The Game is Afoot

ミステリ関連を中心に 海外ドラマ、映画、小説等々思いつくまま書いています。

SHERLOCK S4E3 ”The Final Problem” : ネタバレ感想と検証 (9)

2017-07-23 |  ∟ S4E3 : The Final Problem
『シャーロック』シーズン4:「最後の問題」 追記&Review (1)


以下ネタバレになりますのでご注意下さい。
あれこれ内容に触れながら 正典との繋がり、感想を書いていきたいと思います。
     ↓

     ↓

     ↓

     ↓

     ↓

     ↓

     ↓

     ↓

     ↓
 
     ↓


・・・・・追記とReview (1)

日本放送前に散々ネタバレを書いて置きながら 何を今更なのですが(汗) 最後の纏めと
感想追記は放送後にしようと思っていた為 間が空いてしまっていました。
昨晩「最後の問題」の放送が終わりました。 皆様どの様な感想をもたれましたでしょうか・・・・

今回は書き残した事等色々振り返りながら追記させて頂きます。

大変ひつこいのですが、S4は何度観直しても納得できないし、特にE3”The Final Problem”に
至ってはもうストーリー展開も無理やりだし説得力にも欠け、重箱の隅を突くまでもなくアチコチ
突っ込みどころ満載の感があります。
個人的な思いかも知れませんので、反論を承知で列記させて頂きますね。(結局重箱の隅を
突いていますが)

S4はE1でメアリーにフォーカスが当った「メロドラマ」、E2はカルバートン・スミスとの対決が芯に
なる筈の展開にも拘らず メアリーの影を引きずりながらジョンとシャーロックの対立に偏り、
E3ではジョンとシャーロックの関係は元に戻りつつも、ユーロスという存在が明らかになった為
彼女によって引き起こされる家族の問題。 過去の因縁等ユーロスフォーカス。
とは言いつつ、E2はS4の中ではシャーロックらしい点も感じられ割に好きな内容ではありました。


S4のどのエピソードも当初の様なワクワクする様なジョンとシャーロックの冒険、シャーロックが
導き出すドキドキする様な推理、謎解き、又ジョンと紡ぎだす友情等を楽しむ内容とは全く異なる
方向に向かっていました。
当初からモファティスが言い続けていた「人間としてのシャーロック」、「シャーロックの成長」は確
かに表されていたのかも知れないが、これまでダークに過去を抉り出し、それに元ずくシャーロック
の成長と言うのは必要だったのだろうか?
これも何度も繰り返して言い続けていたのですが、シャーロック(シャーロック・ホームズ)は普通の
人間である必要はないと思うし、情に流され 推理も儘ならず 天才である探偵である姿が薄れて
しまっています。
確かに、ユーロスによって封印されていた過去がシャーロックの性格を作り出したと言う点、そして
そのトラウマから解放され その後はその前の様に感情を十分に表す人間味豊かな性格に戻った・・・
という導き方はモファティスの意向であろうとは思うものの S4で突然人格が変わってしまったかの
様な居心地の悪さばかりが残ります。
過去のシーズンでは全く想定もされていなかった突然の妹(ユーロス)の存在に強引に結び付けられ
ていくように感じます。

S3迄全く影もなかったユーロスが何故突然姿を現すのか?
5年前にモリアーティーと会わせた事がきっかけになったとしても、いきなりシャーロックを標的にし
始める不自然さ。
モリアーティーの死が引き金になったとしても、それから考えても3年以上経っていた訳なので今回
ユーロスがいきなり行動を起こした直接の原因は納得できない事の1つ。

又、マイクロフト、ジョンと共にシェリンフォードを訪れてからの3人の行動も全く不可解。
ユーロスに先導されるままにシャーロック、マイクロフト、ジョンが人の命を懸けてゲームを強要される
点に関しては、たとえ飛行機に乗っている少女の命が掛かっているとは言え、何故あれ程疑問も抱か
ず3人が言われるままに無辜の人、大切な友人や兄弟を殺す指示に従う事になるのか・・・・ これは
多分ユーロスに洗脳されているからと考えなければ納得できない展開です。
大切なロージーがいるにも拘らず、自分が兵士になって犠牲になろうとするジョン(ロージーの”ロ”
の字も浮かんでいない様子)

又、飛行機の少女の存在に関しても、シャーロックは最初から少しも疑問を抱かずユーロスに聞かされる
電話の声だけでその存在を信じ込んでいる。モリアーティが絡んでいると気付いたからにせよ この点も
説得力に欠ける様な気がするのです。
そして、この少女は声だけ(ユーロスがしゃべっている訳だけど)で その姿や機内の状況はシャーロック
の想像の産物である訳で、シャーロックは、「ベルグレーヴィア」の”死者のフライト”、”221Bに相談しに
来た姉妹”からの連想であの少女の姿を思い描いていたのだと思われるが・・・・

