大分単身赴任日誌

前期高齢者の考えたことを、単身赴任状況だからこそ言えるものとして言ってみます。

読んだ本―「嘘の見抜き方」(若狭勝著・新潮新書)

2013-06-16 06:28:21 | 本と雑誌

著者は、元東京地検公安部長で、現在は「タレント弁護士」。参議院議員選挙候補予定者でもあるようです。

タイトルにあるように、「嘘を見抜く」ための、テクニカルなことが、多くは検事としての取り調べ経験を踏まえて示されています。

「嘘を見抜く」ためには、「嘘反応」を見極めることが有効、とされています。「嘘反応」とは、「嘘をついているときに表れる、不自然で非合理な言動のこと」だそうです。

・大事なことを覚えていない―記憶の範囲のムラ

・聞かれた質問に答えない―はぐらかし、過度の一般化、逆質問

・話のリズムが突然崩れる

・聞こえないふり、繰り返し逆問(考える時間を確保しようとしている)

・断定を避ける防御の修飾語

・無意味で過剰な修飾語-「天地神明に誓って」「命を懸けて」等々

・聞かれていないことまでしゃべりすぎ

・・・というようなことが、挙げられていて、それはそれで説得力のあるものです。

が、こういう諸点というのは、嘘をつく側が熟練すると役に立たなくなるものですから、あくまでも基本は、「嘘=事実でないこと」を見抜くためには、「事実」を見極めることが有効、ということになるようです。

「嘘を見抜くためには、まずもって『事実が何であるか』をつまびらかにすることが必要なのです。」

という、同義反復みたいな話ですが、そのための具体的な方法として示されているものには、なるほど、と思わされました。

「このとき、『木』をイメージすることをおすすめします。事実の大筋は幹、個々の事象は枝、さらにディテールは葉をイメージします。このとき、一箇所の枝葉を丹念に聞くより、幹や枝の間をどんどん飛ぶように質問する方が、相手の供述の綻びをひきだすことができます。もし本当のことを話していれば、どの部分を聞かれても正確に答えられるでしょうが、木が『幻』の場合には、それだけで混乱してしまうからです。」

要するに、嘘を見抜くためには、「全体」をつかむことが必要、ということで、その意味では、ハウトゥー的に「嘘の見抜き方」があるわけではない、ということになります。全体を見渡せるようにするための積み重ねた努力が必要なのであり、これは、「犯罪者の嘘」ではなく「政治家の嘘」を見抜くときに、その必要性が一層明らかになる、と言えるのでしょう。