読書・水彩画

明け暮れる読書と水彩画の日々

ジェフリー・ディーヴァー『スティール・キス』を読む

2019年01月08日 | 読書

◇『スティール・キス』(原題:THE STEEL KISS)
       著者:ジェフリー・ディーヴァー(JEFFERY DEAVER)
       訳者:池田 真紀子    2017.10 文芸春秋社 刊

   

   おなじみのリンカーン・ライム・シリーズの第12作目。
   今回は日常の道具を凶器に変える連続殺人者にリンカーン・ライムとNY市警の刑事
  アメリア・サックスが挑む。
        今に華やぐIoT,AIoT時代の危うい効率主義をあざ笑うかのようなシリアルキラーと
  の息詰まる戦いが、リアルな臨場感を持って読者に迫る。

         身体障碍者で車椅子生活のライムは、NY市警重要犯罪捜査課で科学捜査の捜査顧問
  を務め、サックスと絶妙のコンビとして難事件を解決してきた。しかしライムはこの
  ほど事情があって顧問を退いた。

   現在某大学で犯罪捜査の講師をしているが、やはり身体障碍者である受講生のジュ
  リエット・アーチャーの能力を高く買い助手として使うようになった。ライムとは恋
  人同士のような濃密な関係にあったサックスは、しばらく会っていなかったライムに
  寄り添うアーチャーに、いっとき女性としてこだわりを持ったのであるが…。

   なぜサックスがライムと再び会うことになったかといえば、未詳50号と呼ぶ殺人犯
  を追っている現場で、ショッピングセンターのエスカレーターが突然停止し、開いた
  昇降板から乗客が墜落し死亡した事件に遭遇、この事故と未詳50号とに密接な関連あ
  りとみて追及を始めたサックスと、事故死した被害者の民事訴訟を担当することとな
  ったライムが協力しあうこととなったからである。

   未詳50号というシリアルキラーは、痩せたのっぽの身体的特徴からコンプレック
  スに囚われた社会的不適合者である。度重なる殺人・殺人未遂の特徴はAI機能搭載の
  電子機器に不正侵入し、いわゆるスマトコントローラーを自由に遠隔操作し、事故
  を誘発させるところにある。
   彼は警察捜査陣に挑戦的なメッセージを送る。
   「・・・モノに対する執着は、おまえたち全員に死をもたらすだろう。…もっと所有
  せずにいられないお前たちは、やがて間もなくモノに所有されて、冷たいスティール
  ・キスと一緒に地獄に送られるだろう。<民衆の守護者>


   未詳50号は、ライムらとともに微細残留物等を分析し、自分の居場所に向かって執
  拗に追い迫るサックスに的を絞って反逆しようと策を凝らす。 
        しかしライムのチームは犯人を割り出し追い詰める。犯人は行方をくらますが…。
  
   ネタバレとなるので明かさないが、終局に至り意外性と緊迫場面で、手に汗握る展
  開となる。
   あとはぜひ読みください。
                            (以上この項終わり)
 
   
  

 

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