読書・水彩画

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成冨ミオリの『絵はすぐに上手くならない』-デッサン・トレーニングの思考法-

2019年01月28日 | 読書

◇『絵はすぐに上手くならない』-デッサン・トレーニングの思考法-

                  著者:成冨 ミオリ  2015.10 彩流社 刊

  

  10年以上水彩画を描いているのに、一向に満足のいく(納得できる)絵に到達できな
 い現状を嘆いている私は、「ばくぜんとうまくなりたいと思っていませんか?"すぐにう
 まくなりたい!”、“すぐに上手くなるわけがない…”この狭間で苦しんでいる方へ、絵を
 学ぶための思考法を教えます。」という本書の帯のキャッチフレーズにひかれてこの本
 を手に取った。

  本書は「絵を学ぶための思考法」といっているものの、けっこう技術的なトレーニン
 グのことも出てきて、上手な絵を描きたい人のためのいわゆるハウツウもののような部
 分もある。

  「すぐにうまくはなれない」ということは常に作品を作りながらトレーニングを続け
 ることを言っているのだと思う。
  私の絵の師匠(水彩画同好会の指導講師)は「上手な絵を描こうと思うな」とおっし
  ゃるが、この場合上手な絵より人に訴える絵を描けということだと思った。人さまが見
 て「おお、いい絵だな」と思ってもらえる程度までは到達したいとは思っている。

  著者は、絵には上手な絵が描けるための手順とかステップなどはない。常に作品をつ
 くりながら自分の問題点を勉強し克服していけばよいという。まことにその通りで、ト
 レーニングの重要性が強調されるわけである。

  まず冒頭にあげられていることは、絵を描くときに重要なことは対象のものをよく見
 るということ。観察眼を鍛えることである。物や人を正しくしっかり描いていないとみ
 る人に不安感を与えていい絵だと思ってもらえない。まして直接仕事に結びついている
 職業の人にはこれは重要なトレーニングである。

  そして次はデッサン。デッサンは不要論もあるけれども、著者は、デッサンは必須と
 はいわないにしても「自分が欲しい能力を鍛える手段の土台としてとして重要である」
 とする。

  世の中の絵を描く人には、絵を描くこと自体を目的としている人と絵を描くことが仕
 事に結びついている人がいる。いわゆる画家や趣味の絵だけではなく、生活の手段とし
 て絵を勉強している人もたくさんいるわけだ。
  したがって著者は、絵そのものを描くタイプ、絵を使って違うことをするタイプに分
 けてジャンル別に求められる能力の比重まで要素診断できるシートを作っている。
 親切である。自己診断の結果、長所を伸ばすか短所を克服するか行く道を探るのである。

  個々の能力を判断できるように8つの能力に分解している。(センスや個性のような
 感覚はトレーニングはできずむしろ磨いたり掘り起こしたりする別種の感覚として区別
 される)
 1.アイデアの質と量が安定している能力  <アイディア>
 2.感覚と研究の寄って独自性を打ち出す能力  <オリジナリティ>
 3.多くの形を覚えている能力  <形状ストック>
 4.視野角が広く、全体を把握できる能力  <構図構成力>
 5.形を素早く取り、形の狂いを修正できる能力  <形を取る力>
 6.立体感、光と陰影について理解している能力  <立体を把握する力>
 7.線が安定しており、描写のテクニックを会得している能力  <テクニック>
 8.集中力を持続させ、自分自身を管理する能力  <完成させる力>

 <絵のジャンル>
 1.企画アイディア系
 2.映像・写真系
 3.デザイン系
 4.3DCG系
 5.建築インテリア・空間デザイン系
 6.コンセプトアート系
 7.漫画・アニメ系
 8.イラスト系
 9.ファインアート系
 10.具象アート系
 12.美大受験系

  第1章で絵を描く能力について、第2章で描画能力の分解と診断について述べ、さてい
 よいよ第3章トレーニング方法。デッサンやクロッキー、模写等について触れる。さらに
 色のセンスや感覚・感性の磨き方について取り上げており、至れり尽くせりである。

  最後第4章は絵を描くいろんな人たちのショーケース。絵に立ち向かう様々な人たちの
 悩みに対し適切なアドヴァイスをする、いわばケースワーカーとしての立場でまとめら
 れており参考になる。
                             (以上この項終わり)
  
  

 

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