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薬: 日本から研究拠点が消える

2009年07月28日 08時37分40秒 | 新聞
昨日の朝日新聞に、「製薬オセロゲーム 日本から研究開発拠点が消える」という記事がありました。

月曜版GLOBEが製薬特集で、その中で日本の製薬事情を解説したものです。

日本は、基礎研究ではノーベル賞受賞者を輩出する高水準です。

研究開発の面では、それまであった拠点を海外に移す等、空洞化が進んでいるそうです。

2008年10月、米メルク社が完全子会社化した万有製薬の研究所(つくば市)の閉鎖が決まりました。

メルク社は「2010年問題」の打撃が大きく、つくば、シアトル、ローマの3研究所を閉鎖しました。

2007年以降、外資系製薬会社の日本離れが進んでいます。

6社あった研究所のうち、5社(つくば市にある3社を含む)が閉鎖され、残るのは神戸にあるベーリンガーインゲルハイム社のみとなりました。

日本の製薬会社でつくる日本製薬工業協会のシンクタンク、医薬産業政策研究所の八木崇さんは、
「医療費抑制のための薬価切り下げで国内市場の伸びが見込めないうえ、治験や人件費のコストが高い。今は成長市場の中国やシンガポールに注目が集まっている」と指摘されます。

日本の医薬品市場は7兆円規模で世界2位ですが、シェアで見ると9.9%と10年前の半分になりました。

国内の製薬大手4社を見ても、売上高の5割前後は海外です。
アメリカ(世界シェアの約4割で最大市場)を中心に、海外へシフトを進めています。

バイオベンチャーでも、アメリカでは年間の新薬承認数で、2003年にはバイオベンチャー発の案件がビッグファーマ上位15社の合計を上回りました。

日本では大学発ベンチャーが相次いで倒産する等、成功例が少ないです。

カネボウ研究所を起源とするバイオベンチャーのカルナバイオサイエンス社長の吉野公一郎さんは、
「ようやくビジネス経験のある人材が起業するベンチャーも出始めた。環境を変えるためには、一つでも多く成功例を出すしかない」と説明されます。
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「薬の一生 17ステップ」がありました。
薬の開発から特許切れで消滅するまでの過程を説明するものです。

1.天然物かの抽出や人工的な合成でできるだけたくさんの化合物を集める
2.病気と関連する酵素やタンパク質への働きを調べ、薬効のありそうなもの(リード化合物)を選別する
3.リード化合物について、構造の似た兄弟物質もすべて調べて最終候補を選定。特許を申請する。
4.動物実験をスタート
5.強い毒素が見つかると→開発中止

6.フェーズ1試験 
  厚生労働省に治験届を提出、健康な人に投与して安全性を確認、吸収や代謝を調べる
7.強い副作用がみつかる(重篤な場合は入院も)と→開発中止
8.フェーズ2試験 
  治療・予防の対象となる数人~数十人の患者で効果や安全性を確認。用法・用量を固める
9.病気に対して明確な薬効が出ないと→開発中止
10.フェーズ3試験 
   多い時には数千人の患者に投与し、効果や安全性を確認

11.既存の薬と比べ、効果や使いやすさ、副作用の面で有意差が出ないことが判明すると→開発中止
12.厚生労働省に製造・販売の承認を申請
13.独立行政法人「医薬品医療機器総合機構」で審査。データ不足を指摘されると→販売が延期になる
14.厚生労働省で承認される。中央社会保険医療協議会で薬価が決まり発売。
   医師による処方箋で不特定多数の患者が使えるようになる
15.特許に守られて、売上げを伸ばす

16.不特定多数の患者で使用した結果を追う市販後調査で、予期せぬ副作用が見つかったら→製品回収
17.特許切れ後、同じ成分で価格の安いジェネリックが登場。売上げが急減

新聞記事で、「効果のありそうな成分を発見」と読むと、早く薬を開発してと考えますが、ものすごく手間と時間がかかるものなのですね。

難しい人生ゲームのようだと思いました。


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