『ロウソクのために一シリングを』ハヤカワ・ポケット・ミステリー2001/7/10

ジョセフィン・テイ(著)、佐良和美(翻訳)
”A Shilling for Candles”
1936年に発表されたジョセフィン・テイによる、ロンドン警視庁の警部アラン・グラントを主人公と
した長編推理小説。
テイの作品では、第5作目の『時の娘』が歴史ミステリ、ベッド・ディテクティブの分野における嚆矢
的存在として著者の代表作となっており、英米だけでなく、日本のミステリー作家にも影響を与えて
いると言われています。
しかし、『時の娘』を発表した翌年55歳の若さで亡くなり、惜しまれています。
『時の娘』は大好きな作品で、かなり昔に読んで以来、何度か読み直しをしていますが、大雑把では
ありますが概略はコチラをご参照下さい。
今作は少々古い作品ですが、偶然見つけたので飛びつきました。
内容(「BOOK」データベースより)
英国南部の海岸に、女の溺死体が打ち上げられた。すぐに身元は映画女優のクリスティーン・クレイ
と判明。現場の状況から事故死とも考えられたが、ロンドン警視庁のグラント警部は背後に殺人の臭
いを嗅ぎとった。容疑者としてクリスティーンの別荘に滞在していた青年ティズダルが浮上するが、
警察の動きを察知して行方をくらましてしまった。そんな折り、クリスティーンの遺言が開示され兄
ハーバートへの奇妙な遺言が明らかになった!名作『時の娘』のグラント警部初登場。ヒッチコックの
「第3逃亡者」の原作としても知られる黄金期の傑作。
ヒッチコックの作品は古い作品を含め随分多く観たつもりでしたが、『第3逃亡者』は観た事があり
ません。
原作とは大分異なる描き方をされている様ですが、観る機会があれば・・・と感じます。
『時の娘』では、ベッド・ディテクティブとしてリチャード3世の真実を追及したグラント警部ですが、
この作品はそれより前の出来事です。
グラント警部、愛すべき部下のウィリアムズ、又女優のマータはこの作品がデビューとなるのです。
冒頭で 浜辺で死亡しているハリウッドの映画女優のクリスティーン・クレイが見つかり、当初事故
かと思われたものの、溺死体に残されていたコートのボタンから殺人事件ではないかと捜査が始まり
ます。
財産を食いつぶし 放蕩の果てに一文無しとなり、クリスティーンに拾われ いそうろうとして別荘
に滞在していたティズダル青年が容疑者とみなされ、警察が動き出し、ロンドン警視庁からグラント
警部も捜査に係わる様になる。
明かにティズダルが不利であるが、他にも容疑者として映画関係者、女優仲間、占い師、夫であるエ
ドワード卿など曰くありげな人物が登場します。
そんな折、クリスティーンの遺言書が発表され、その最後に実の兄あてには”ロウソクのために一シリ
ングを”と書かれており、誰にも知られていなかった実兄の存在と、その意味不明とも言える奇妙な
遺言に含まれた兄との確執、特別な関係を感じさせられた警察は兄の行方も追い始めます。
そして、遺言書の最後に追加された条項には、ティズダルの為にカリフォルニアに所有する牧場と
現金が贈与されていた為、ますますティズダルの容疑は深まり、逮捕もやむ無しとなったものの、
それでもどうしてもティズダルを犯人と思えないグラントは葛藤します。
しかし、ティズダルを訪ねたグラント達は目の前で彼に逃げられるという失態を犯してしまいます。
思い悩み夜も眠れなくなるグラントは、弱さも見せる人間味を感じさせられます。
ティズダルの無実の証明となるコートを探す捜査が続くなか、地元の警察署長の娘であるエリカは
1人無断でティズダルの行方を探す為奔走します。
犯人捜しのミステリではありますが、次第に明かにされるクリスティーンの生い立ちが彼女の実像を
鮮やかに描き出し、又、周囲の人物達の人物描写も丁寧で鮮やかで、人間ドラマとしての魅力が大き
いと感じさせられます。
グラントの部下であるウィリアムズ巡査部長の敬愛するグラントに対する思いやり等ほのぼのさせ
られます。
中でも、はねっかえりで行動力のあるエリカが非常に魅力的に描かれています。
ハンサムなティズダルの為に奔走しているのかと思ったら、実はグラントがお目当てだった?
