のら猫の三文小説

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次平の敗北 No.8

2012-12-12 17:21:15 | 次平の敗北

珠代は功一を益々、好きになってきた。  




珠代は、いつも功一の事を考え、夜が待ち遠しくなった。「私は、本当にいつもやりたい女になってしまった。」と思い、功一が仕事に言っている時に、語学の勉強を始めた。功一がこの頃本も読めないと言っていたのを思い出した。英語や蘭語は、珠代に取って、難しく内容もよく判らなかったが、功一さんの為にしたいとの思いが、それを支えて、やがて少しつづではあるが、判るようになっていった。



功一も自分の好きな学問の事で、珠代の参考のためや出来るだけ、資料や本を集めていた。帰宅してからも珠代に、話したり、教えたりする事は好きであった。



珠代は、元々功一を慕って、一緒になった。一緒にいる時間が増えてくると、少しは功一の欠点などや嫌いな点を感じる事があっても、いいようなものであったが、珠代の功一への思いは、深まっていくようになっていた。功一が帰宅すると嬉しくなり、珠代は、功一が見てくれているだけで、身体が感じてくるのが、判った。

英語や機械の事を教えてくれる時に功一が熱っぽく話すのを、見ていると身体の中が熱くなっていく気がした。珠代には、難しかったが、熱心に一生懸命に理解しようとしていた。功一が会社にいっていても、勉強している時には、功一が側にいる気がしていた。功一が話す、食べる、本を読む、功一のすべての動作が愛おしく、嬉しかった。功一は、それほど、珠代を求めなかったので、ある日、珠代は功一に、裸で功一の側に寝たいと言うようになった。涙をためて、懸命に言うので、功一も裸の珠代を抱くようになった。



珠代は、ますます自分の感じ方が強くなっている事を知っていた。毎晩 裸になりたかったが、功一もそんなに認めてくれない。ただ抱いてくれて眠るだけの時もあった。そんな時でも、抱かれるだけで、逝ってしまう事もあった。珠代はますます綺麗になっていった。たまに、実家に帰ると、会う度に、綺麗になる珠代にみんな吃驚していた。珠代を3日しないでいると、珠代は泣き出して土下座して頼むようになった。ただ感じ方が深くなっているので、1回しても意識がなくなってようであった。そんな二人を見ていた神様が珠代に休憩を与えるために、珠代に子どもを授けた。



珠代は妊娠している事が判っても、少しの間は黙っていた。出産で功一から離れる事を恐れていた。しかしお腹が少しつづ出てくると、功一にも判ってしまった。珠代は功一の側に居たかったが、父の明彦や母のお糸に、功一さんに迷惑がかかるからと言われ、しぶしぶ実家へ帰った。

つわりも苦しかった。なにより、功一と離れている事が辛かった。功一は度々顔をみせたが、直ぐに帰ってしまう。むしろ つわりで苦しんでいると少し忘れられた。勉強の本を読んでいると功一といるような気がして、一層勉強した。出産も功一のものが入っていて、かき回されていた感じがして、苦痛と快感が交互に襲ってきた。出産後直ぐ帰りたかったが、父や母の説得で暫く実家にいた。功一も度々 顔を見に来てくれたが、10日もすると、功一への思いが強くなり、家に帰ってしまった。

父母は珠代を案じて、乳母をつけてくれたが、珠代は自分で乳をあげたかった。子どもは男の子で、功一郎と名付けられた。功一や次平とおゆきやそれに珠代の父母も喜んでいた。珠代自身が一番喜んでいた。珠代が乳を与える時に、功一郎は時折、珠代の乳首を噛んだ。珠代は、噛まれると痛みが走ったが、なぜか嬉しかった。感じる事もあった。功一さんもっと噛んでとつぶやく事もあった。



功一は忙しかった。至る所で機械の発注が増えていた。時代の流れが、新しい機械を求めていた。色々な機械を西洋事情を研究し、工夫して、新しい機械を作っていた。珠代も昼間は、功一から色々と本を読むように言われていた。功一の命令は、絶対なのだ。珠代は必死で勉強していた。勉強していると、昼間でも功一と一緒にいるような気がしていた。



