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アルルカン洋菓子店の熱き夜

2010-09-04 12:45:00 | おすすめ記事
                                    
            




 昨夜は、アルルカン洋菓子店の第三回東北お寺巡りライブだった。
昨年の様子はこちら→【悩む前のどんぶり君
哀調を帯びたMITSU君のギターの調べにのせて、自作の詩を朗読し歌う行動する詩人・明川哲也さんの熱いライブは期待を裏切らない。

 昨年の作品『クロコダイルの恋』は、鳥肌が立つような凄い演奏だった。
切なさと辛さに胸が締め付けられ、私自身までが泥の川に身を潜めて適わぬ恋に身を焦がしている一匹のワニになったような気分がしたものだ。
今年のツアーのテーマは『ファーブル・アルチュールランボー・チャップリン』
さてどのような作品に仕上がるのだろうかと楽しみにしていた。

 明川哲也さんと言えば、ドリアン助川さんの名前で『叫ぶ詩人の会』を結成し、金髪先生として若者たちの人生相談相手としても有名だった。
今回は、少年時代のファーブルやチャップリンやランボーたちが明川さんに悩みを打ち明け、彼らの後世の活躍と成功を知っている明川さんが「心配ないよ!」と、ちゃっかりと回答を寄せるという形のしゃれた構成だった。

 圧巻はアルチュール・ランボー編。
ランボーが16歳の時に書いた長編詩『酔いどれ船』を、明川さん自らが翻訳し10分間かけて朗読を熱演した。
難解な詩なので、我ら凡人には目で読んでも全然理解出来ないと思う。
明川さんからの「難しいので何も考えないで聞いてください」とのアドバイスに思わず苦笑い。
私も理解しようとするのはやめて、言葉に寄る酔いどれ船のイメージだけを楽しむことにした。

 私の中のランボーのイメージは、映画『太陽と月に背いて』のレオナルド・ディカプリオ。
無理矢理誘って一緒に行った夫とM嬢は、演奏寸前までシルヴェスター・スタローン演ずるベトナム帰還兵のことだと思っていたらしいのだが、そんな彼らにしてもランボーが乗り移ったかのような明川さんの迫力に驚かされていた。
この時の感動をうまく言葉にすることが出来ない自分の貧困なる表現力が悲しい。

 それにしても明川哲也さんは言葉の遣い手であり言葉の匠である。
ライブの中でもその才能は遺憾なく発揮され、お馴染みの『人生相談コーナー』においては、選ばれたひとりの聴衆のお悩みを即興で歌にして回答してくれる。
昨夜は「感情の起伏が激しくて困っている」と言う女性の悩みを、あっという間に「心の地図を描いて、いろいろな感情を旅するように自己コントロールしてみよう」という歌になったが、その見事な手法には脱帽する。
温かい思いやりとまなざしに満ちた言葉で捧げられた世界でたった一つの歌だ(...ああ、私の悩みも歌にして貰いたかった...)

 ライブの最後には、数名の聴衆から言葉のお題を集めて、それらを即興で歌にしてくれる。
この比較が適当かどうかは疑問だが......今年大ブレイクした「なぞかけ問答」のねづっちも、言葉をお笑いの道具にする遣い手として面白いと思うが、同じようにオチをつけた言葉遊びでも、人生の機微を即妙に歌い上げる明川さんはもっと凄い。
この日は私も突然「お題提供者」に選ばれ、嬉し恥ずかしのドキドキ体験をした(...ああ、人生相談の方で選ばれたかったなぁ...)

 何が原因なのか?
おそらく宣伝が足りないのだとは思うが聴衆が少ないのがとても残念だった。
アルルカン洋菓子店製作のクッキーまでお土産に頂ける得するライブなので、もし機会があったら現代に舞い降りた吟遊詩人たちに会いに足を運んでみるのはいかが?