息をするように本を読む

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と、なんだかだらだら日常のことなども

病が語る日本史

2010-12-15 11:44:06 | 著者名 さ行
酒井シヅ 著

遺跡や墓所を調べると、そこで亡くなった人の死因がわかることがある。
それは、ポリオであったり、骨折やけがであったり、食中毒であったりするわけだが、
歴史を追って調査を重ねると、時代背景や暮らしぶりが浮かび上がってくる。
縄文時代の遺跡から、体が不自由ながら20歳まで生きた骨がみつかれば、狩りにいけない
人を家族が愛情をもって養う余裕があったと考えることができる。

それが歴史上の人物であれば、記録のみにとどまらず、当時の様子がさらにリアルにうかがえる。
たとえば、時代を謳歌した藤原氏は糖尿病の家系で、望月の歌を詠んだ道長は
糖尿病が悪化し、末期は白内障で目の前のものが見えなかったという。
そこまで進んだなら、死因もそれでは?と思うのだが、呪詛や亡霊のせいとされている。

また「わらはやみ」「おこり」という病は「マラリア」で
平安時代当時は頻繁に流行し、ありふれた病気だったらしい。
現代では恐れるほどではない病も、ほんのわずか昔は命を左右していた。
流行病は運命の分かれ道であり、多くの迷信や民間療法が生まれた。

これだけ医学が進歩すると、当然ながら死生観も変わる。
ただ生きることの重さが、けた違いであったのだろう。
みんなが長く生きることがはたしていいことなのか。
ガンは長寿だからこそ問題になる病気だという。
つまり皆がそう長生きしない時代は、ガンに気付く前、発症以前に他の病で死んだのだ。
なんだか皮肉な感じもする。

それにしても、歴史って切り口を変えるとおもしろいよね。