知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

コンビニコミックの原稿料と利用許諾の範囲

2013-04-14 23:16:52 | 著作権法
事件番号 平成23(ワ)35951
事件名 損害賠償
裁判年月日 平成25年01月31日
裁判所名 東京地方裁判所  
権利種別 著作権
訴訟類型 民事訴訟
東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 大鷹一郎、裁判官 上田真史,石神有吾

(1) 被告が本件各作画を掲載した本件各コミックの増刷を発行したことは,前記争いのない事実等(3)アのとおりである。
 被告は,原告と被告は,原告が被告の依頼に基づいて本件各作画を制作し,被告において本件各作画を本件各コミックに掲載して利用することを許諾し,被告がその対価として本件コミック1については原稿1枚当たり1万円の原稿料を,本件コミック2ないし6については原稿1枚当たり1万3000円の原稿料を原告に支払う旨の各合意(本件各合意)をし,本件各合意に基づく原告の利用許諾の効力が,本件各コミックの増刷分についても及んでいる旨主張するので,以下において判断する。
・・・
(3)ア そこで検討するに,前記(2)ア及びイの認定事実によれば,被告は,B執筆の書籍「Bの都市伝説」シリーズを原作とする漫画版として,複数の漫画家が作画した漫画各話を掲載したコンビニコミックである本件各コミックの出版を企画し,被告主張の本件各合意のそれぞれの合意の時期に,本件コミック1については作画原稿1枚当たり1万円の原稿料を,本件コミック2ないし6については作画原稿1枚当たり1万3000円の原稿料を支払うとの条件で,原告に対し,本件各作画の制作を順次依頼し,原告は,その都度これを了承したものであり,被告の上記各依頼の趣旨は,原告に対し,原告が本件各作画の制作を行うとともに,被告が本件各コミックに本件各作画を掲載して出版及び販売することについての利用許諾を求めるものであるから,原告が被告の上記各依頼を了承することにより,原告と被告との間で,本件各合意が成立したものと認められる。
 そして,前記(2)アないしウの認定事実及び弁論の全趣旨を総合すれば,
① 本件各コミックと同種のコンビニコミックは,雑誌扱いの不定期の刊行物として,主にコンビニエンスストアで発売後約2週間程度販売された後,売れ残ったものが返品されるのが通常であり,初版の発売時にはあらかじめ増刷することは予定されていないが,これは事実上の取扱いであり,初版が返品された後であっても,需要があれば,増刷して発行することもあり得るものであり,コンビニコミックであるからといって,流通期間が性質上当然に限定されているとまではいえないこと,
② 被告は,上記各依頼に際し,原告に対し,上記原稿料以外の条件の提示をしていないのみならず,原告と被告との間で,原稿料以外の条件や本件各コミックの発行予定部数,流通期間等について話題となることはなかったこと
が認められる。

 上記①及び②の事情に照らすならば,本件各合意に基づく原告の利用許諾の効力は,本件各コミックの初版分に限定されるものではなく,その増刷分についても及ぶものと認めるのが相当である。

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