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舞踊「与一の段」余談

2024-08-25 21:31:33 | 古典芸能
 昨夜のEテレ「古典芸能への招待」は「古典芸能を未来へ」と題して、講談をメインに華やかな日本舞踊が繰り広げられた。
 中でも平家物語「扇の的」をモチーフとした舞踊「与一の段」はいろんな意味で興味深く、楽しんだ20分だった。出演は尾上菊之丞、市川染五郎、藤間紫、長須与佳(琵琶)ほかの皆さん。
 まず僕の興味の1点目は、かつて那須に在勤していた頃、度々訪れた那須温泉神社(なすゆぜんじんじゃ)は、那須与一ゆかりの神社であり、与一と源義経が初めて出会った場所でもあること。屋島の戦いにおいて勇名を馳せた弓の名手与一は、那須岳で弓の稽古をしていた時、那須温泉神社に必勝祈願に来た源義経に出会い、父の資隆が兄の十郎為隆と与一を源氏方に従軍させる約束を交わしたという伝説が残されている。また与一が扇の的を射る際唱えた「南無八幡大菩薩、我が国の神明、日光の権現、宇都宮、那須の湯泉大明神、願はくは、あの扇の真ん中射させてたばせたまへ」という祈念詞は舞踊の中でも歌われた。舞踊では那須与一を尾上菊之丞さん、源義経を市川染五郎さんが演じた。


那須与一ゆかりの那須温泉神社(栃木県那須郡那須町大字湯本)※写真は那須町観光協会様のご提供

 2点目は、与一が屋島の合戦で射落とした扇を掲げた平家の官女が玉虫御前(たまむしごぜん)。玉虫御前の故郷は肥後国は御船の玉虫といわれ、玉虫御前が源平合戦後、故郷に帰って寺を建て、平家の菩提を弔った玉虫寺の跡が残っていること。僕は若い頃、仕事でこの付近をよく車で通っていた。
 この玉虫御前を演じたのが朝ドラ「ブギウギ」にも出演した人気舞踊家・藤間紫さんというのも親しみを感じた。


楊洲周延 作「那須与一」(船上の女性が玉虫御前)


玉虫御前を演じた藤間紫さんの舞


玉虫御前の故郷・玉虫寺の跡(熊本県上益城郡御船町滝尾玉虫)

 そして最後に、この舞踊を盛り上げたのは叙情性ゆたかな長須与佳(ながすともか)さんの琵琶と歌。
 彼女は平成15年度の第9回くまもと全国邦楽コンクールで最優秀に選ばれており、令和元年に行われた「邦楽新鋭展Vol.5」で初めて彼女の演奏を観た。この時も彼女が演奏した「扇の的」に感動した思い出がある。そして昨夜その感動が甦った。
 彼女は薩摩琵琶奏者であるとともに琴古流尺八の奏者でもある。



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