のら猫の三文小説

のら猫が書いている、小説です。
質問があれば
gmailのnaosukikan
まで連絡ください

次平の復讐 No.14

2012-11-23 12:59:25 | 次平の復讐
松江からの連絡


鉄平にも連絡が入っていた。城代家老の中山勘三郎は、松江公の代替わりで事件が発覚する事を恐れて、三崎屋を処分した事はほぽ確実であった。盗賊を雇い、屋敷に踏み込む、皆殺しにして、文書が残る事を恐れて火を付け、その後、口封じのため、盗賊を殺したものである。従って文書等は残っていないようであった。 



鉄平は純次に対して、中山親子が書いた書簡を入手して、自白書と遺書の準備を進めさせた。三崎屋を殺した武士たちについては、更にくわしく調査させた。人を殺して金を得られればまた繰り返す事もあるからである。 



一方 藤一は江戸で中程度の料理屋を買い取り、盗み出した金額の三分の一ほどは江戸に持ち出していた。藤一が購入した屋敷に接している屋敷が売りに出た時に、鉄平名義で購入して、藤一の屋敷も鉄平が購入する形で譲渡が進んでいた。

鉄平は藤一に半分程度は、自由にしていいと言って、屋敷の購入名目で三百両の為替を送っていた。千三百両程度の小判を置いた屋敷と隣接する屋敷を併せて、三百両で、鉄平が購入した事になった。 



鉄平の指図を受けた藤一は、指示通りに、順三という名前の商人に、居抜きの形で屋敷を譲り、藤一は江戸へ去った。順三とは純次の事であったが、藤一は知らなかった。 


鉄平が萩に入ると、松江の純次からの連絡が入っていた。



小崎屋を殺害した武士2人が酒場で暴れ、居合わせた商人を斬った。中山の息子道之助が、無礼討ちで片づけようと強引に進めたのが、裏目に出た。斬られた商人の家族の怒りを買い、藩目付に訴えた。

松江公が国にいた事もあって、如何に城代であっても、変に口を挟む事ができなくなっていた。それに次平が帰参する事が噂になり、松江公も原親子の事件を思い出していた。商人の家族が怒っていた時に、藩目付への訴える事を教えたのは実は純次で、密かに原家の家宝は、中山の蔵に分かり難いように戻しておいた。 


思わぬ結末



松江公の命令を受けた目付は、武士2人に、小崎屋の件と原殺害についても尋ねた。純次は匿名で訴えていた。商人殺害だけの問題だけで動いたものではなかった。この二人の武士に対しては、絡め手も含めて、家の跡継ぎや自分の命などについての追求した。

二人は一人ずつ調べられた。自分だけに罪が被される事を危惧した一人が自白すれば、更にもう一人ももっと克明に自白して、すべては判明してしまった。原家の家宝は既に盗まれたと信じていた中山は、事態の急転を感じていた。

中山は、わざわざ奉行を呼び、自分の蔵に案内した。奉行もそこまでと否定していたが、中山の意図も察知して、恩を売るつもりで、中山の蔵を見た。

原家の家宝を見た奉行の変わり身は早かった。もう中山に付いていても不利と悟った。中山は焦って動き、証拠を見せ、味方も失った。

全貌が明らかになると松江公はかえって困ってしまった。中山家は旧家で、大名格である。事が明らかになると、藩の名誉が丸つぶれになり、幕府への報告や大目付の介入を招く。別の些細な件で、中山親子が自分で切腹する事にして、奉行は見つかったと言って原家へに家宝を返却した。

中山家の親戚は後を継ぎ、三千両を藩へ差し出して、中山家を守る事で落着していた。しかも分家設置名目での中山家の家禄は減ったが、親戚に取っては得になる話でもあった。 



武士2人は切腹させても良かったが、お叱りの上、商人の家族への償いもさせる事で微禄を維持していた。事が明らかになると困る中山家は暫く謹慎していた。中山親子の切腹は直ぐに行われた。原家は筆頭格の家老となった。 



鉄平と三之助は喜んだ。三之助は殺し屋ルートにも接触していたが、依頼すると後が厄介になると案じていた。鉄平は、三之助にお前にも借りができたなと言っていた。三之助は、殺し屋ルートには詫び料を払った。 


萩での展開 



萩の城下に着いた次平は、道隆に連れられて、毛利大膳太夫元親にあった。「道隆 身体は良くなったか? 一時かなり悪いと聞いて心配していたが、顔色はいいようであるが。大事にしてくれよ。最近色々と心配りしているようで、病気をすると思慮深くなれるとは知らなかったと家老たちは言っておるぞ。連れてきたのは、名医の噂が高い次平か 表をあげよ」 



「私はとても名医ではございません。ただ優れた仲間に恵まれたいるだけで御座います。」と次平はいった。道隆は言葉を繋いだ「次平には治療だけでなく、食事の世話まで診て貰い、その上、色々な事を教わりました。食も薬と思い知られました。そうだ 次平、京二に殿との会食の準備をさせてくれまいか。殿 次平の配下で京二と申す医師が、料理が巧みでして、体に合った食事を作ります。毒味役が思わず追加を頼みそうとなったとの由であります。」 

元親も最近気分がすぐれない事もあり食も進んでいなかったので、「余も次平に身体を診て貰おい、京二とやらの食事を貰おう。 道隆その方は合議衆との話もあろう。 次平 さっさく診て貰おう。」 

長州では殿様自身が合議に加わる事はほとんどなかった。 次平が診た所、元親も胃の働きが弱く、他の臓器も弱っていた。かなりの心労があるように思われた。「殿様は、とくに御身体が悪いと言うことは御座いませんが、色々とお疲れがたまっておられ、心や臓器なども疲れているようで御座います。今日は薬を差し上げますので、ゆっくりお休みになってください。京二には準備させておきます。」 



元親は、手を叩いた。「真之介 明日は道隆と会食する。賄い方には、京二とやらの手伝いをするように手配いたせ。 次平楽しみにしているぞ。」 


次平は薬を調合して殿の近侍に差し上げて、宿に下がり、京二に連絡した。京二は驚いた風であったが、城の賄い方と相談するための城に向かい、三之助とともに、市場などを見て歩いた。 





コメントを投稿