知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

ソフトウェアのプログラムの著作物性

2013-02-03 16:43:47 | 著作権法
事件番号 平成24(ワ)5771
事件名 著作権侵害差止請求権不存在確認等請求事件
裁判年月日 平成24年12月18日
裁判所名 東京地方裁判所  
権利種別 著作権
訴訟類型 民事訴訟
裁判長裁判官 大鷹一郎、裁判官 高 橋 彩,上 田 真 史

1 争点1(本件ソフトウェアのプログラムの著作権侵害の成否)について
(1) 著作権法が保護の対象とする「著作物」は,「思想又は感情を創作的に表現したもの」(同法2条1項1号)をいい,アイデアなど表現それ自体でないもの又はありふれた表現など表現上の創作性がないものは,著作権法による保護は及ばない。また,著作権法上,「プログラム」とは,「電子計算機を機能させて一の結果を得ることができるようにこれに対する指令を組み合わせたものとして表現したもの」(同法2条1項10号の2)をいい,「プログラムの著作物」(同法10条1項9号)に対する著作権法による保護は,その著作物を作成するために用いる「プログラム言語」(プログラムを表現する手段としての文字その他の記号及びその体系),「規約」(特定のプログラムにおけるプログラム言語の用法についての特組合せの方法)には及ばない(同条3項)

 そうすると,プログラムにおいて,コンピュータ(電子計算機)にどのような処理をさせ,どのような機能を持たせるかなどの工夫それ自体は,アイデアであって,著作権法による保護が及ぶことはなく,また,プログラムを著作権法上の著作物として保護するためには,プログラムの具体的記述に作成者の思想又は感情が創作的に表現され,その作成者の個性が表れていることが必要であるが,プログラムは,その性質上,プログラム言語,規約及び解法による表現の手段の制約を受け,かつ,コンピュータ(電子計算機)を効率的に機能させようとすると,指令の組合せの具体的記述における表現は事実上類似せざるを得ない面があることからすると,プログラムの作成者の個性を発揮し得る選択の幅には自ずと制約があるものといわざるを得ない。

 一方,複製とは,・・・(著作権法2条1項15号参照),著作物の再製は,・・・(最高裁判所平成13年6月28日第一小法廷判決民集55巻4号837頁参照)。

 以上の諸点に鑑みると,原告ソフトウェアのプログラムが本件ソフトウェアのプログラムの複製又は翻案に当たるかどうかを判断するに当たっては,まず,本件ソフトウェアのプログラムの具体的記述における表現上の創作性を有する部分と原告ソフトウェアのプログラムの具体的記述とを対比し,原告ソフトウェアのプログラムの具体的記述から本件ソフトウェアのプログラムの表現上の本質的な特徴を直接感得することができるかどうかを検討する必要があるというべきである。
・・・
 しかしながら,被告が主張する本件ソフトウェアのプログラムにおける表現上の工夫は,いずれも本件ソフトウェアの機能を述べるものにすぎず,それらは,プログラムの具体的記述における表現それ自体ではないアイデアであって,著作権法による保護が及ぶものではないから,その主張自体,本件ソフトウェアのプログラムの具体的記述における表現上の創作性を基礎付けるものではない。
 また,別紙1ないし12から明らかなとおり,被告が主張する本件ソフトウェアのプログラムのソースコードの記述における表現上の創作性を有する部分と原告ソフトウェアのプログラムのソースコードの具体的記述とは,一部分において共通する箇所があるものの,一致しているとはいえない。
 さらに,上記共通する箇所は,原告が主張するように,第三者(Baidu社)が提供しているオープンソースソフトウェアを利用した記述や,マイクロソフト社の「Visual Studio」が自動生成するソースコードを利用した記 述 , マ イ ク ロ ソ フ ト 社 が 公 開 し て い る 関 数 の 名 称 ( ・・・)の記述,コンピュータプログラムの文法上一般的に使用される表現を用いたもの(「While」文等)など,いずれもありふれた表現であって(甲8ないし20,22,弁論の全趣旨),作成者の個性が表れているものとはいえない

最新の画像もっと見る