国家安全保障会議(NSC)常任委員会は「今も有効な9・19軍事合意のその他の条項に対する追加措置は、北朝鮮の今後の行動によって決まるだろう」と但し書きをつけた。

2023-11-24 08:37:09 | 朝鮮を知ろう。
 

北朝鮮衛星→9・19合意効力停止→深夜の弾道ミサイル…

揺れる朝鮮半島情勢

登録:2023-11-23 08:16 修正:2023-11-23 08:54
ニュース分析 
北朝鮮の軍事偵察衛星打ち上げを理由に9・19合意の効力を一部停止 
北朝鮮、東海上に未詳の弾道ミサイル発射…合参「失敗と推定」
 
 
北朝鮮の労働新聞は22日、「国家航空宇宙技術総局は21日22時42分28秒に、平安北道鉄山郡の西海衛星発射場から、偵察衛星『万里鏡1号』を新型衛星運搬ロケット『千里馬1型』に搭載しての打ち上げに成功し、軌道に正確に乗せた」と報じた。8月24日の2回目の打ち上げ失敗から89日にしてのこと/朝鮮中央通信・聯合ニュース

 互いを「敵」や「傀儡」と呼びつつ対峙(たいじ)していた南北が、軍事偵察衛星の3回目の打ち上げと9・19南北軍事分野合意第1条3項(軍事境界線一帯の空中偵察禁止)の効力の停止措置で衝突した。北朝鮮が軍事偵察衛星を打ち上げたことを受け、政府は9・19軍事合意の効力の一時停止に踏み切り、北朝鮮は深夜に弾道ミサイルを発射した。南北関係と朝鮮半島の平和の「安全弁」といわれた9・19軍事合意が5年で事実上の作動不能状態に陥ったことで、今年4月7日からは直通連絡線まで途絶えて危機管理手段のなくなった南と北との悪化した関係は、今回の事態をきっかけに「言葉の戦争」にとどまらず軍事境界線一帯での偶発的な軍事衝突へと拡大する危険性が排除できない局面へと追い込まれている。

 北朝鮮の「労働新聞」は22日、「国家航空宇宙技術総局は21日22時42分28秒に、平安北道鉄山郡(チョルサングン)の西海衛星発射場から、偵察衛星『万里鏡(マンリギョン)1号』を新型衛星運搬ロケット『千里馬(チョンリマ)1型』に搭載しての打ち上げに成功し、軌道に正確に乗せた」と報道した。5月31日に1回目、8月24日に2回目の打ち上げに失敗してから89日。金正恩(キム・ジョンウン)労働党総書記兼国務委員長は3回目の打ち上げを現地で視察した。北朝鮮の国家航空宇宙技術総局は、「万里鏡1号は7~10日間の精密調整工程を終えた後、12月1日から正式に偵察任務に着手することになる」と明らかにした。合同参謀本部はこの日夜、「北朝鮮の偵察衛星は軌道に乗ったと評価する」と述べた。偵察衛星が正常に作動するかどうかとは別として、打ち上げには成功したとの評価だ。国防部の高官は、「朝ロ首脳会談(9月13日)などをみれば、ロシアの支援の可能性も排除できない」と述べた。

 労働新聞は「国家航空宇宙技術総局は、遠からずさらに数基の偵察衛星を打ち上げ、南朝鮮地域と共和国の武力の作戦上の関心地域に対する偵察能力を確保し続けていく計画を、党中央委第8期第9回全員会議に提出することになる」と報道した。年末に予想されている労働党全員会議の承認を得て、早ければ2024年にも軍事偵察衛星のさらなる打ち上げを行うということだ。

 
 
北朝鮮の労働新聞は22日、「国家航空宇宙技術総局は21日22時42分28秒に、平安北道鉄山郡の西海衛星発射場から、偵察衛星『万里鏡1号』を新型衛星運搬ロケット『千里馬1型』に搭載しての打ち上げに成功し、軌道に正確に乗せた」と報じた。8月24日の2回目の打ち上げ失敗から89日にしてのこと。金正恩労働党総書記兼国務委員長が現地で視察した/朝鮮中央通信・聯合ニュース

