徒然なか話

誰も聞いてくれないおやじのしょうもない話

五足の靴とおてもやん

2022-12-01 20:41:38 | 音楽芸能
 先日、県立図書館に行った時、いつものように江津湖畔を散策した。加勢川沿いに歩いていくと図書館の南側に「旧砂取細川邸庭園」がある。肥後熊本藩10代藩主・細川斉護公の正室・顕光院の隠居屋敷跡である。ここはその後変遷を重ね、「五足の靴」に登場する「勢舞水楼(せんすいろう)」、料亭「江津花壇」、井関農機保養所「江津荘」(わが父が利用したことがあるらしい)などと変遷した。
 「五足の靴」というのは、明治40年7月から8月にかけて、歌人与謝野寛が、まだ学生だった木下杢太郎、北原白秋、平野万里、吉井勇の4人を引き連れ、九州を中心に各地を旅した時の紀行文「五足の靴」のことである。その中で江津湖の屋形船で涼を楽しむくだりがある。そこに二人の芸妓がやって来て民謡「おてもやん」を披露するのだが、この二人が当時「土手券」と呼ばれていた町芸者だ。「おてもやん」について肥後の古い土謡と書かれているが、この唄が永田イネによって作られたのは、明治30年代前半と言われているので、「五足の靴」の時点ではそんなに古い唄ではない。「おてもやん」の歌詞はほとんど耳コピーと思われるので不正確な部分もあるが、この時代には既に「おてもやん」が熊本でかなり普及していたことがうかがえる。




昔の上江津湖(現在の県立図書館裏辺り)