 
そして、誰でも洗脳するというユーロスの力から考えると たった5分間の面会で影響を受け、洗脳された
のはモリアーティの方ではなかったのか?
其の為、モリアーティはユーロスが人の命を懸けて3人を操ったと同じ様に、”The Great Game”「大いなる
ゲーム」で同じように人の命を懸けたゲームをシャーロックに仕掛けて来た。
但し、簡単に人を殺してしまうのはユーロスの方が数枚上手でサイコパス度は超ド級で後味が悪い。

S4でシャーロックの人間らしさを必要以上に出そうと言う描き方は未だに納得できないと感じますが、”人間
らしさ”をより表面に出したのはマイクロフトの方であった様な気がします。
これまで冷徹な官僚主義に徹した何を考えているのか分からなかったマイクロフトがS4ではちょっとした春が
訪れかけたり、必要以上に弟を心配する、家族を気に掛ける、冷たい外見とはうらはなな人間らしさを出して
いました。 そして、シャーロックからさえも「彼は自分で思っているほど強い人間ではない」と言われる程。
S1で初めて登場して以来シャーロックとマイクロフトの兄弟関係は常に危機感をはらんでいたしギスギスした
関係であった様に思うけど、突然に兄弟で思い合う様になってしまった。
尤もマイクロフトに関しては「忌まわしき花嫁」の終盤でシャーロックに対する想い、気掛かりを表し、ジョン
にシャーロックの事をよろしく頼むとさえ言っている。 この時もやや唐突感を感じたのだけど、シャーロック
の身に関する危機も予感させられられたことも事実。 これがS4に上手く繋げられたのかも知れませんけど。 

最初にも書きましたが、”The Final Problem”「最後の事件」は正典中モリアーティとホームズがライヘンバッハ
の滝に落ちて死亡した作品で、このプロット自体はS2E3 ”The Raichenbach Fall”「ライヘンバッハ・ヒーロー」
に引用されてしまっていた訳です。 
では、今回”The Final Problem”「最後の事件」での”The Final Problem”とは、何を意味したのだろう?
と考えた時、結局シャーロック自身の問題だったのだという事は観終わった後に腑に落ちました。
昨年末、勿体ぶった様になかなか公表しなかったE3のタイトルとして、この”The Final Problem”が発表された
時、正直 あ、これで一旦シャーロックを終わらせるのだな・・・と感じていました。
E4を観終わった時点で猶更この感が強まり たとえE5の可能性があるとしても当分は無理だと感じさせられました。
ベネディクトやマーティンのスケジュール、モファティスのスケジュール等の関係もあるかとは思いますが、
E4放送直後の反響(色々ありました)も今後の動向に影響するのではないかと思います。
これまで何時も次のシーズンの可能性と共に、何時になるのか、どういう内容になるのかと それだけが楽し
みで過ごしてきたものとしては本当に残念でなりませんが(この先どうやって過せばいいんでしょう・・・)、
今回の内容を見る限り たとえ次の可能性があるとしてもこれまでの様に2年後はあり得ないとして もう少
し長い冷却期間を置いて新たな形、というかS1の時の方向性に戻り何時の日にか新たな作品をで作って貰え
たらなあと考えています。 ホント寂しいですけど。

終りを感じさせる点のもう一点は、色々な項目、セリフを過去のシーズンに関連、リンクさせて納めている。

例えば、既に書いたS1E1のシャーロックとジョンの初登場シーンの挿入、レストレードのシャーロックに関する
”good man” 表明以外にも、

◎ S3E2 ”The Sign of Three”「三つの兆候」の中、ジョンの結婚式でマイクロフトが唐突に口に出した
”Do you remember Redbeard ?”「赤ひげを覚えているか?」に、シャーロックが ”I'm not a child anymore”
「もう子供じゃないんだ」と言った時、最初思ったのは”赤ひげ”が海賊だと。
つまり、シャーロックが子供の頃赤ひげという名の海賊が出るお話が怖かったのではないかと・・・(この事は
以前も何度か書いた記憶がありますが)。因みに”赤ヒゲ”という名で呼ばれる海賊は実在します。 オスマン
帝国の提督ハイレッディン・バルバロッサが赤髭と呼ばれた海賊と言われています。
この点は、E3でマイクロフトが言っていた様に、ふとしたきっかけの言葉でシャーロックの記憶の状態を確かめ
ていた・・・にリンクする。


◎ S3E3 ”His Last Vow”「最後の誓い」の中で、メアリーに撃たれたシャーロックがマインドパレスの中で
見たのが犬の「赤ひげ」。 ここで、「赤ひげ」は犬であったのか・・・と思わされたのですが、この時シャー
ロックは、”Hello, Redbeard. They're putting me down too, now. It's no fun, is it?”「やあ、赤ひげ皆は
僕の事も殺そうとしているんだよ。 面白くないよね」と言っていた時、あの時点ではシャーロックが子供の
頃可愛がっていた犬「赤ひげ」は安楽死させられたのではないかと思っていた事。 
これが、今回のトレヴァー即ち赤ひげの死ににリンクすることになる。


◎ S2E1 ”A Scandal in Belgravia”「ベルグレーヴィアの醜聞」の終盤、マイクロフトがジョンに”Initially
he wanted to be a pirate”「元々はシャーロックは海賊になりたがっていたんだよ」とチョット寂しげに言って
いた事。
 
