になるでしょうか。
S3E1 ”The Empty Hearse” で、マイクロフトが ”I'm living in a world of goldfish” と云っていた
のですが、この意味に悩み 一瞬(金魚鉢の様な狭い世界に住んでいる)という意味なのかとも思ったりも
したのですが、丁度その時やはりジェフリーディーバーの作品を読んでいて(作品は忘れた)同じ言い回し
がありまして、その時は「金魚鉢の様な衆人環視の世界に居る」みたいな表現があり、これは英語のイディ
オム ”live in a goldfish bowl” (金魚鉢の中に住む→英語の言い回しで、衆人監視でプライバシーを保てない
状態)と書かれていました。 又同時に金魚の世界と云うのはスラングで記憶力の無いバカな世界と云う意
味の様で、従ってマイクロフトのこの言葉も両方をかけているのだろうか?と考えたりもしました。
すっかり話がそれてしまったのですが、その様に何かとディーバー作品とシャーロックがたまたまリンク
する事があるんです って事を言いたかった訳で・・・・

話を戻しまして、
今作では、
犯人がとてつもない凝った料理のレシピや材料に拘りを見せ蘊蓄が書かれているのですが、これはディーバー
氏ご自身の拘りでもある様です。
そして、この犯人が持っていた包丁が、愛して止まない大切にしている貝印の「旬」。
思わず検索してしまいました(笑)
↓ こんな包丁だそうです(貝印さんのサイトから)

この包丁は 欧米を中心に世界中で人気を博している貝印包丁のブランドだそうで、一丁 5万円から
8万円もするとか。ヒぇ~!となりましたわ。
しかし、凶器にも使われた包丁が日本製であったのは何とも複雑な気持ちにもなりまして・・・。


リンカーン・ライムシリーズとしては、
11作目は、「スキン・コレクター」”The Skin Collector”


12作目は 「スティール・キス」”The Steel Kiss”が既に発売になっています。







2 コメント

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金魚 (Misty)
2018-03-04 10:39:35
例の金魚のフレーズ、この作品からだったのですね。人気作品なら御大が読んでる可能性大だし、そこから引っ張ってきた可能性もありそうな…間違った文法が嫌いとか、いかにもゲイティスさんが好きそう。

小説もすごく面白そうですね~そして、英語圏のイディオムとか結構好きなので、また面白い表現がありましたら紹介していただけると嬉しいです。
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>金魚 (Yam Yam)
2018-03-04 15:12:01
Mistyさん、こちらも有難うございます。
金魚のフレーズに関しては、当時dicoさんチにも書かせて頂いた記憶があるんです。
確かにゲイティスさんは文章、文法には煩そうですね。 あの方の書いた文章はきちっとしていて
読みやすかったですもん。 そして、脚本を書く人ですから色々な資料を読んでいるだろうし、他
の作家の作品を参考にしているのではないかと思われる部分が時々ある様な気がします。

このシリーズは面白いですよ。
「ボーン・コレクター」はデンゼル・ワシントンとアンジェリーナ・ジョリー出演で映画化もされていま
す(原作とは少し違っていた記憶がありますが)
英語圏のイディオム、面白いですよね。 この歳になって初めて知る言葉も多いです。 
ディーバー氏もかなり言葉には拘りがありそうです。 そんな点からも楽しみながら読めるシリー
ズだと思っています。(ワタクシだけ?)
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