The Game is Afoot

ミステリ関連を中心に 海外ドラマ、映画、小説等々思いつくまま書いています。

グラナダ版『美しき自転車乗り』 : (5)

2018-10-13 |  ∟グラナダ版SH
”The Solitary Cyclist” : (5)

The Adventure of Sherlock Holmes
1984年

・・・・・その(5)



バイオレットの身を心配するカラザースに、酷い目に遭ったがスミス嬢は大丈夫だ。ウッドリーも
命に別状は無いと言うホームズに、怒りに燃えながら「息の根を止めてやる」と逸るカラザースは、
バイオレットがこのまま一生ウッドリーの妻なのか心配します。
ホームズは、この結婚は無効だ。何故ならウィリアムソンに式を挙げる資格がない。これに対して
証明書を見せるウィリアムソンに、「どうせ偽物だ」と切り捨てるホームズ。

もう一つの理由は、強制結婚は無効で重罪だと言い切ります。
そして、ホームズは全容は解明済みであるので自分が説明すると言います。

カラザースとウッドリーは南アフリカでバイオレットの叔父スミス氏と出会った。 彼には死期が
迫っており莫大な財産をバイオレットが相続する事になっていた。彼は読み書きが出来なかった為
帰国して彼女を探し出し遺産を横取りしようと計画した。


ところが、思いがけずカラザースがバイオレットを愛するという過ちを犯してしまった。
涙を流しながら「生涯で初めて愛した人だ」というカラザースに、何故危険を知らせなかったのか
と問うワトソンに、「もし話せば私から離れて行った。それだけは絶えられなかった」、そして
私を愛してくれなくても構わなかった。彼女が家に居てその声を聞けるだけで満足だった」と云う
とワトソンは一言「それは愛とは呼べない。単なる身勝手と云うもんだ」(流石、その道の達人で
あるワトソンの深いお言葉)

そして、他の悪党から彼女を守る為気付かれない様に変装して尾行したのだと(あれで気付かれな
いと思うのか、カラザース。やり方が間違っているんじゃありませんか?)
そして、そんな時南アフリカから電報でスミス氏の死が伝えられると仲たがいしていたウッドリー
がカラザースと脅したのだと云います。

無事悪党は捕えられ、

221Bに裁判の判決が出た新聞を持ってとホームズに知らせにやって来ます。




その時腕まくりをしていたホームズはそっと注射器を引き出しにしまうところを見てしまったワト
ソン。(又ヤクをやっていたんですか、ホームズさん)

溜息をつきながら「ホームズ・・・」とお小言を言いかけると、話を逸らせるように、その判決を
予想させろと言いながら「ウッドリーは10年の刑、ウィリアムスン7年。そしてカラザースは私の見
事な弁論のお蔭で半年の刑」。 それを聞いたワトソンはビックリして「お見事。全て当たっている」。
実は早刷りの夕刊を読んで知っていたのだと白状するホームズは、バイオレットから結婚式のケーキ
が届き叔父の遺産を相続したと聞かせます。


そして、新婚夫妻は服役中のカラザースに代わり娘のセーラの面倒を見ていると聞かされ、「良い
ニュースばかりだな」と云うワトソンに、嬉しそうに「もっと言いニュースがあるぞ」ともみ手を
しながら実験台に向かうホームズ。


ハーデン事件を科学反応で解き明かす。一週間科学博物館に通い詰めて調べたのだと実験を始め
ると 興味深そうに見つめるワトソン。


「これが答えだ」、ビーカーから物凄い煙が立ち上ると、ワトソンが「これが答えか?」
部屋中に煙が立ち込め、部屋の外まで煙が漏れ出て来ると、ハドソンさんが怪訝な顔。


ん?この煙は?のハドソンさん。叱られるぞボーイズ


煙たくて咽ながら窓から顔を出すホームズとワトソン・・・・



早々に消防馬車迄駆けつける事に。


といった正典には無いオリジナルの珍しいエンディングとなっています。



この作品は冒頭にも書きました様に グラナダ版として撮影された最初の作品でもあり 何より
ジェレミーが若々しく麗しいです。
ホームズのキャラクターとしても未だ確立されていない様で、後のイメージとは少し異なって
傲慢さもあまり見えず 未だ普通の人っぽいですね。
兎に角溌剌と若々しく ボクシングを披露するわ、走る、走る・・・・兎に角アクティブで、しか
もおちゃめだったり 可愛いホームズです。
物語り自体はユニークではあるけど特に陰惨な事件でもなく、謎解きとしては物足りない内容では
あるものの、ボーイズたちの仲良しっぷり、やカラザースさんの情けないヘタレ振り、絵にかいた
ようなウッドリーの悪人振り、等々がドラマとして面白い作品で楽しめると思えました。

そして、何よりも正典にあるS.パジェット版の挿し絵に忠実な場面を作り出しているのも興味深い
点です。





余談ですが、正典ではこの事件があったのは1895年の設定となっています。当時日本では日清戦争
が終ったばかり。 ドイツで自転車が発明されたのが19世紀、現代の様な形になったのが19世紀後
半ということなので、このドラマで女性が自転車に乗っていたという事は時代の先端を行っていた
という事で、バイオレット嬢は当時としても珍しい、ナウい(死語)女性だったんですね。



このエピソードは今回で終わります。
お付き合い頂き有難うございました。





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