消防士 兼 旅人の日記

消防署での出来事、ダラダラした日常生活を綴ります。

119通報の仕方

2007-02-01 23:39:53 | 消防・救急

先日頂いたコメントの中で、救命講習と言う言葉が出ました。

その時の記事でも少しばかり書きましたが、私達消防職員は災害対応だけでなく、一般市民向けに消防署で定期的に救命講習を行ったり、学校や養護施設に出向いて救命講習を行ったりしています。

目的は心肺蘇生法(CPR)のやり方とAED(自動体外式除細動器)の取扱いの習得がメインです。

しかし私は個人的には119通報の仕方も覚えていて欲しいなと思います。

今日はそんな119通報に関してのお話です。



まず119番をすると、消防署の外線電話に繋がるのではなく消防本部の指令室と言うところに繋がります。

そこでまず聞かれるのが、

『119番消防署、火事ですか?救急ですか?』

です。まずは火災の場合を想定して書いてみます。


通報者が火事だと伝えると、指令室のほうで、

『住所を(消防車の向かう場所)教えてください』

『どこで何が燃えていますか?』と聞いてきます。

火災の発生場所、燃えているもの(建物なのか車なのか、ごみや枯れ草など)

建物火災の場合、車両火災の場合など燃えているものの種類によって、出場させる消防車の数や部隊が変わってきます。

発生場所と燃えているものが分かれば、出場隊を選定して各署所に指令を出します。その後は、

『現在の状況(逃げ遅れやけが人はいるか?など)』

『あなたの(通報者)の名前と今かけてる電話番号を教えてください』と聞かれます。

消防隊が現場到着した際に通報者から聴取したり、指令室のほうから詳しい情報を聞くために電話をかけなおしたりすることがあります。



これが救急要請の場合ですとまず、

『救急車が行く場所を教えてください』

『誰がどうなさいましたか?』

となります。火災の時と同様に、発生場所と概要が分かった時点で救急車は出場します。


誰がどうした?の問いには、

・けがなのか病気なのか?

・年齢と性別(年齢は分からなければ大体で構いません)

・どのような状況か?(頭が痛い、交通事故で脱出不能、呼吸をしていない等)

を聞きます。状況によっては救急隊を増隊させたり、消防隊や救助隊を同時出場させたりします。

その後は通報者の氏名と今かけている電話番号を聞いてきますので、指令員に伝えてください。



119番通報をする際にしてもらいたいのが、まず落ち着くこと。落ち着いて指令員に今の状況をお伝えください。

慌ててると自分の家に救急車が来て欲しいのに、ふと言えなくなってしまう事もあったりします。

自分の住所や番号ぐらい言えるよ!と思われがちですが、いざと言うとき本当にパッと出てこないこともあったと聞きました。



最近では携帯電話が普及し、携帯電話からの通報も多くなっています。ここで携帯での通報の注意点を挙げます。


1.119番通報は、公衆電話や固定電話ですと発信位置が特定できるようになっていますが、携帯電話ですとそれができません。電波状態が悪く電話が切れてしまうことも考えられますので、近くに公衆電話や固定電話があれば、極力そう言った電話を優先して使ってください。

2.携帯電話からの通報は、災害点を管轄する消防署の指令室に着信せず、隣接する消防署の指令室に繋がってしまうことがあります。隣接する市町村に同じ地名がある場合がございますので、必ず市町村名から伝えてください。尚、違う指令室に繋がってしまった場合には転送しますので、電話は切らずにお待ちください。

3.通報の際には何か目標になるもの、交差点の名前やバス停などの目標物を分かる限り指令員にお伝えください。尚、指令室から詳細を聞きにかけ直すこともありますので、電波の入りやすい場所にいてくれるとありがたいです。



私は救命講習に出向いたときに、一度デモンストレーションを行います。

そのとき受講者に『あなた救急車を呼んでください!』と振ってみたことがあります。

そのときに『救急車って何番だっけ?』って言われたことがありました。110番の警察と勘違いしてる人もいらっしゃいました。

他にも住所がパッと出てこなくなったり・・・

そんなことを思い出し、今日はこの記事を書いてみました。



重ね重ねになりますが、119番通報をする際はまず落ち着いてください。

落ち着いて、指令員の聞いてきたことに答えてください。

交通事故を目撃してけが人がいる。建物や車が燃えているのを見かけた場合には『誰かが通報してるだろう』と言う考えは持たず、積極的に通報してください。1つの事案に複数119番通報が入ることで、他の人の知らない情報が入るかもしれない。虚報の可能性も減ってきます。

それから、119番は緊急回線です。その数には限りがあります。問い合わせや相談に使われてしまうと、いざと言うときの緊急通報が繋がらなくなってしまうことも考えられます。お問い合わせ、相談の際には消防署の外線電話や案内サービスの電話番号がある場合にはそちらへお願い致します。



最後の方は注意点とお願いばっかりになってしまいました。

もしご質問等あるようでしたら、コメント欄に書いて頂ければ分かる限りお答え致します。

長くなってしまいましたが、最後まで読んでくださりありがとうございました。


明日は仕事です。


最新の画像もっと見る

8 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
こんばんは(^・ω・^)ゞ (ゆか)
2007-02-02 00:06:31
何年か前に母親が倒れて救急車を呼んだ事がありますが、第三者的な感覚に陥ってですね、逆にすごく冷静に受け応え出来たように記憶してます。



