知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

アナログチューナー非搭載DVD録画機器は,施行令1条2項3号の特定機器に該当するか

2011-01-10 20:12:47 | 著作権法
事件番号 平成21(ワ)40387
事件名 損害賠償請求事件
裁判年月日 平成22年12月27日
裁判所名 東京地方裁判所
権利種別 著作権
訴訟類型 民事訴訟
裁判長裁判官 大鷹一郎

第4 当裁判所の判断
1 争点1(被告各製品の特定機器該当性)について
(1) 施行令1条2項3号の特定機器
 原告は,被告各製品は,・・・特定機器(・・・)に該当する旨主張する。
 これに対し被告は,・・・,アナログチューナー非搭載DVD録画機器である被告各製品は,施行令1条2項3号の特定機器に該当せず,また,同号柱書きの・・・「アナログデジタル変換が行われた影像」とは,デジタル方式の録画の機能を有する機器の内部でアナログデジタル変換(AD変換)が行われた影像に限定されるから,アナログチューナーを搭載していない・・・被告各製品は,・・・,同号の特定機器に該当しないなどと主張して争っている。
・・・

(2) 施行令1条2項3号柱書きの「アナログデジタル変換が行われた影像」の意義
ア 法30条2項は,・・・と規定し,私的録音録画補償金の対象となる「デジタル方式の録音又は録画の機能を有する機器」は,「政令で定めるもの」として,その具体的な機器の指定を政令への委任事項としている。
 このように法30条2項が私的録音録画補償金の対象となる「デジタル方式の録音又は録画の機能を有する機器」の具体的な機器の指定を政令への委任事項とした趣旨は,私的録音録画補償金を支払うべき機器の範囲を明確にするためには,・・・客観的・一義的な技術的事項により特定することが相当であり,しかも,・・・技術開発により新たな機能,技術仕様等を備えた機器が現れ,普及することが想定され,このような機器を私的録音録画補償金の対象とするかどうかを適時に決める必要があること,逆に,・・・適時に除外する必要があることなどを考慮し,具体的な特定機器の指定については,法律で定める事項とするよりも,政令への委任事項とした方がより迅速な対応が可能となるものと考えられたことによるものと解される。
 このような法30条2項の趣旨に照らすならば,法30条2項の委任に基づいて制定された「政令」で定める特定機器の解釈に当たっては,当該政令の文言に忠実な文理解釈によるのが相当であると解される。
・・・
 施行令1条2項3号は,上記のとおり,同号に係る特定機器において固定される対象について,「アナログデジタル変換が行われた影像」と規定するのみであり,特に「アナログデジタル変換」が行われる場所についての文言上の限定はない。
 ・・・
 このように施行令1条の文言においては,同条2項3号の特定機器において固定される対象について,「アナログデジタル変換」すなわち「アナログ信号をデジタル信号に変換する」処理が行われた「影像」であることが規定されるのみであり,当該変換処理が行われる場所的要素,すなわち,当該変換処理が当該機器内で行われたものか,それ以外の場所で行われたものかについては,何ら規定されていない。
・・・
 してみると,特定機器に関する法30条2項及び施行令1条の各文言によれば,施行令1条2項3号の「アナログデジタル変換が行われた影像」とは,変換処理が行われる場所のいかんに関わらず,「アナログ信号をデジタル信号に変換する処理が行われた影像」を意味するものと解するのが相当である。
・・・
イ 前記第2の3(4)アのとおり,被告各製品は,いずれもデジタルチューナーを搭載しており,地上デジタル放送,BSデジタル放送及び110度CSデジタル放送の各デジタル放送を受信し,その影像をDVDに録画する機能を有する機器である。他方,デジタル放送においてデジタル信号として送信される影像の大部分は,もともとアナログ信号であったものについて,撮影から放送に至るいずれかの過程においてデジタル信号に変換する処理が行われているものと考えられる(デジタルビデオカメラで撮影された影像の場合には,当該デジタルビデオカメラ内において,アナログビデオカメラで撮影された影像の場合には,放送局内の設備において,アナログ信号からデジタル信号に変換する処理が行われているものと考えられる。)。
 したがって,被告各製品は,「光学的方法により,アナログデジタル変換が行われた影像を,連続して固定する機能を有する機器であること」(施行令1条2項3号柱書き)の要件を満たすものといえる。

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