読書・水彩画

明け暮れる読書と水彩画の日々

池井戸 潤の『オレたちバブル入行組』

2019年01月05日 | 読書

◇ 『オレたちバブル入行組

          著者:池井戸 潤 2013.10 文芸春秋 刊(文春文庫)

      

   「やられたらやり返せ、10倍返しだ」で知られた半沢直樹シリーズの第1作。
  つまり半沢が銀行業界に就職したスタート編である。
   半沢は就活で見事意中の大手銀行・産業中央銀行の内定を取り付けた。時あ
  たかもソウルオリンピックの1988年。バブル景気の入口にあたった。 
  
   半沢は後年大阪西支店の中間管理職・融資課長として赴任するのであるが、
  上司の命で行った融資案件で不正貸付けの汚名を着せられた半沢の逆襲を描く。
   支店長のゴリ押しで行った融資先の西大阪スチールが倒産し5億円の焦げ付
  きが発生した。社長は浅野支店長の知人で融資案件は何とも胡散臭かったが融
  資課長半沢の慎重な審査をすりぬけて稟議が回ったのだ。
   
   このころはすでにバブルが弾け、融資資金回収もままならない状況にあった。
  西大阪スチールの倒産を本部に報告する段階になると支店長は一転半沢に責任
  をなすり付け、しかも本部各所に手をまわし半沢の追い出しを図る。

   作者池井戸潤は銀行で働いたことがあり斯界に詳しい。自身のキャリアに何
  かあったのか、
銀行の体質に対して抜きがたい不信感を抱いているふしがある。
  バブルが弾け、華やかであった銀行が見る影もなく凋落した姿をかえりみて、
  「銀行というところは、人事がすべてだ」、官僚体質で事なかれ主義、幼稚園
  ながらの管理体制で傲慢な体質…と口を極めて厳しく糾弾している。

   半沢は、職責上非難に対抗するには資金回収しかないという友人の示唆もあ
  って、西大阪スチールの計画倒産の裏金つくりのからくりなどを暴き、資金回
  収に成功する。そして不正融資に加担した浅野支店長の弱みを逆手に取り、融
  資課の部下の希望部署への配属、自身の本店営業第二部次長への昇任をとるつ
  ける形で復讐を遂げる。やられたらやり返す。まさに10倍返しである。

                           (以上この項終わり)
  

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