2006年8月11日のブログ記事一覧-ミューズの日記
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<あれも聴きたい、これも聴きたい> あこがれのレコード

 おいちゃんには今でもときめいてしまうレコードというかCDがある。それはジュリアン・ブリームの演奏する「スパニッシュギターの真髄」と題した1枚のレコードだす。今でもこのレコードだけは、ブリームの数あるレコードの中でも最初から終わりまで通して聴いてもまったく飽きることもなけりゃあ、退屈することもない。全て感心して聞き惚れてしまう。(それにしてもブリームも若いでしょ?持っておる楽器はハウザーでござりまするが、スタイルもいいし髪もフサフサ。若い人が見たら「これだーれ?」ちゅうて言われちまうかも知れん。)スパニッシュといっても、文字通りスペインの作曲家の手になる曲ばかりではなく、ブラジルのヴィラ=ローボスなんかも入っておる。しかし、そこに収められている音楽は、それまで知らなかったわけではねえけども、ここまでかっこええ演奏はそんなになかったように思う。

まず第1曲目のヴィラ=ローボスのショーロス第1番からしてものすごく乗りまくっている。歌わせ方といい音色の変化といい、また間のとりかたといい、まさに非の打ちどころがねえといった名演奏。当時この演奏を聴いて、誰もがこの曲にあこがれちまったんでねえべがと思うくれえ、とにかくかっこええことこの上なし。
作曲したヴィラ=ローボス自身だって、自分の曲がこんなにかっこええ曲だったとは、知らんかったのではねえべがっちゅうくらいかっこえがった。

その後はトローバのマドローニョスなんじゃが、これまた抜群。そのあまりのかっこ良さにあこがれて、学校さぼって名古屋の荒井貿易まで楽譜を買いに行った覚えがある。しかも、当時荒井貿易がまだ地下鉄伏見駅の上にあったころで、何ヶ月も待たされた上、楽譜が入荷したという知らせを受けたんで、喜び勇んで飛んで行ったのでござりまする。当日学校(高校)は運動会で、自分の出番を早々に終えたおいちゃんは、近くの知り合いの家で服を着替えさせてもらい、電車に飛び乗って楽譜を受け取りに行ったんじゃが、帰ってきてそのまま知らん顔で運動会の自分たちの席にこそっと戻ったところ、当然みんなから「おまえどこ行っとったんじゃ」と質問を浴びせられたが、そこは知らん顔で、とぼけとおしちまった。
 そんなことまでして手に入れたマドローニョスの楽譜は、なんと運指がまったく書かれていない、ただ音符だけの楽譜じゃった。それでも嬉しくて嬉しくて、ブリームの演奏から懸命に運指を探って練習したもんでしたなあ。その曲を練習していると、なんだかギター音楽の世界の最先端を味わっているようで、わくわくどきどきしたもんでごわした。

 その次はまたヴィラ=ローボスの練習曲11番。それまでヴィラ=ローボスの練習曲では1番が1番かっこええなあと思っておったが、この11番を聴いてしまって考えが変わった。もう単純!。11番が1番!(ややこしいけども)
今度は高校生にとっちゃあ当時どえりゃあくそ高い「12の練習曲」の楽譜(フランスのマックス・エシック社版)を手に入れた。それから毎日毎日弾いたわなあ。とにかくあのヴィラ=ローボス特有の不協和音にしびれましたなあ。
当時といやあ今から40年以上前だ。学校の同僚に聴かせたら「おめえなんちゅう曲弾いとるんや?もうちょっと分かり易い曲にしてくれん?」と言われちまったが、こっちはなんでこんなええ曲が分からんのか、そこが分からん」とか言ってわけのわからんことを考えとった。きっとギターのことなんか全然知らない仲間うちでは、「あいつ最近変な音楽にかぶれとるぜ」っちゅうようなうわさが立っておったんではないかと思う。

そんなことにはおかまいなしに、そのレコードではその後トゥリーナのタレガ讃歌、ファンダンギーリョ、アルベニスのグラナダ、アストゥーリアスなどと続くが、どれをとってもおいちゃんには目から鱗。近・現代曲に目覚めちまった。だもんだから、それからというもの、そのレコードの演奏をそっくり真似をしようと、毎日一生懸命励んでおりました。真似はどうかな?と少しは後ろめたい気持ちもあったが、、真似は真似でも完璧に真似できりゃあ、それはそれでまずはてえしたもんじゃねえかと割り切って、一生懸命おんなじように弾こうと努力をいたしましたが、それはほれ、土台無理ってもんだわなあ。おんなじようになんか弾けっこねえべ。何回も何回も挫折を味わって、おいちゃんの当時のひとつの目標でござりましたなあ。

今日、久しぶりにこのCD(最近当時のままの演奏がリマスタリングされてCDとして出たので)を聴きかえしてみたら、ふっとそんな青春真っ只中を思い出してしまったのでござりまする。今青春真っ只中の皆さんにも、一度若きジュリアン・ブリームの演奏を味わってくだされたく思いをめぐらす今日この頃でありました。忙中閑有。暑中お見舞い。

内生蔵 幹(うちうぞう みき)


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