The Game is Afoot

ミステリ関連を中心に 海外ドラマ、映画、小説等々思いつくまま書いています。

ビリー・ワイルダー版「シャーロック・ホームズの冒険」: 初めに

2016-05-24 | ビリー・ワイルダー版S・ホームズ
”The Private Life of Sherlock Holmes” by Billy Wilder



この作品は大分前にTV放映で観て以来、その後2度程観たのですが 最後に観てからも大分
年数が経ってしまいました。
最初は本当に何気なく見始め、ビリー・ワイルダー作品という事で ある程度先入観と固定
観念をもっていたし、軽いコメディータッチのパスティーシュと考えていました。

ところが・・・
これが面白いんですね。 嵌りました。
そしてBBC版「シャーロック」を見始めると あちらこちらで既視感を感じたり 似たカラーを
感じたりしたものですが、後日モファット氏もこの作品を敬愛していたと知りやはりオマージュ
を感じるのは当然だと改めて感じます。
ゲイティス御大も この作品を称して ”The film that changed my life" (私の人生を変えた作品)
と語っていました。
グラナダ版は当然なのですが、この作品もまさしく「シャーロック」の原点なのだと感じさせら
れます。
モファティス両氏の拘りを汲み取る為には 原点回帰してこの作品を検証する必要があると気が
付きました。

大分前の事ですので 忘れている点、見逃している点も多々あると思い、今回気合を入れてDVD
で観直しました。
と云うのも BBC版 ”The Abominable Bride”のtrailerを最初に見た時からビリー・ワイルダー版
のカラーを強く感じるとひつこく書いていたのですが、本編をみるとよりこの感を深めたもので
すから再度検証してみなくては・・・と思い立ちました。

改めてこの作品の詳細等を顧みますと、

先ず、
1970年のアメリカ映画です。(40年以上も前の作品です)
脚本・監督・製作がビリー・ワイルダー  
正典の短編集と同じ邦題になっていますが、内容はワイルダーによるオリジナル作品です。
当時としては桁外れの製作費1000万ドルを掛けた超大作でもあるそうです。
今回改めて確認しますと、当初この作品は4時間にも亘る大作だったようですが、諸事情により
約2時間にカットされ上映されたとのことです。 ノーカットで全作を見てみたかったですねぇ、
残念です。
又、初期の構想では、ホームズにピーター・オトゥール、ワトソンにピーター・セラーズの配役
が予定されていたとの事。 おーっ! 何と豪華版! これが実現していたら凄かったのに~と
この点も今更ながら残念です。

配役は、
シャーロック・ホームズ : ロバート・スティーブンス
ジョン・ワトソン ; コリン・ブレイクリー
マイクロフト・ホームズ : クリストファー・リー
ガブリエル・バラドン : ジュヌヴィエーヴ・パージェ
ハドソン夫人 : アイリーン・ハンドル
ヴィクトリア女王 :モリー・モーリン   等

 

 
↑ サー・クリストファー・リーですが、左がマイクロフト、右がホームズを演じた時

残念ながら サー・ ロバート・スティーブンスの他の作品は観た事がありません。
個人的な感想を言えば、ホームズがチョット残念なキャスティングの様な気がするのですが・・・
イメージがね。いや、良い役者さんだとは思うんですよ、でもね、チョット違うかなぁ・・・好み
の問題ですね。 
メークが濃過ぎとも感じるのですが、当時の風潮なのかしら? 等思いつつ。
ところが、今回ふと気がついたんですが、ベネディクト/シャーロックの特徴のあるクルクルヘアー
はこのホームズのヘアースタイルを踏襲した進化形ではないかと思うんです。何となく似ている気が
するのですよ。
個人的な感想かも知れませんが チョット感動!

そして余談ですが、前妻はあのデイム・マギー・スミスだそうです。ちょっと ビックリです←意味
不明。
そしてお2人の間に出来た息子さん達がトビー・スティーブンスとクリス・ラーキン。DNAですなぁ。
そして父親より息子達の方がキリッとしていてカッコ良い(暴言)

又、ワトソンを演じたコリン・ブレイクリーはアガサ・クリスティーの「地中海殺人事件」や「オリ
エント急行殺人事件」で記憶に残っています。

マイクロフトを演じたサー・クリストファー・リーは言わずもがなですが、元々ドラキュラで良く知
られていましたが、「ロード・オブ・ザ・リングス」、「スターウォーズ」でも記憶に残っていました。
惜しくも一年前に亡くなりましたね。
で、サー・クリストファー自身もシャーロック・ホームズを演じたこともあり、兄弟二人を演じた俳優
でもあります。
正典で描かれているマイクロフト像とは体形的には異なりますが、さすが存在感、威厳、貫禄のある
カッコいいマイクロフトですねぇ。

感情を余り表に出さない チョット気だるげなホームズと絶妙なボケをが見事なワトソンの組み合わせ
が面白く、ホームズのゲイ疑惑、麻薬を使うホームズを気遣うワトソン等人間ドラマとしても楽しめる
と思いました。
このワトソンが良い味出してますね。
時にドタバタコメディアン風の演技をしてはいますが、きちんと押さえるところは押さえていて存在感
を出しています。
ホームズ作品を色々観るにつけ、ワトソン役が如何に重要なポイントになっているか分かります。
時にホームズを食ってしまう場合もありますが、ワトソンの配役によりホームズがより輝くのだと感じ
ます。 

内容は一見ハチャメチャで奇想天外にも思える ネッシーが登場したり色々なエピソードが含まれていま
すが、原作タイトル「シャーロック・ホームズの私生活」にある様にホームズの人間性などもしっかり描
かれていてるのですが、”私生活”からは懸け離れた国家機密に触れる部分もあり、コメディータッチもあ
り哀愁漂う場面もあり、盛り沢山でありながら きめ細かく制作されている事が良く分かります。
又、正典ネタ、台詞などもしっかり取り入れられていて、さすが巨匠ワイルダーって感じます。

又、ベン・ハーを始めとして数々の名作で格調高い映画音楽を手掛けたミクロス・ローザがこの作品でも
雰囲気のある楽しい楽曲を提供しています。

これらの色々を見てみても 本当に贅沢に作られた作品なのだと改めて感じます。

この後感想を挟みながら内容概略をご紹介してみようと思います。




→ ビリーワイルダー版「シャーロック・ホームズの冒険」: 1/4





2 コメント

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祖父が写ってますけど・・・ (エーコ)
2016-05-29 21:27:01
右下の帽子を被った白髪の渋い俳優さんはサー・クリストファー・リーさんと言うのですか??

私の祖父にそっくりなのですが・・・
返信する
何て素敵なお祖父さま! (Ocicat)
2016-05-29 21:48:35
エーコさん、こちらにも有難うございました。
え? お祖父さまはサー・クリストファー・リーと似ていらっしゃるんですか?
まぁ、凄い良い男なんですね、お祖父様は。
サー・クリストファーは凄く良い役者さんでしたが、昨年93だったか94歳(いい加減)で亡
くなったんですよ。
でも、この頃は脂の乗り切った頃でカッコ良くて素敵でしたよ。
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