知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

解決課題の異なる主引用例

2012-06-10 09:37:11 | 特許法29条2項
事件番号 平成23(行ケ)10208
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成24年05月31日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 飯村敏明

 以上のとおり,引用発明は,粘度の異なるインクの印刷ユニットを複数並べ,それぞれの印刷ユニットの長所を生かして,べた刷りも,細線印刷も美しく仕上げることのできる印刷装置を提供するものであるが,それらのインクを重ね刷りすることを前提としたものではなく,重ね刷りによる課題(・・・)の解決を目的としたものでもない。引用例には,重ね刷りによる印刷工程の促進を目指して開発されたウェットトラップ(甲2の段落【0004】)を採用することに関連した記載,及びウェットトラップを実施した際に生じる課題解決に関連した記載はない

 そうすると,本願発明の相違点に係る構成,すなわち「前記複数のインク層が,重なり合ったものであり,かつ,一番目のインク層から前記希釈剤の一部が蒸発することにより,前記インク付けステーションで前記被印刷体に塗布された一番目の液体インク層の粘度が増加し,前記被印刷体が前記インク付けステーション間を移行する際,前記一番目のインク付けステーションから間隔を置いて位置する次のインク付けステーションにおいて前記一番目のインク層上に塗布される前記二番目の液体インクをウェットトラップするように,一番目のインクの粘度が二番目のインクの粘度よりも高くされる」との構成について,当業者が引用発明に基づいて,容易に発明をすることができたものということはできない。
 ・・・
 また,仮に,ウェットトラップ印刷法が,本願優先日前における技術常識であったとしても,上記アのとおり,引用発明においては,インクを重ね刷りすることを前提としておらず,重ね刷りによる解決課題(色の汚濁の防止,印刷時間の長期化の防止等)を目的としたものではないから,引用発明からウェットトラップ印刷法を採用する動機付けは生じない

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