森田曠平 「八丈のめならべ達」
民謡・端唄の大家、本條秀太郎さんが創始した「俚奏楽」の中でも、この「島めぐり」は伊豆諸島や小笠原諸島に残る民謡を集めて歌い込んだ異色の組曲である。神津節(神津島)、御蔵島節(御蔵島)、八丈ショメ節(八丈島)などの伊豆諸島の民謡に加え、「夜明け前」、「ギダイ」、「ウワドロ」などの小笠原諸島に伝わる民謡など印象的な旋律が続く。中でも要所要所を締めるのが「八丈ショメ節」。八丈島の代表的な民謡「八丈ショメ節」は、盆踊り歌、宴会歌として即興で歌われ、何百という歌詞があるという。多くの島ことばが使われていて、「めならべ」もその一つ。「女童」と書いて若い娘のことを指す。数多の歌詞の中には、次のようなものもある。
♪ 猫にゃかとうぶし めならべにゃまだら 竈にゃむすくび 家にわ嫁
(猫には鰹節、娘には晴れ着、かまどには太い薪、家には嫁が大切だ。)
(猫には鰹節、娘には晴れ着、かまどには太い薪、家には嫁が大切だ。)
江戸時代、流刑の島として知られた八丈島だが、その昔、八丈島は「女護が島」ともいって、美人ばかりが住む島だったという伝説もある。八丈島に流罪となった近藤富蔵が書き残した「八丈実記」には「めならべ」とは「美並」と書くという一節もあるほどだ。