これは、E1の「サマーラの死神」をシャーロックが脚色して自分なりの解釈では商人が海賊になって無事生き延びた
と変えていた。 子供の頃から海賊ごっこをして遊んでいた・・・などにリンクさせている。

◎ E4E1冒頭から何度も出て来た”水”がオーバーラップする点。
これは最初意味が分からなかったのですが、E3でユーロスが言っている様にヴィクター・トレバーが水死した事に
発する ”deep water”絡みである事が分かります。


 
そして、”The Great Game”のブールのシーンも元をただせばシャーロックが自分の最初の事件であったと言っていた
カール・パワーズがプールで死亡した件に遡り、ライヘンバッハの滝の決闘、そしてメアリーが死亡した水族館 等
全て”水”に関連付けるように誘導しています。

ただ、この点に関しても 「シャーロックの人生には常に深淵”水”が関わっていた」と言われても、唐突感が
あり、あれ?そうだったんですか?・・・としか思えないのに、この強引な後付けに収められてしまっています。

これら全て過去シーズンに関連付けて終結、完結させている。 ある意味見事と言わざるを得ない様な纏め
方をしています(皮肉を込めて) 
過去のシーズンの脚本を書いている時点では予見されていなかったであろう事が、S4でのシナリオありきで
全て振り返り後付け、収束されている事を感じさせられます。
無理やり納め込んだ消化不良の様な居心地の悪さも感じてしまったのです。


相変わらずダラダラ続きますが、次回で終わらせます。(まだあるの?)





・・・・・to be continued です。





← SHERLOCK S4E3 ”The Final Problem” : ネタバレ感想と検証 (8)
→ SHERLOCK S4E3 ”The Final Problem” : ネタバレ感想と検証 (最後です)






2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
祭りの後? (篠田真由美)
2017-07-24 13:09:39
昨日E3,テレビの録画を見ました。なにかこのところ、深読みすれば否定的なことばかり考えてしまう自分に、かなり嫌気がさしていて、楽しんでるっていう人もいるんだし、もう少し素直になるべき? などとも思っていたのですが、それも難しいですね。E3も、敢えて細かいことに目をつぶってしまえば、しまえなくもない、とは思うものの・・・

グレート・ゲームのジムの仕掛けが怖かったのは、正しい推理をすれば人質が助かったからです。助けられるはずのものを失敗すれば、こちらのせいで死なせてしまう、と思うからサスペンスが生まれる。なにをしても殺されるなら、ゲームでもなんでもないんで、しかも3人ガリデブ以外のフェーズは推理とも全然関係ない、ただの無理難題なんだから、そのへんに目をつぶって素直にドキドキハラハラするのはとても難しい。

アン・スコさんのジム、好きだったんですけどね、結局S3E3のクリフハンガーはユーロスが流したただの録画で、後はチクタクって、サスペンスも湧かない。せっかくの面白い設定、ライヘンのラストまでぱーになる。そんなに後まで引っ張るなら、殺さなけりゃいいのにと思うと、やっぱり後付けのバタバタだったんだなあ。

とまあ、愚痴を並べ出すと切りがありません。近いうちにE3についても自分なりにまとめます。
『芸術家の血』も読みました。ちょいとばかり「腐」が匂いましたね(笑・いえその、あそこまで探偵を痛めつけてジョンに看病させるあたりが、なにやら芳しい)。

失礼っ。
返信する
>祭りの後? (Yam Yam)
2017-07-24 17:21:37
篠田先生、お越しいただき有難うございます。
E3ご覧になりましたか・・・実は日本放送のE3私はまだ観ていないんです。

>楽しんでいる人がいる
少ないながらいらっしゃる様ですね。 結局S1&2が最高だったと思う方、正典に拘る方でなく単
に「シャーロック」のファンである方とは観方、感じ方が違うのではないかと思えました。
ただ、拙ブログにもご訪問下さった方の余りの数の多さにひっくり返りそうになりましたので、興味
ある方、関心の高さは凄かったのではないかと・・・

アンスコファンが多いので、”実は死んでいない”を期待する方が多かったせいなのかもしれませ
んがアイリーン同様、何時までも引っ張って無理やり登場させるのも、個人的にはあまり好きでは
ありません。
正典にある様に、”あれっきり” だから余計に何時までも印象に残るのではないかと感じます。
>後付けのバタバタ・・・
ですね、全て終結させるための後付けの為の脚本であった様な感じだけが残ります。
終わらせるにしても もう少しやり方があったのではないかと未だにブチブチ・・・です。

「芸術家の血」、読まれたんですね。
>「腐」が匂う・・・・
確かに! ボニーさん自身”腐”だと思いますよ(笑)。 だから気に入ったのかも(汗)
でも、ホロヴィッツの「絹の家」の様な重さが無くて「らしい」感もあり、個人的には好きです。

先生のE3感想を読ませて頂くのを楽しみにしております。
返信する

コメントを投稿