◇ 『モンテ・クリスト伯(4)』(原題:Le Conte de Monte Crist)
著者:アレクサンドル・デュマ(Alexzandre Duma)
この巻は概ねエドモン・ダンテスを陥れた会計士のダベンポート、婚約者メルセデス
の従兄でのちに彼女と結婚したファレル、問答無用で監獄に送り込んだヴィルフォール
とその家族に対して復讐の網をめぐらし、それを絞り込んでいく場面に終始する。
ヴィルフォールの妻と子を暴れ馬から救ってきっかけを作ったモンテ・クリスト伯は
彼に心服するヴィルフォール夫人に対し薬というものの性格、つまり薬として人を助け
ることもあるが量によって死を招くこともあることを特にヒ素を例に挙げて、さりげな
く毒薬としての使い方を教えた。ヴォルフォールの妻が憎んでいる前妻の娘、ヴァラン
ティーヌや義父(ヴィルフォールの父)殺害を企てることに布石を置いたのである。
伯爵は「種は蒔いた。芽を出さないはずはない」と嘯く。
ヴァランティーヌはマクシミリアン・モレルと相思相愛の中である。ヴィルフォール
夫妻は彼女とフランツ・デビネー男爵と結婚させようとしている。財産も名声もあって
良縁と思っている。フランツはヴァランティーヌの祖父(ヴィルフォールの父)の仇敵
だったデビネー将軍の息子であったため、フランツと結婚させるならば、自分の90万フ
ランという巨額の遺産はヴァランティーヌには残さず慈善病院に寄付すると言った。
ヴァランティーヌ夫妻は慌てる。
ある日伯爵は内務省の公務通信の信号手を買収し、ある情報を内務省に送る。内務省
の手下からドン・カルロスがスペインに帰還したとの偽情報を受け取ったダングラール
夫妻は手持ちのスペイン国債600万フランを売り払う。50万フラン損したが、株式取引
所ではいち早く売り抜けた先見の明を羨んだが、翌日になって偽情報との新聞記事が出
て、スペイン国債は暴騰。ダングラールは100万フランの痛手を負った。
そして最後の「夢」という章ではかつてヴィルフォールの愛人であったダングラール
夫人との間に生まれた嬰児を殺害し今は伯爵の屋敷となっている庭に埋めたという悪事
を暴露し、この犯人を告発しようとする劇的シーンを設けた。この嬰児は死んでおらず、
後の伯爵の家令となったベルツッチオが救出し育てた。のちのアンドレア・カルヴァン
ティである。
(以上この項終わり)