知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

「送達」が適法にされたか否かの判断は厳格になされるべきとした事例

2010-10-03 10:01:19 | 商標法
事件番号 平成22(行ケ)10078
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成22年09月30日
裁判所名 知的財産高等裁判所
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 飯村敏明

1 審判請求書副本送達の瑕疵(取消事由1)について
 ・・・
 「送達」とは,特定の名宛人に対して,書類の内容を了知する機会を付与するために,法の定める特定の方式に従って行われる通知行為である。法が,特定の書類を通知するに当たり,法の定める送達によらなければならないとしたのは,
① 送達を受けるべき者に対して,当該書類の内容を確実に知らしめて,その者の手続上及び実体上の利益を確保し,
② 法に従った通知行為がされた以上,送達を受けるべき者が,現実に書類の内容を了知したか否かにかかわらず,通知が有効に行われたものとして,法所定の法的効果を付与し,手続を進行させることによって,迅速かつ円滑な手続を確保し,
③ 通知が所定の方式によって行われ,かつ,その事実を公証することによって,所定の手続上及び実体上の効果が争われることを防止して手続等の安定を確保する等の趣旨・目的が存在するからである。

 「送達」が適法に行われると,上記のような趣旨目的に即した効力が付与され,手続を進行させることができるが,他方,当事者の実体上及び手続上の権利・利益に重大な影響を及ぼすおそれがあるため,「送達」が適法にされたか否かの判断は,上記の観点に照らして,厳格にされる必要がある

 本件について,この観点から検討する。

 ・・・
審判長は,平成21年6月22日,原告に対して,航空扱いとした書留郵便に付して,本件取消審判請求書の副本を発送したこと,同副本は,「ABC」に宛ててされたこと,原告は,そのころ既に住所を変更しており,上記住所から,現在の住所である「DEF」に移転していたこと・・・が認められる。
 ・・・

(2) 判断
 上記認定した事実に基づいて,本件における送達が適法であるか否かを検討する。

 本件取消審判請求の副本の送達は,原告が,日本国内に営業所を持たない法人であり,上記登録手続から審決までの間,日本において,いわゆる商標管理人を置いていなかったことを理由として,審判長により,航空扱いとした書留郵便に付して,国際登録に記載された原告の住所地に宛てて発送されているので,法の要求する要件を,一応備えているといえる。
 しかし,前記のとおり,「送達」は,送達を受けるべき者が,現実に書類の内容を了知したか否かにかかわらず,手続を進行させることを可能とさせるものであり,当事者の実体上及び手続上の権利・利益に重大な影響を及ぼすおそれがある手続であることに照らすならば,送達が適法であるか否かについては,送達を受けるべき者にとって,防御の機会が十分に確保されていたか否かを基準として判断すべきであるそのような観点に照らすならば,航空扱いとした書留郵便に付してされた送達が,適法なものとして扱われるためには,特段の事情の存在しない限り,送達を受けるべき当事者の真の住所に宛ててされた場合であることを要すると解するのが相当である。

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