 北朝鮮による軍事偵察衛星の打ち上げは、北朝鮮に対して弾道ミサイル技術を用いたいかなる発射も禁止した国連安全保障理事会決議第1874号(2009年6月12日)に違反する。だが労働新聞は、「共和国の合法的権利」だとし、「共和国武力の戦争準備態勢の確固たる向上に大きく寄与するだろう」と自評した。

 韓国政府は、予告通り9・19軍事合意の一部条項の効力停止で対抗した。国防部は「本日(22日)午後3時付で9・19軍事合意第1条3項を効力停止することとした」と発表した。効力が停止された第1条3項は、軍事境界線から南北に20キロ(西部地域)~40キロ(東部地域)の空域に飛行禁止区域を設定するもの。南北の当局同士の初の文書による合意である1972年の7・4南北共同声明までさかのぼっても、南北合意書の効力を公式に停止させた政権は、尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権しかない。

 政府はこの日午前8時、政府ソウル庁舎でハン・ドクス首相主宰の臨時国務会議を行い、9・19軍事合意第1条3項の効力停止を議決した。英国を国賓訪問中の尹錫悦大統領は、「9・19軍事合意の一部効力停止案」を直ちに裁可した。ハン首相は、北朝鮮の軍事衛星打ち上げは「韓国の安保を脅かす直接的な挑発」だとし、9・19軍事合意第1条3項の効力停止は「国家安保のために必要不可欠な措置であり、最小限の防衛措置」だと述べた。

 
 
英国を国賓訪問中の尹錫悦大統領が21日(現地時間)、ロンドンのあるホテルで、北朝鮮の軍事偵察衛星の3回目の打ち上げ直後に国家安全保障会議(NSC)常任委員会を主宰している=大統領室提供//ハンギョレ新聞社

 政府は効力停止の期間を定めておらず、「南北の相互信頼が回復するまで」と抽象的に規定するにとどまっている。南北合意書の効力停止は「期間を定めて」おこなうよう明示した南北関係の発展に関する法律23条2項に照らして適切なのかをめぐり、論議を呼ぶ可能性がある。

 さらに国家安全保障会議(NSC)常任委員会は「今も有効な9・19軍事合意のその他の条項に対する追加措置は、北朝鮮の今後の行動によって決まるだろう」と但し書きをつけた。国防部の高官は「(北朝鮮が)さらなる挑発を行えば追加措置を取る」と述べた。北朝鮮がさらなる軍事行動に打って出れば、地上・海上での敵対行為の中止などを定めた9・19軍事合意のその他の条項も効力を停止する計画だということだ。

 政府の対応をめぐっては、「自傷に近い見当違いの対応」だと指摘されている。2018年の平壌(ピョンヤン)南北首脳会談を機として実現した9・19軍事合意は、軍事境界線一帯での偶発的な通常兵器による軍事衝突を防止するために、陸・海・空の3面に軍事活動禁止区域を設定したものであり、北朝鮮の核・弾道ミサイル開発および国連安保理の対北朝鮮制裁決議との直接の関係はないからだ。

 北朝鮮は、政府が9・19軍事合意の一部の効力を停止したその日の夜、平安南道順安(スナン)一帯から東海上へと弾道ミサイルを発射した。合同参謀本部は「北朝鮮が『未詳の弾道ミサイル』を発射したが、失敗したものと推定される」と明らかにした。高度や距離などが把握できないほどの短時間でミサイルが墜落したという意味だが、北朝鮮の反応がただならぬものであることは、ここから推測できる。

 政府の元高官は「9・19軍事合意は、核問題の解決策とは別途に軍事境界線地域の国民の日常を守るための初歩的水準の通常兵器に対する軍備統制であり、責任ある政府なら絶対に先に破棄してはならない平和の安全弁」だとし、「9・19軍事合意の効力停止は見当違いの無責任ででたらめな対応」だと批判した。

イ・ジェフン先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

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