ですが、何を話したかは全く覚えてないです;やはり気が動転していたのでしょうね。



一緒に救急車に乗って行ったのですが、救急隊の方に母が倒れる前の状況やかかりつけの病院は?等、質問された時までは冷静でいられたんですが、やっぱり母が心配になって涙ぐんでしまったんです。



その時に救急隊の方に「きっとお母さん大丈夫だよ!」って励まして貰った時は凄く心強かったですね♪





今回も大変勉強になる記事をありがとうございました(μωμ)





私も今ブログの更新をした所です(^^ゞ



ムサシさんのご訪問をお待ちしてまーす( v^-゜)
返信する
ゆかさんへ (ムサシ)
2007-02-02 07:39:24
消防側としては短時間の間に知りたい情報がたくさんあります。指令員に伝えたことをもう一度救急隊の方で聞く場合もございます。確認の意味でですね。

中には一方的に伝えてガチャンって切ってしまう人もいます。その場合ですと発信地確認などで時間がかかってしまいます。

通報時は落ち着いてと言うのも難しいと思いますが、早く指令を出すためにもご協力をお願い致します。
返信する
火災 (みゆ)
2007-02-02 23:22:38
つい最近、近所で火災があった時に119番通報に問い合わせが多数有ったそうです。どこで火事が あったのか?もう鎮火したのか?ナド…。私はイメージ的に119番通報は特別なものと思っていたけど、そんなことでかける人もいるんだなぁ…。と、呆れます。
返信する
本音のお話ありがとう (走快エイト)
2007-02-03 11:11:36
いつも楽しみに拝見しています。
今回のブログは、さすが現職の消防隊員だと思いました。私も、消防団員のはしくれとして、消防署への電話のかけ方について、ムサシさんのように文書で子供向けに考えた記憶がありますが、ずいぶん昔の話です。その文書とムサシさんのブログを参考に、再度「消防署への電話のかけ方」を作成しようと思います。

ちなみに、私も119番通報を何度かしたことがあります。近所で火災を発見した時・父が深夜に倒れ死にはぐった時などです。緊急にもかかわらず、驚くほど冷静に話せるのが不思議です。逆に「あなたの話ぶりでは、全然緊急性が感じられないけど、本当なの?」と対応する消防署の方が首をかしげるのではと思えるくらいです。
返信する
みゆさんへ (ムサシ)
2007-02-03 16:02:31
火災がどこで発生したなどの問い合わせもありますが、夜ですとどこの病院がやってるか?の問い合わせもあるのです。

これだけに限らず、

・いたずら電話

・話し相手が欲しくて119にかけた。

・新しく携帯を買い、それがちゃんと通話できるか試したくて119番にかけた。


挙げたらキリがありませんが、これも全部本当にあったこと。モラルの問題ですよね。


ちなみにですが、119番は訓練でも使ったりします。

私の所属する消防ではの話ですが、保育園や病院などでの消防訓練のときに、火災が発生したとの想定で実際に119番をかけてもらいます。

訓練申請を受けたときにあらかじめ、

『いつ、どこで、何時ごろに訓練通報をします。』

と相談し、指令室のほうにも伝えます。

そして指定した日時に実際に119通報をしてもらいます。


実際に火災が発生してるわけではありませんので、必ず『訓練』と言う言葉を付け足してもらっています。

一度、保育士の方の演技が上手かったのか、指令室で訓練通報があるのを見落としてしまったのか分かりませんが、本当に出場指令が流れてしまったことがありました。(大汗)
返信する
走快エイトさんへ (ムサシ)
2007-02-03 16:15:31
指令員側としては、やっぱり落ち着いて言って下さるほうがありがたいですね。その方が早く通報内容を把握できますし、早い出場にもつながります。

初任教育時に一度、実際の119番通報を録音したCDを聞く機会があったのですが、何を言ってるのか分からない、悲鳴、怒号の混ざった通報がありました。

極端だった例なのかもしれませんが、とても印象的でした。


ある程度現場を経験したら、消防をまた違った視点から見れる通信指令の仕事もやってみたいなって思います。
返信する
とても勉強になりました☆ (sakura)
2007-02-04 19:59:51
私は通報をしたことがありませんが、いざという時
どうしたらいいのか・・と思っていました。
今回の記事はなかなか分からないことを詳しく説明されていて勉強になりました。いざという時、落ち着いて通報できるようにまた読み返してみます!
返信する
sakuraさんへ (ムサシ)
2007-02-04 21:12:34
少々長くてお願いばっかりになってしまった記事ですが、そう言って頂けてありがたいです(^^)

私の所属する消防を例にとってお話しましたが、日本全国どの消防でも聞かれる内容はほぼ同じなはずです。

緊急事態で慌ててしまうのは仕方の無いことですが、そんな時こそ落ち着いて指令員の聞くことに答えて頂ければと思います。

これからも有意義な情報を提供できるよう勉強していきます
返信する

コメントを投稿