読書・水彩画

明け暮れる読書と水彩画の日々

門井慶喜の『新選組の料理人』

2018年11月15日 | 読書

◇『新選組の料理人』  著者:門井慶喜 2018.3 光文社 刊


  


 
第158回直木賞受賞作家門井慶喜の作品。
 
時代小説はずいぶん読んだものだが、料理人を主人公にした小説は初めてだと思う。
料理人とは現代風表現で、当時で言えば「賄い方」か。浪人者の菅井鉢四郎を一応柱に
据えているものの実際は近藤勇、土方歳三、沖田総司、原田左之助など新選組幹部が活
躍し消えていった、騒然たる幕末における新選組始末記といった内容である。時代小説
に長けた作者だけに、史実に即しながらも軽妙にして洒脱な語り口が小気味よい。

 世にいう蛤門の戦で京の町は新選組のおかげで夜盗・人切りなどが激減した。京都所
司代の会津藩から請け負って
被災者に炊き出しを行った新選組は原田の機転で妻子に逃
げられた浪人の菅井鉢四郎を賄い方として組に誘い入れる。

   鉢四郎は幹部連中(妻の分も)をはじめ、切り合いは免除され、もっぱら隊員の食事
賄いを担当する。生来料理に興味があった鉢四郎の賄いはいろんな工夫をして好評を博
す。しかし小説としては賄の話よりも新選組の動きが中心である。圧巻は近藤隊長が老
中小笠原に薩長連合の仲立ちをしている黒幕坂本龍馬の誅殺を提案している場面であろ
うか。

 幕末の武士は、かつて戦国時代にあって紙一重で生死を分かつ人生を生きたもののふ
では既になく、妻や子を思いやる普通の男にすぎなくなっていたと、剣客と知られた
原田左之助の姿を借りて仮借なく暴き出す。
 ”ぶわっと血煙が空にふくらんだ”はずなのに”傷は浅い”などと腑に落ちない部分もある
(107p)が、そこは講談調の語りの流れで、勇み足としてまあ許せるか。
                             (以上この項終わり)



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