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ダグラタスビルとアスナプレビル(ダクルとスンベ) C型肝炎治療 2014.7.12作成

2014年07月13日 | C型肝炎ウイルスの治療
製薬会社さんから出ている製品情報概要からもってきました。それにしても無効例での効果がうれしい限りです。
C型肝炎ウイルス治療の最終ゴールは、ウイルスの陰性化ではなく肝がんをいかにゼロにするかです。そのためにはできるだけ、炎症を抑える、早くウイルスを減らす,できればウイルスを消すという治療方針が言われてきました。
(可能ならウイルスが消えてもインターフェロンをするのがより理想と思いますが、保険適応がないのが残念です。。。自己負担で行っている方はいるとおもいます。)
肝がんゼロを目指す気持ちから少し解説していきたいと思います。ウイルスが消えても、定期検査は必ず受けてくださいね。先生が不要と言っても半年に1度のエコー検査は最低受け続けてほしいと思います。
それと、どの治療でも患者さんの状況で受けた方がいい場合受けない方がいい場合があります。すべての人が絶対した方がいい治療はないので自分に合った治療をしていくことが大切であることは忘れないでください。

あと、この治療を少しでも早くしたいと思うかたは、助成制度が使えるようになるのを待たずに使えるようにする一つの方法として高額医療の申請をしておく方法があります。助成よりは高いけど、助成が出ると戻ってくるお金ですから、上限額を負担できそうな方は、今から申請をしておくといいと思います。

 
なんといってもこのグラフがこの治療の効果を物語っています。
肝硬変の時期でも有無を言わさず効いている。そして前治療(インターフェロンとリバビリン療法)が無効(ウイルスが一度も陰性にならなかったこと)でも、効いているなんて、ウイルス性肝炎の治療においては目が飛び出るほどうれしい話です。
医療費の問題がないなら、次の治療がでるまで何度でも繰り返ししたいと思えます。
この下側のウイルス学的反応が次の写真の略語の解説になるのでちょっと読んでおいてください。治療開始から4週目、12週目が鍵になると言われてきたのでこの略語があります。

 
このグラフ、なんだか同じような長さが並んでいます。RVR(治療開始から4週以内のウイルス陰性化)のところでは60%台がありますが、ほぼ8割以上。今までの治療ではRVRがあるとすごい効果がありますと言ってきましたが、12週以内でウイルスが陰性化すれば8割以上の効果ですって言えるって、とんでもなくすごいこと。。。シメプレビル(ソブリアード)でも実際使ってみると4週以内に陰性化してないと消えなかった方がいるのでそれ以上の反応があるということ。(実際に臨床になるとデータとずれる場合が多いのでこれから検証することになるけど。)
そして下の折れ線グラフは、ウイルスが消える速度を表しています。保険適応は月1回の測定の地域もあるので、4週目前後で判断する形になります。治験では、1週目、2週目も測れるのでこのデータがあります。ただ以前のリバビリン併用療法のときの感覚では考えられなかった12週以内の陰性化で充分ということが言えると思います。

 
そして、前治療無効例の場合のグラフです。NullってのとPartialってのにわかれていますが、これは治療中にウイルスの量が治療前の100分の1になったかどうかで区別しています。難しいこと言っていますが、どちらも治療中もずっと消えなかった場合と言うことです。それなのに、どちらも8割前後の効き目、これが一番信じられない位にうれしいことなんです。是非治療を受けてほしいと思えるのはこのデータがあるからなんです。何度も何度も消えずに頑張ってきた患者さんに本当にこたえることができる治療が出てきたと。でも、消えない場合もあるってのが残念ですけど。繰り返し使えるならもっと消える可能性がでてくるでしょう。まだ助成はそこまで認めてくれてないけど。。。

