◇『怪物の町』
著者:倉井 眉介 2023.7 宝島社 刊
第17回『このミステリーがすごい』大賞を受賞した『怪物の木こり』に次
ぐ第2作目という。
どんな作品か興味があったが、途中まで読んでこれはホラーでもスリラー
でもない高校生のスリラーもどきの作品かと思った。
主人の「僕」良太(高校生)と友人の「先輩」が、町の多くの人が殺人者
であるという不思議な町に引っ越してきて不可解な出来事に遭遇する。
噂通りの「殺人者がうごめく怪物の町」を実感しつつも、家族(両親と姉)
の誰ひとり不審な状況に遭っておらず、彼も自分の体験を彼らに素直に話し
てもいない。もしかして自分たちが何か錯覚しているのではないかとか、実
態がが明らかにならないのは町民が自分たちに不都合なことには「見て見な
いふりをしている」からではないか。などと人間心理の不安定さをさりげな
く持ち出してきたりする逃げ場も用意されている。
突然姿を消した先輩の捜索に出向く良太。そこでちょっとした大立ち回り
がある。その後良太を助けた姉の恋人健一から謎解きがあるのだがなんとも
あっけない結論でやや鼻白む。
こうしたことからも作者にとって専門分野らしい人間の心理の綾を巧みに
ストーリーとして組み立てた作品といってよい。
(以上この項終わり)
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