金曜に帰ってくると思っていた夫は、早々と木曜の正午に戻ってきて、私をがっかり...いや、とても喜ばせてくれた
夫のお土産は魚沼産コシヒカリの新米。
5㎏で4700円というから、我らがふだん食べている10㎏入りより高い。
一番美味しく食べるのにはどうしたらよいだろう?
それともしばらくはこのまま床の間に飾って置こうか?
「一度にたくさん炊いて冷凍にしたのをチンして食わせるなよ!」
と夫に言われてしまったが......
私がこっそりやっている手抜き家事を、見ていないようで見ているのだ。
以前独り暮らしのM嬢の家に遊びに行ったとき、台所のテーブルの上にずら~っと並んでいた炊きたての白米団子。
彼女はいっぺんに6合のご飯を炊き一食分ずつ冷凍し、必要に応じてチンして食べると言う。
この合理的かつ経済的な方法に痛く感動した私は、それ以来M嬢方式を真似しているので、炊きたての美味しいご飯にありつけるのは三日に一度だ。
旨さより利便性を追求する賢い私を、人は怠け者と呼ぶ。
味噌汁も然り。
前夜に2食分作って朝食に回すが、これは普通ではないのだろうか?
生前私の父が遊びにきた時、ついいつもの癖で朝食に前日の味噌汁を供したら、父の顔色が急に変わった。
朝の味噌汁を何よりのご馳走と考えている父の習慣を思い出した私は
(しまった!これは叱られるぞ!)
と覚悟したが.....
父は突然居住まいを正して、
「残り物の味噌汁を朝ご飯に出してくるような不出来な娘をどうか許してください。」
と、夫に向かって深々と頭を下げて謝ったのだ。
私にはお咎めなしだったが、直接責められるより骨身に沁みたのはもちろんのことだった。
しかしこの教訓はまったく生かされることなく現在に至る。
冷凍ご飯を食べさせていることまで知られたら化けて出てくることだろう。
食にこだわりを持たない夫のお陰で、私はずいぶん楽をさせてもらっている。
でも明日こそは(明日だけは)、魚沼産コシヒカリの炊きたてのご飯と味噌汁の匂いが漂う朝餉を用意して、気持ちよく仕事に送り出してあげようと誓うのであった。