虫干し映画MEMO

映画と本の備忘録みたいなものです
映画も本もクラシックが多いです

女の幸福

2004年12月02日 | 
このところ、ずっと「英語で読む万葉集」に取り組んでいたのだが、今日は電車に乗っている時間が多かったので、マルサスの「人口の原理」(まだ読んでる)と詩集をバッグに入れて家を出た。

それで今日たまたま行き当たったのが菱山修三

女の幸福

突然まるで突然 いまとは違った別のくらしが わたしにもできたような気がする
結婚もせず 子どももなく ひとりでくらしていることも全然ふしぎに思わぬ女
いま そうしているように夜ふけ ひとりベッドの白いシーツの上に目ざめ 青い星空をみている

たしかに いまとは違った別のくらしをしているひとりの女
それがわたしのような気がする
ロッテでもなく ノラでもなく あるフィナーレのひとこまのなかにいるような気がする
梢をはなれて舞いあがる一枚のまだ青い葉っぱのように ゼロにむかって走りだすのを
もう すこしもおそれていない女
それがわたしのような気がする


茨城のり子でもなく、新川和江でもなく、
男性詩人の書いた「女の幸福」という詩で、
でもたしかに、この感覚は知っている、と思う。
夜のひとりの時間にいつも意識しない自分の中のものが動き出そうとする感覚。

人間が「誰かと一緒にいたい」のも本当だけど
「ひとりで飛びたい」もまた真実の欲求だと思う。

電車の中で、こんな詩を読んで、周りを見回すと
目に見えるものが実にふしぎな光景に見えて
頭の中はけっこうな暴走モードに入り
アブナイ師走の私です。