読書・水彩画

明け暮れる読書と水彩画の日々

今村昌弘の『屍人荘の殺人』

2019年01月02日 | 読書

◇『屍人荘の殺人』  
       著者:今村 昌弘  2017.10 東京創元社 刊

     

 第27回鮎川哲也賞受賞作品(2016年)。前代未聞のクローズド・サークルを創り出した本格推理小説として大評判
を得た。綾辻行人、
有栖川有栖、青柳碧人など斯界の人気作家が高く評価する。


 主人公の”俺”(葉村譲)は神紅大学の1年生。ミステリーが好きで大学のミステリー研究会に入ろうと思ったがレベ
ルが低く、結局明智恭介という理学部3回生が主宰するミステリー愛好会に入ることになった(とはいうもの
の部員は会長の明智と葉村の二人だけ)。

 その年の夏休み。ひょんなことで二人は映研の夏合宿に同行することになった。誘いをかけたのは探偵少女剣崎
比留子(2回生)。映研の部長進藤と部員ら6人。それに映研OBが4人。2泊3日の予定で某避暑地の湖畔にある「紫
湛荘(しじんそう)」というペンションの出かけた。メンバー13人と菅野という管理人の14人が泊まるこの3階建てのマン
ションがまず第一のクローズドサークルである。
なんといってもページをめくるとのっけから建物の見取り図が現れる。
「うひゃー本格推理だ!」と先ずは興奮する仕掛け。

 映研の合宿ということであり廃墟の建物でホラービデオの撮影会が行われる。そして初日のバーベキュー。なんと
いっても女性6人、男性7人のグループのこと、部屋割りやセクハラ騒動などでごたごたするが、男女のペアで余興の
度胸試しに出かけるところから状況はがぜんヒートアップする。
 近くの湖畔でやっているロックフェスタの会場からゾンビ集団が押し寄せてきて、13人はゾンビの襲撃に備えペンシ
ョンに立てこもることになる。携帯も通じない。
これが第2のクローズドサークルである。

 この閉鎖空間となったペンションで2つの殺人事件が起こる。厳重にガードした扉やエレベーターをゾンビはどうや
って通り抜けたのか。何人かの住人がゾンビの餌食になってゾンビ化した。葉村の師匠明智まで。

 終盤に至り剣崎比留子名探偵が明快な推理を披露し真犯人を指摘する謎解きの第六章。フーダニット。ハウダニ
ット。ホワイダニット。ほとんどすべて剣崎の推理通りであったが、実は深刻なホワイダニット。
 とにかく面白く、まさに一気読みの傑作です。

 大学生の女性たちがいくら先輩後輩の間柄とはいえ品のない男言葉でやり取りするのが気になって仕方なかった。
皆美人だという設定なのに。
 羽村君は尊敬する明智先輩を失ったものの、憎からず思う間柄になった剣崎比留子と一緒に動くことになって幸
せ。

  
                                                        (以上この項終わり)

 


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする