白内障手術でお医者のすすめるまま手元に焦点を合わせたレンズをいれてもらったおかあさんは、やっぱり遠くに焦点を合わせたほうがよかったんじゃないか、と同室の患者さんの視力をうらやんで一晩は悶々と眠れませんでした。
でも、再手術にはリスクが高くなるし、実際問題、そう簡単に手術をやり直すことなど、失敗ではないのですからありえません。
以前よりは良く見えるようになったんだからありがたいことではないかと思ったり、でも、もう少しだけでも遠くまで見えるといいんだけれどと思ったり、やっぱり、遠くに焦点をあわせてほしかった、と、思いが堂々巡り。
メガネをかけて初めて車の運転をしてみました。(実際はゆるめに調整しているので運転できるほどの視力はないのですが)まぁ、なんとか。
でも、やはりコンタクトレンズのほうがいい、と以前からの眼科の先生のところで診てもらいました。
ソフトレンズの1日使い捨てというのが楽そう、とお願いしました。ハードレンズはやはりもう少し先、4月になってから、ということで。
もうそれこそ何10年もコンタクトレンズのお世話になっているおかあさんです、ソフトレンズのつけはずしがこんなに難しいものだとは思ってもいませんでした。
左手の中指で上瞼をあげ(おかあさんの瞼は華麗・先にこの文字が出た、じゃなくって加齢で上瞼が半分下垂していますが、していなくても引き上げないとつけられません)右手の中指で下瞼を引き下げて黒目をまるごとあらわにします。
そこまではできるのですが、右手人差し指の先のぶよぶよのソフトレンズが途中でよれてしまったり、表裏が逆さになったり、くっついたり、、、なんとか位置を保って、、、それを目の玉に押し当てるのです。
ハードレンズは目の表面に触るか触らないかくらいで磁石のように吸いつくのですが、ソフトはそうはいきません。悪戦苦闘の末、なんとか装着。
なんとよく見えること!目の良い人はいつもこんなに見えてるんだなぁと、つくづくうらやましく思いました。
そしてはずすのは、つけるより難しいと感じました。同じように上瞼と下瞼をがっと開けて、右手の親指と人差し指でつまんではがすのです。
片方だけはずして、もう一度装着。なかなかうまく行かなくてお手上げで泣きたくなるほど(実際、涙がぽろぽろ)
うまく一人ではずすことができるかと不安な思いで家に帰りました。
わぉ、家の中もよく見える、、、でも、新聞の文字が見にくい!!
そうだったんだ、老眼であることを忘れていたのです。眼科のお姉さんもきっちりと視力の出ることだけを考えて調整してくれていたのです。
そう思うとなんだか息がつまりそうな苦しさで、また、難儀して難儀してレンズを外しました。
遠いところまで見えるソフトレンズを外して、気がつきました。
手術で遠いところに焦点を合わせてもらっていたら、ずっと、この息苦しさから逃れられなかったんだと。
ながながと、くどくどと、返す返すも残念なこと、などと思い悩んでいましたが、バチあたりでした。あの先生は名医だったのでした。
2日後の3月10日、花咲かじいさんってほんとうにいるんだ、と思い出すほどいっぺんに咲いてしまいました。