知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

印刷物上の商標の表示と指定役務についての本件商標の使用(商標法50条)

2012-06-10 09:15:32 | 商標法
事件番号 平成23(行ケ)10348
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成24年05月31日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 飯村敏明

2 審決の理由
 ・・・
(3) サイエントロジー東京における使用について
 ・・・サイエントロジー東京は,ポスター・・・であり,表題を「THE BRIDGE TO TOTAL FREEDOM」とする印刷物(甲17・審決乙17)(判決注 甲17の1ないし3を総称して,「甲17」という。)を,販売するために輸入し,平成21年12月末に所有したが,印刷物(甲17・審決乙17)は,宗教哲学に関する知識の教授に付随してその生徒に譲渡等されるものとはいえず,独立して商取引の対象となるものというのが相当であり,ほかに,印刷物がかかる役務の提供に付随するものとみるべき証拠はない。したがって,上記印刷物は,商標法上の商品に該当するというべきものであり,これに本件商標が表示されているとしても,そのことをもって請求に係る指定役務についての本件商標の使用とはいえない


第4 当裁判所の判断
・・・
(2) 判断
 上記(1)イ(ア) 認定の事実によれば,甲17の印刷物には「THE BRIDGE」,「The Bridge(R) 」,「The Bridge」との記載があり,「The Bridge」については原告の商標であることが明確に注記されているから,甲17における「TheBridge」は,原告の出所を識別するものとして使用されていることが認められる。
 「The Bridge」と本件商標とは,文字の外観(大文字と小文字において若干の相違がある。),称呼及び観念において共通し,両者は,社会通念上同一の商標である。

 また,上記(1)イ(イ) 認定の事実によれば,甲17の印刷物は,サイエントロジー哲学を学習する者,又は,その学習を始めようとする者に対し,・・・,人間の回復と精神的な人の能力とパワーの究極的な拡張への道筋を説明し,その過程で受けることのできるサービスやトレーニングを紹介し,もしくは,自己の学習の進行状況を確認させることを目的として作成されたものと解される。さらに,甲17は,サイエントロジー東京の生徒向けの資料として輸入し,保有され,その部数も限られていることに照らすならば,同印刷物は,サイエントロジー哲学を学習する者,又は,その学習を始めようとする者に対して,供与されるものであって,不特定多数の者に対する販売することを目的としたものではないと解される。

 そうすると,甲17の印刷物は,サイエントロジー哲学の教授という役務の提供を受ける者の利用に供する物であるというべきであるから,これに本件商標と社会通念上同一の商標を付する行為は,本件商標の指定役務である「哲学の教授その他の技芸・スポーツ又は知識の教授」中,「哲学の教授」について本件商標を使用したものと評価すべきである(商標法2条3項3号)。

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