読書・水彩画

明け暮れる読書と水彩画の日々

真保祐一の『繋がれた明日』

2012年05月24日 | 読書

◇『繋がれた明日 著者: 真保 祐一  2003.5 朝日新聞社 刊

   


    先に貫井敏郎の『空白の叫び(上・下)』をご紹介したが、これは少年犯罪の扱いについての問題提起であった。

   真保祐一の本書は、19歳で自分の女につきまとった男をナイフで刺し殺したために、5年から7年の不定期刑を
  宣告され、少年刑務所に入った中道隆太という男の話。19歳で入り今26歳、仮釈放されたが人殺しという取り
   返しのつかない罪を犯したという反省はあるが、相手が先に手を出したんだし、し自分だけが悪いわけじゃない
  とか、先に手を出したのは隆太だとうその証言をした目撃者を恨むなど、多くの不満を持ったまま出所する。
   親身になって心配する保護司や就職先の解体業の社長、同僚など理解ある人に出会えたものの、昔の事件を
  報じた新聞のコピーをバラまかれたり、妹がつき合っていた男性が事情を知って彼女から離れていくなど、なか
  なか立ち直ることが出来ない。そんな中で被害者の母や被害者とつき合っていた女性からいやがらせを受け、
  前科者として中傷を受けたりしてやけになりかかるが、保護司の大室に諭され次第に立ち直っていく。

   少年刑務所とは20歳未満の男性少年受刑者の収容施設。実際は26歳未満の成人受刑者も収容されている。
  したがって少年受刑者は余計な刺激と影響を受ける。施設を出てからもそうした連中が連絡して来たりしてなか
  なか過去から脱却出来ない事情は何んとなく理解できる。余程意志強固でないと簡単には立ち直れないのだ。
   中道隆太の場合、最後は殺した男の母親が錯乱し、罪をなすりつけようとして事件を起こしたことをきっかけに
  立ち直りをするというまともな話で終わっている。

  (以上この項終わり)

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