かたつむり・つれづれ

アズワンコミュニテイ暮らし みやちまさゆき

吟行、春動く

2015-03-30 08:10:35 | アズワンコミュニテイ暮らし

久しぶり、吟行句会。

3月28日。

鈴鹿市内にある旭化成グランドに集う。

桜の巨樹が散策路の両側に数百メートル並んでいる。

開花予想は4月4・5日。

天に伸び上がっていく枝には、無数の桜の蕾が色ついて

すこし遠くでみると、ピンクの霞のよう。

 

句会の面々は、のどかな陽射しのなか、めいめい何やら

この風光を感じ取ろうとしている。

女の人はよくじゃべっている。

しゃべっていたら、句ができない、と叫んでいる。

男はしゃべりながら、密かに作句しているはずである。

 

中井宅にて句会。

この日、師匠の敏子さん、娘さんの体調よくなく、家事の

手伝いに馳せ参じて、お休み。

作句のお時間。それぞれ、案外、早く仕上がっている。

余川さん、季語辞典ありますよ、と用意周到。

 

おふくろさん弁当をいただく。

見栄え、味、「おいしい」とあっちからも、こっちからも。

 

さて、句会。

師匠無きはさびしきも、康子さんの進行ではじまった。

句会っていいなあ。

吟行のそれぞれが感じとったものが、重なり合い、

開花前の桜並木の天、地、生きとしいけるものの

息吹きが描きだされてくる。もちろん、作者の息使いを

通して。

満開の豊満も、もちろん感動だけど、蕾時期の春の

佇まいにも、宇宙の動きや、人の想像力のすばらしさ

をあじわった。よかったなあ。

 

句会、どんなふうに表わせるだろう。

まず、花に焦点がいかない分、花が咲くにいたる

気持ちや理を詠ったもの。

 

 待つ春を桜は見事応えけり             中井正信

 桜花心あらたにまた出逢う              中井佳子

 桜咲く雨風日差し一体の               大平照子

 校庭の桜なつかし今はなく              栗屋 章

 乱れ裾恋下駄駆けって舞う桜            辻屋哲男

 虫もまた悦びており花の下(もと)          辻屋康子

 桜蕾(ようつぼみ)青年の如大志あり        余川彬夫

 七十年風雪に耐え桜咲く               伊藤八重子

 青空に地図描くごと枝のびる               〃

 うらうらに開花待つ身や上衣脱ぐ          宮地昌幸

 咲く前の膨らむ姿花の華               鈴木英二

 

こんなにも。多彩の周りにあるもの、周りから感じるもので、

それぞれの世界が現われてくる。

花満開はなくとも、それぞれ心のなかは満開。

 

句会での講評のいろいろ。

 つくしんぼう三才の孫反抗期          伊藤敏正

    *ほんと、つくしんぼうって、やんちゃな幼子のイメージだよね。

 枕元小さな寝息春よ来い            大平達夫

    *この”春よ来い”と小さな寝息が、春ののどけさ、やわらかさ、

     表現しているね。

 菜の花に見とれし君に向くカメラ        

    *敏正さん、天でいただいた。

      「この”見とれて”というところ、うっとり君に目が向いている、

       なんともいいなあ、とおもって」

      「どなた?」と康子さん。中井さん「はい、ぼく」

      「実は、これ、はたけ公園で近所のおじいさんが・・・・・」

      一同「この”君”というのは、おじいさん!?」

      中井さん「ええ、そう・・・」

 園庭を駆けゆく児等に春動く            余川彬夫

     *これは3点句。

      「駆けゆく」と「春動く」の流れがいいなあ、という講評。

      余川さん、この句の背景について。

      「実は、この句、別の句会で特選になった句なんです。

      最近、季語に関心があり、季語にはずいぶん調べていて、

      この”春動く”がやっと、ぴったりしてきた、そこを言いたかった」

      と。

      この辺の、もうすこし、つっこんだ、研究のプロセスは

      ぜひ、余川さん自身から、このブログで開陳してほしいなあ。

      ぼくらも、刺激になり、学びにもなるんですから・・・

 

     余川さんならずとも、句が出来上がる背景をそれぞれ開陳して

     もらった。

     何回いうようだけど、それらが響き合うと、すばらしい自然と

     人の営みの世界の一端がそこのあらわれる。

     てなわけで、句会は面白いということです。

     師匠、これからも、よろしく。