知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

技術的意義等の考慮は発明の要旨の認定の問題ではなく、容易相当性判断の問題であるとした事例

2010-10-03 08:24:53 | 特許法29条2項
事件番号 平成22(行ケ)10020
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成22年09月22日
裁判所名 知的財産高等裁判所
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 滝澤孝臣

(3) 相違点1の認定の是非
ア 原告は,本件審決の相違点1の認定の誤りとして,本件補正発明1の傾斜面の上縁部と下縁部の高低差を本件審決が「15mm」と認定した点について,「少なくとも15mm以上」であって15mmに限定されるものではない旨を主張する。

イ しかるところ,本件補正発明1の特許請求の範囲には,前記の点について,「傾斜面の上縁部と下縁部との高低差を少なくとも15mm以上」と記載されおり,この記載自体に不明確な部分は存在しない。そして,本件補正明細書を参照しても,請求項1の上記記載を「15mm」と限定して解釈すべき理由は見当たらない

 この点について,被告は,「15mm」との認定について,「少なくとも」及び「以上」との点には格別の技術的意義はなく,また,仮に技術的意義があるとしても,本件審決は,原告の主張を踏まえて判断しているのであって,「15mm」に限定して判断しているものではないなどと主張する
 しかしながら,「少なくとも」及び「以上」の点にいかなる技術的意義が存するか及び原告の主張をいかに踏まえるかは,いずれも容易想到性判断の問題であって,発明の要旨の認定の問題ではなく,被告の主張は採用し得ない

ウ したがって,本件審決が本件補正発明1の特許請求の範囲中の上記の点を「15mm」と限定的に認定したのは不適切であり,本件補正発明1の容易想到性を判断するに当たって,上記の点は「少なくとも15mm以上」と認定した上で行うべきである。

 ・・・

(イ) したがって,傾斜面の高低差を「少なくとも15mm以上」と限定することは,当業者が適宜決定し得る設計的事項であるにすぎず,本件補正発明1の相違点1のうち,高低差は,引用例に基づいても容易に想到し得るものというべきである。

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