子どもを産んだ後、珠代はより一層敏感になり、深く強く感じるようになっていった。功一も忙しく、そんなに珠代を抱いてくれなかったので、珠代が時折裸になりたいといって、功一に抱きついていた。功一は疲れているので、珠代が上になっていく事が増えた。珠代は見られると、より強く深く感じるようになっていた。神様は珠代を落ち着かせるためにしたのかは判らないが、直ぐに二人目の子どもを授かった。



珠代には、二度目は少し違っていた。功一郎は、功一の面影と似ていて、小さい功一が見守っていてくれた。功一とは離れていた事は辛かったが、勉強したり、小さい功一が慰めてくれた。出産する時の苦しみは何故か少ないように感じた。今度も男だった。功一さんがもう一人出来たと嬉しかった。功二郎と名付られたその子は、又珠代の乳首をよく噛んだ。珠代は、苦痛と快感を味わっていた。




次平は京にいた。



次平は、京の医院と大坂の医院と学舎を回る生活を続けていた。

次平は思っていた。

私は禁裏に恩顧を受けた。そのため、今は江戸に長期間滞在する事も難しくなった。鉄平からもこれからの見通しを聞かれたが、分からないと答えるしかなかった。鉄平とお香さんの娘のであるお恵さんの言う通り、今は変動期で、新しい時代へ対応する時間稼ぎかも知れないが、新しい時代は、今までの土台の上に立つものだ。漢方医は突然消えるものではないという指摘は、次平の考え方も揺さぶった。つまり今までの漢方医自身の再教育も必要となるのだ。どうなのか分からないかけど、何もしない訳には、行かない。時間稼ぎでも、新しい時代で大変革が起き、時代遅れになろうとも、今を生きるしかない。今でも病人はいるし、治療も必要なのだ。お恵という娘は大した娘だ。江戸医院の医師と結婚しているが、あの医師では、太刀打ち出来まい。奔放だが、鉄平さんとお香さんを大きくしたような娘だ。私が死んだら、各医院は、暫くそのままで、やがて分裂するとも言ったようだ。それは恐らく当たっている。各医院の今後も考えて行こう。



功一の婚礼の時に、私が功一とお香さんが結婚したらと考えていた時もありましたと、冗談半分でこっそり言ったら、お香は、即座に2人に取って、良くありませんと言った。何故と聞いたら、お香は、「二人ともうまくいけば、別々に輪の中心に成れる人です。二人が一緒なら輪は大きくなるどころか、輪も出来ません。二人で牽制するだけでしょう。もっとも お恵は別の道に落ちる可能性は、いつもあります。お恵にも言ってます。」と言っていた。


まあそんな事はあるまい。あの娘は賢い。ただ功一が落ちる道とはなんだろう。お香は言わなかったし、私も聞かなかった。独善と過信とが要因だろうとは思う。珠代は、おゆきと似ているようで違う。功一も少し変わってきたが、珠代も変わっていくだろう。今は功一の言いなりだ。功一を支える事は言いなりだけでは済まない。あの娘にそれが分かるようになるだろうか。今は鉄平さんとお香さんに見守ってもらうしかない。それにしても功一にあんな屋敷は、分不相応だろう。功一と一平というお恵の夫でも医師。そうか江戸の医院は、あの二人がなんとかするだろう。鉄平の視野には、それがあるのだろう。


みどりと一太郎との間もようやく、子どもが出来た。5年目にして始めて出来た。あの二人は、学者の性格を持つ医師になって、おとなしく生活していくだろう。大坂の学舎や医院の今後は、あの二人が考えればいいのか。


洋介が全然分からない。長崎の医院では、医術を勉強しもうすぐ医師になるらしい。格別優秀とは思えないが、暇があると、庭で木刀を振っており、長崎の港を見ているようだ。 もっとも私がそうしたかったように、ひっそりと長崎で生きていくのかも知れない。石部によく頼んでおこう。





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