徒然なか話

誰も聞いてくれないおやじのしょうもない話

早坂暁の世界

2017-12-18 17:21:00 | テレビ
 大好きな脚本家がまた一人旅立たれた。早坂暁(はやさかあきら)さんは、60年代の終わり頃から90年代まで、主にテレビで数々の名作ドラマを生み出したレジェンドの一人である。僕が見た早坂作品は数え切れないほどあるが、その中から特に好きな3本を選んでみた。

◆夢千代日記(NHK 1981年)
 日本のテレビ史上、伝説的な存在となったこのドラマシリーズは、吉永小百合が出演した映画・ドラマの中で僕が最も好きな作品だ。このドラマが始まった時、吉永小百合は35歳、いろんな意味でピークの時期ではなかったろうか。胎内被爆者である夢千代は余命2年と宣告されている芸者置屋の女将。当時は裏日本と呼ばれた日本海の冬の景色。寂れた温泉町。どうしようもないほど暗いこのドラマを見るたびに陰鬱な気分になるのだが、だんだんそれがクセになっていく。また、脇を固める俳優陣がすごい。そのどれもがまさに適役なのだ。超一流のスタッフとキャスト。やはり良いものができないわけがない。
 また、「夢千代日記」といえば、はる屋の芸者たちが唄い踊る「貝殻節」が忘れられない。ドラマの舞台となった兵庫県の湯村温泉あたりの民謡かと思いきや、実は「貝殻節」は、湯村温泉とは随分離れた鳥取県の鳥取港あたりで生まれた民謡だという。
 「続・夢千代日記」「新・夢千代日記」とシリーズを重ねるごとに、このドラマの評価は高まり、早坂さんの代表作となった。


夢千代、小夢、金魚が唄い踊り、菊奴が三味線を弾く「貝殻節」



◆田舎刑事・時間よ、とまれ(テレビ朝日 1977年)
 渥美清の田舎刑事シリーズの1本で、僕はテレビドラマ史上、傑作中の傑作だと思っている。このエピソードで小林桂樹が演じたのは殺人犯である過去を消し、別人として有力者に成り上がった男の役だった。渥美清との鬼気迫る対決が印象に残るが、普段は人のよいサラリーマンや人格者的な役どころが多い小林桂樹が、それまでのイメージを払拭するような快演だった。早坂暁による脚本は、まるで松本清張を思わせる迫力があった。



◆山頭火・何でこんなに淋しい風ふく(NHK 1989年)
 フランキー堺さんが種田山頭火を熱演しているが、これはもともと早坂暁さんが、渥美清さんの主演を想定して書いた脚本。諸事情で渥美清さんは出演できなかったが、本人は並々ならぬ意欲を見せていたという。山頭火が一時、堂守を務めていた植木町味取の味取観音堂がある瑞泉禅寺に渥美さんがフラリと訪ねて来たことがあるという。おそらくこのドラマのロケハンだったのだろう。瑞泉禅寺がご実家の民謡三味線・本條秀美さんから聞いたお話だ。



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2 コメント

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田舎刑事 (YOKO)
2017-12-19 08:38:19
この記事を拝見して、どうしても、田舎刑事が見たくなり、探したら一部が見られました。一部見ただけでも、素晴らしい作品だというのがわかりました。ご紹介いただきありがとうございます、
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Re: YOKOさま (FUSA)
2017-12-19 10:51:52
この頃には「男はつらいよ」シリーズの人気が不動のものとなっていたので、渥美清=寅さんのイメージが固定化するのを避けようと、渥美さんがいろんな作品にチャレンジしていた最中の作品ですね。映画でも金田一耕助を演じた「八つ墓村」なども今となっては貴重な1本だと思います)^o^(
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