知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

自主規格の適合マークの一部をなす商標の使用

2011-04-03 20:54:12 | 商標法
事件番号 平成22(行ケ)10359
事件名  審決取消請求事件
裁判年月日 平成23年03月17日
裁判所名 知的財産高等裁判所
権利種別 商標権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 滝澤孝臣

第2 事案の概要
・・・
1 本件商標
 本件商標(登録第868916号)は,「JIL」の欧文字をゴシック体で横書きしてなり・・・,商標権存続期間の更新登録がされてきたものである(甲88)

第4 当裁判所の判断
・・・
(2) 本件使用商標の構成中の「JIL」部分について
ア 上記(1)のとおり,本件使用商標1は原告の規格である JIL5501 に適合している旨の評定を受けた非常用照明器具等に,本件使用商標2ないし4は原告の規格である JIL5002 に適合している製品登録を受けた埋込み形照明器具に,それぞれ貼付されるものである。
イ そして,本件使用商標1についてみると,上部から順に,二重円間に「(社)日本照明器具工業会」と,二重円の一番内側に「適合」と,二重円間に「JIL5501」との記載をするものである。

 ・・・,これらの上,中,下段の各記載は明瞭に分けられており,かつ,それぞれが関連性を有するものと解することもできないから,それぞれが独立したものとしてもみることができる。
 その上で,下段の「JIL5501」について改めてみると,何らかの記号であると推測されるとしても,上記のとおりの原告の規格である JIL5501 に係る記載であると一見して認識されるものではなく,必ずしも特定の観念を生ずるものではないところ,これは,欧文字の「JIL」と算用数字である「5501」とからなるものであるから,これを一体のものとしてみるほかに,「JIL」と「5501」とを区切ってみることが可能であって,「JIL」との独立した表示も抽出して認識されるものということができる.
・・・
エ そして,以上のように本件使用商標の構成中から独立した表示として抽出される「JIL」の欧文字についてみると,それは,本件商標の指定商品である「・・・」との関係で何らかの性状等を示すものと認めることもできないから,同部分は,本件商標との関係において,自他商品識別標識としての機能を果たし得るものということができ,当該部分のみが独立して自他商品識別標識としての機能を果たし得るとはいい難いとした本件審決の判断は首肯することができない
 また,仮に,取引者・需要者において,「JIL5501」や「JIL5002」が照明器具の認証に係る標章であることを知っていたとしても,「JIL」部分が照明器具の認証の部類に係るものであることを,これに続く算用数字部分が具体的な認証の種類を表すものと理解し得るものであって,「JIL」部分も,独立して自他商品識別標識としての機能をも有しているものということができる。


(3) 本件商標の使用について
ア 前記(1)によると,本件使用商標は,原告による評定又は認証がされた原告の規格に適合する照明器具であることを証する標章であって,その上段に原告の名称が記載されていることが示すように,本件使用商標によってその旨を証している者は原告ということができる。
 もっとも,前記(1)のとおり,実際に本件使用商標を作成し,当該器具に同商標を貼付するのは各登録事業者であるが,これは,原告の了承の下,原告に使用料を支払った上で,原告の名称で行っているものであるから,原告が,各登録事業者を介して,照明器具に本件使用商標を貼付して使用しているというべきものであって,本件使用商標の構成中に存在する本件商標についても,原告が,各登録事業者を介して,照明器具に本件商標を貼付して使用しているものであるということができる。
・・・
イ また,前記(1)によると,原告は,製造事業者からの申請に基づき,原告の規格である JIL5501 又は JIL5002 に基づいて審議し,評定可又は登録可となった場合に,製造事業者から使用料の支払を受けた上で,本件使用商標を照明器具に貼付して使用することを認めることにより,本件使用商標の構成中に存在する原告が商標権を有する本件商標についても,照明器具に貼付して使用させているものであって,このようにして使用許可を得た製造事業者は,本件商標の使用についての通常使用権者ということができる

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