 
最近、耐性ウイルスのことをよく聞かれるので、このグラフは関心のある方が多いかも知れません。そして、この間、多くの方が測定続けられてきた、IL28bの効かないと言われてきた人達にも効くって言えるものになっているので、今後は測る必要はないとはっきり言えると思います(なんていいすぎって言われるかもー)。
私は耐性ウイルスとか耐性の検査については、それを測るためにお金使うならちがうことに使ってほしいと患者さんに言っています、研究機関ではそれによって効果を分析するために重要ですが、この耐性ウイルスについては、その結果がわかって、結果を解釈してどう使うかわかってきたら、臨床医は治療しながら判断ができるデータだから測る前から知っておく必要は感じないんです。無理しないでは焼く治療をやめましょうという意味で使うなら意味があるかも知れないけど、それにしてもそうなる患者さんであればはからなくてもそう判断していくべきだと思っているので。。。
どうしても測ってほしいと言われるときや治ったけど本当に効かない人だったんだろうかを確認するためには測っていますが、今回はさらに、こんなに効く人がいるなら測る必要はないなあと測らないでいいなあという気持ちが強いです。今までの治療から見れば副作用が強くないし、効かないと言われるパターンでも4割以上が効いている、これでは測定して受けないと決めることはしてはいけないくらいに思えます。肝がんをゼロを目指す視点からは、耐性ウイルスを測って効かないんだなあって思いながら治療をするデメリットの方がはるかに高いと思えます。
あとデータにはないですが、次の経口2剤への耐性ウイルスを危惧されている先生もいるのですが、C型肝炎ウイルスの耐性ウイルスがでたあと繰り返し治療して本当に効果がゼロと言えるなら意義はあると思えますが、今まで耐性ウイルスがいても必ず効く人がいることを考えると投与間隔を空けて繰り返し治療できるならした方がいいと思えます。
インターフェロン+リバビリン療法も2回目は効果がないと言いきっていた先生たくさんいました(有名な先生方です)。でも、今は効果がある人がいることが当たり前にわかっています。そのとき時のデータで判断するので、いろんな判断があるのはわかるし、今までもそういう例はたくさんあったので治る可能性が有ること絶対に否定しないで肯定していってほしいです。人の治る力は、効果があるもないも100%いいきることはできません。副作用なく効果がゼロではないなら試みるべき治療と言えます(医療経済的には厳しい話がいっぱいだけど。。。)。

 
安全性については、今回の薬は肝機能障害がはっきりとしています。今までの治療では頻度が不明となっていた重篤な肝障害もでる可能性があることが強調されていくと思うので逆にしっかりと採血検査をしていくことになり、その結果をしっかり見ていくことで安全に治療を行えるようになると思われます。テラプレビル(テラビック)で皮膚障害が強調されたことでその対策がとられたように。なので、肝障害を気にして治療をしない方がいいという判断は、あまりすべきではないと思います。このくらいの肝障害が出ても充分肝臓は回復出来ることを予想して治療にはいることで充分対応可能ですし、死亡例がないこと、代償性肝硬変の方に投与されて認可されていることがそのことを証明もしていると思います。ただ、臨床で使い始めたときの新たに出る副作用は、どの薬でも未知数なところが有るので、先生方も注意して治療を行います。
肝障害の原因がウイルスに感染している細胞を一気に壊すためのものであれば、すごい効果を発揮している証拠とも言えるでしょうがその辺はまだ私もわかりません。

それにしても、今までの苦労はなんだったんだろうと思える治療になっています。しかし、一秒でも早くウイルスは減らしたり消せた方が肝がんになりにくいことから、今までがんばってウイルスを消してきた方にとっては、やって良かったと言えます。肝がんになる確率をすでに下げることができているのですから、治療をすすめても拒んで来た方に肝がんができたときほど、残念で仕方ない気持ちになります。もっと心と体がしたいと思えるようにかかわれたらならなくてすんだかも知れないと思ったりすることがあります。でも、それがその人の選択であるならそれも必要なことなのかなあと思ったり、なんとも病気っていろんなことを考えさせてくれるものです。。。
元気な笑顔になれる患者さんが増えてくれたら、病気から健康の大切さを知ってくれてみんながさらに健康になってくれたらと願ってやみません。
 
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