9月5日の東京・国立劇場における本條會の舞台で舞踊団花童が踊る演目の中に「小笠原のうた」という異色の演目がある。これは彼女たちのレパートリーの一つである「島めぐり」の特別バージョンだと思われる。この「島めぐり」は本條秀太郎さんが、伊豆諸島や小笠原諸島に残る民謡を集めて俚奏楽として編曲したもの。この俚奏楽「島めぐり」のうち「夜明け前」「ギダイ」「ウワドロ」などの小笠原諸島に伝わる民謡は、一般的な日本古来の音楽とは異なり、明らかにミクロネシア系を思わせる。小笠原諸島は江戸時代初期に発見されたが、日本の領有が確定したのは明治に入ってから。その後、第一次世界大戦から第二次世界大戦の間、ミクロネシアの島々を日本が統治していた頃、人や文化の交流によってミクロネシアの民俗音楽が小笠原に入ってきたようだ。ほかの多くの日本民謡の中でこの曲を聞くと、一種独特の世界観が広がるのを感じる。