知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

動機付けを否定した事例

2011-10-16 10:49:26 | 特許法29条2項
2011年9月20日 平成22年(行ケ)10369号
知的財産高等裁判所
行政訴訟、審決取消請求事件
裁判長 塩月秀平

ウ 甲第4号証には,無効理由3について審決が認定した技術的事項が記載されている(前記第2の4(1))。しかし,前記イのとおり,甲8発明では高速搬送レーンによって送られるネタ皿を客が取ることは想定されていないから,甲8発明と甲4発明が同一の技術分野に属し,客に飲食物を供給するというごく抽象的なレベルでは使用目的,用途や使用用途に共通するところがあるとしても,客が搬送されてくるネタ皿を自ら取り上げることを前提とする甲4発明を適用する動機付けがない

(2) 前記(1)のとおり,甲8発明では高速搬送レーンによって送られるネタ皿を客が取ることは想定されていないから,注文品を搬送する高速搬送レーンとそれ以外の飲食物を搬送する通常のクレセントチェーンの高さを各別に異ならせ,両搬送装置を移動する飲食物(ネタ皿)相互の区別をより明瞭にする必要に乏しく,かかる高さを異にする構成を採用する動機付けに欠ける。

 原告は,客が高速搬送レーンの上のネタ皿を物理的に取り上げることができないわけではないなどと主張して審決の認定を非難するが,甲第8号証の段落【0011】の記載にかんがみれば,甲8発明の装置において客が高速搬送レーンのネタ皿を自ら取り上げることがないように配慮されていることは明らかである。のみならず,甲8発明に基づく本件発明の容易想到性判断(動機付け)においては,装置の物理的構造上,客が高速搬送レーンからネタ皿を物理的に取り上げることができるか否かに焦点を当てるのではなく,サービスの同質性の有無も念頭に置く必要があるのであって,原告の上記主張は失当といわなければならない。

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