殺人事件の捜査ではありますが、殺伐間感はなく、登場人物が生き生きとし、古き良きミステリを感
じさせられます。
巻末解説は宮部みゆきさんという贅沢さ。
曰く、
「上質なミステリ」「愛すべきキャラクター」
「展開は地味だけど、細部まで神経がいきわたっている」。
そして「上質なミステリはこうでなくちゃ!」
時にはこんなミステリも良いものです。

ジョセフィン・テイ(著)、佐良和美(翻訳)
”A Shilling for Candles”
1936年に発表されたジョセフィン・テイによる、ロンドン警視庁の警部アラン・グラントを主人公と
した長編推理小説。
テイの作品では、第5作目の『時の娘』が歴史ミステリ、ベッド・ディテクティブの分野における嚆矢
的存在として著者の代表作となっており、英米だけでなく、日本のミステリー作家にも影響を与えて
いると言われています。
しかし、『時の娘』を発表した翌年55歳の若さで亡くなり、惜しまれています。
『時の娘』は大好きな作品で、かなり昔に読んで以来、何度か読み直しをしていますが、大雑把では
ありますが概略はコチラをご参照下さい。
今作は少々古い作品ですが、偶然見つけたので飛びつきました。
内容(「BOOK」データベースより)
英国南部の海岸に、女の溺死体が打ち上げられた。すぐに身元は映画女優のクリスティーン・クレイ
と判明。現場の状況から事故死とも考えられたが、ロンドン警視庁のグラント警部は背後に殺人の臭
いを嗅ぎとった。容疑者としてクリスティーンの別荘に滞在していた青年ティズダルが浮上するが、
警察の動きを察知して行方をくらましてしまった。そんな折り、クリスティーンの遺言が開示され兄
ハーバートへの奇妙な遺言が明らかになった!名作『時の娘』のグラント警部初登場。ヒッチコックの
「第3逃亡者」の原作としても知られる黄金期の傑作。
ヒッチコックの作品は古い作品を含め随分多く観たつもりでしたが、『第3逃亡者』は観た事があり
ません。
原作とは大分異なる描き方をされている様ですが、観る機会があれば・・・と感じます。
『時の娘』では、ベッド・ディテクティブとしてリチャード3世の真実を追及したグラント警部ですが、
この作品はそれより前の出来事です。
グラント警部、愛すべき部下のウィリアムズ、又女優のマータはこの作品がデビューとなるのです。
冒頭で 浜辺で死亡しているハリウッドの映画女優のクリスティーン・クレイが見つかり、当初事故
かと思われたものの、溺死体に残されていたコートのボタンから殺人事件ではないかと捜査が始まり
ます。
財産を食いつぶし 放蕩の果てに一文無しとなり、クリスティーンに拾われ いそうろうとして別荘
に滞在していたティズダル青年が容疑者とみなされ、警察が動き出し、ロンドン警視庁からグラント
警部も捜査に係わる様になる。
明かにティズダルが不利であるが、他にも容疑者として映画関係者、女優仲間、占い師、夫であるエ
ドワード卿など曰くありげな人物が登場します。
そんな折、クリスティーンの遺言書が発表され、その最後に実の兄あてには”ロウソクのために一シリ
ングを”と書かれており、誰にも知られていなかった実兄の存在と、その意味不明とも言える奇妙な
遺言に含まれた兄との確執、特別な関係を感じさせられた警察は兄の行方も追い始めます。
そして、遺言書の最後に追加された条項には、ティズダルの為にカリフォルニアに所有する牧場と
現金が贈与されていた為、ますますティズダルの容疑は深まり、逮捕もやむ無しとなったものの、
それでもどうしてもティズダルを犯人と思えないグラントは葛藤します。
しかし、ティズダルを訪ねたグラント達は目の前で彼に逃げられるという失態を犯してしまいます。
思い悩み夜も眠れなくなるグラントは、弱さも見せる人間味を感じさせられます。
ティズダルの無実の証明となるコートを探す捜査が続くなか、地元の警察署長の娘であるエリカは
1人無断でティズダルの行方を探す為奔走します。
犯人捜しのミステリではありますが、次第に明かにされるクリスティーンの生い立ちが彼女の実像を
鮮やかに描き出し、又、周囲の人物達の人物描写も丁寧で鮮やかで、人間ドラマとしての魅力が大き
いと感じさせられます。
グラントの部下であるウィリアムズ巡査部長の敬愛するグラントに対する思いやり等ほのぼのさせ
られます。
中でも、はねっかえりで行動力のあるエリカが非常に魅力的に描かれています。
ハンサムなティズダルの為に奔走しているのかと思ったら、実はグラントがお目当てだった?
殺人事件の捜査ではありますが、殺伐間感はなく、登場人物が生き生きとし、古き良きミステリを感
じさせられます。
巻末解説は宮部みゆきさんという贅沢さ。
曰く、
「上質なミステリ」「愛すべきキャラクター」
「展開は地味だけど、細部まで神経がいきわたっている」。
そして「上質なミステリはこうでなくちゃ!」
時にはこんなミステリも良いものです。