知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

商標法4条1項8号における「含む」の意義

2009-10-24 21:56:22 | 商標法
事件番号 平成21(行ケ)10074
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成21年10月20日
裁判所名 知的財産高等裁判所
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 中野哲弘

・・・
(2) 事案に鑑み,法4条1項8号における「含む」の意義の観点から,審決の当否について判断する(取消事由2)。

ア 本件商標の内容は,前記のとおりであり,文字部分「INTELLASSET」のうち冒頭の5文字は被告の略称である「INTEL」と同一であるから,本件商標は物理的には被告略称を含んでいることになる。
 しかし,法4条1項8号が,他人の肖像又は他人の氏名,名称,著名な略称等を含む商標はその他人の承諾を得ているものを除き商標登録を受けることができないと規定した趣旨は,人の肖像,氏名,名称等に対する人格的利益を保護すること,すなわち,人(法人等の団体を含む)は,自らの承諾なしにその氏名,名称等を商標に使われることがない利益を保護することにあるところ(最高裁平成17年7月22日第二小法廷判決・裁判集民事217号595頁),問題となる商標に他人の略称等が存在すると客観的に把握できず,当該他人を想起,連想できないのであれば,他人の人格的利益が毀損されるおそれはないと考えられる
 そうすると,他人の氏名や略称等を「含む」商標に該当するかどうかを判断するに当たっては,単に物理的に「含む」状態をもって足りるとするのではなく,その部分が他人の略称等として客観的に把握され,当該他人を想起・連想させるものであることを要すると解すべきである。

イ かかる見地からみると,本件商標は,前記のとおり図形部分と「INTELLASSET」の文字部分から成るものであるところ,図形部分は青い縁取りのある正方形内の中央に欧文字の「I」を白色で表し,「I」の文字の背景には全体として青色と白色とが混ざり合った色彩が施されており,・・・ことに照らすと,「INTELLASSET」の文字部分は外観上一体として把握されるとみるのが自然である上,「INTELLASSET」が日本においてなじみのない語であり,一見して造語と理解されるものであって,特定の読み方や観念を生じないと解される(本件商標中の図形部分を考慮しても同様である。)。
 したがって,被告の略称である「INTEL」は,文字列の中に埋没して客観的に把握されず,被告を想起・連想させるものではないと認めるのが相当である。

 そうすると,本件商標は物理的には被告の略称である「INTEL」を包含するものの,「他人の氏名・・・の著名な略称を含む商標」(法4条1項8号)には当たらないというべきであり,原告主張の取消事由2は理由がある。

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