◇『スティール・キス』(原題:THE STEEL KISS)
著者:ジェフリー・ディーヴァー(JEFFERY DEAVER)
訳者:池田 真紀子 2017.10 文芸春秋社 刊
おなじみのリンカーン・ライム・シリーズの第12作目。
今回は日常の道具を凶器に変える連続殺人者にリンカーン・ライムとNY市警の刑事
アメリア・サックスが挑む。
今に華やぐIoT,AIoT時代の危うい効率主義をあざ笑うかのようなシリアルキラーと
の息詰まる戦いが、リアルな臨場感を持って読者に迫る。
身体障碍者で車椅子生活のライムは、NY市警重要犯罪捜査課で科学捜査の捜査顧問
を務め、サックスと絶妙のコンビとして難事件を解決してきた。しかしライムはこの
ほど事情があって顧問を退いた。
現在某大学で犯罪捜査の講師をしているが、やはり身体障碍者である受講生のジュ
リエット・アーチャーの能力を高く買い助手として使うようになった。ライムとは恋
人同士のような濃密な関係にあったサックスは、しばらく会っていなかったライムに
寄り添うアーチャーに、いっとき女性としてこだわりを持ったのであるが…。
なぜサックスがライムと再び会うことになったかといえば、未詳50号と呼ぶ殺人犯
を追っている現場で、ショッピングセンターのエスカレーターが突然停止し、開いた
昇降板から乗客が墜落し死亡した事件に遭遇、この事故と未詳50号とに密接な関連あ
りとみて追及を始めたサックスと、事故死した被害者の民事訴訟を担当することとな
ったライムが協力しあうこととなったからである。
未詳50号というシリアルキラーは、痩せたのっぽの身体的特徴からコンプレック
スに囚われた社会的不適合者である。度重なる殺人・殺人未遂の特徴はAI機能搭載の
電子機器に不正侵入し、いわゆるスマートコントローラーを自由に遠隔操作し、事故
を誘発させるところにある。
彼は警察捜査陣に挑戦的なメッセージを送る。
「・・・モノに対する執着は、おまえたち全員に死をもたらすだろう。…もっと所有
せずにいられないお前たちは、やがて間もなくモノに所有されて、冷たいスティール
・キスと一緒に地獄に送られるだろう。<民衆の守護者>」
未詳50号は、ライムらとともに微細残留物等を分析し、自分の居場所に向かって執
拗に追い迫るサックスに的を絞って反逆しようと策を凝らす。
しかしライムのチームは犯人を割り出し追い詰める。犯人は行方をくらますが…。
ネタバレとなるので明かさないが、終局に至り意外性と緊迫場面で、手に汗握る展
開となる。
あとはぜひ読みください。
(以上この項終わり)