兵庫県青年土地家屋調査士会から「役員選挙直前アンケート」が来ました。
日本土地家屋調査士会連合会役員選挙直前 候補者に質問してみましょう
夏の日日射しを思わせる日々、候補者の皆様におかれましては業務ご多忙の中、会務に多大なるご尽力を賜り、感謝申し上げます。
さて、この度表記の役員改選選挙が執り行われますが、兵庫青調会では2年前の日調連役員改選選挙より、【立候補された方がこれからの未来についてどのようにお考えなのか】ということに、深く興味があり『候補者に聞いてみよう!!』という企画を実施しております。
今回の役員改選選挙では、より多くの会員に、今後の土地家屋調査士制度について前向き・真剣に向き合う機会を作るため、各候補者様の在籍する地元青調会のご協力をいただき、『候補者に質問してみよう!!』という企画を考え、質問事項を作成しました。
業務・会務ご多忙中、誠に恐縮ではございますが、どうぞ企画趣旨をご理解いただき、ご協力賜りますようお願い申し上げます。
なお、本件質問について、各候補者様からいただいた回答は、協力していただいた各地の青調会のメンバーへ送信及び兵庫青調会として公開させていただきますことを申し添えます。
お忙しいところ大変恐縮ではございますが、どうぞご協力いただけますよう、お願い申し上げます。
というものです。役員選挙の過程というのは、より多くの調査士が自分たちの組織を、そして未来を考える絶好の機会ととらえるべきだと思いますので、このようなアンケートを送っていただける、というのは、大変いいことだと私は思います。そのようなものとして、積極的な姿勢で「回答」をさせていただきました。下掲のものです。
回答自体の中でも書いていますが、正直言って質問の趣旨がよくわからないところもあります。自分の頭の中でレールを敷いた上で質問された場合、こんな感じになってしまうのか、という感じがします。もっと開かれた形でQがだされ、それに答える(A)という形でのQ&Aがなされるようにできれば、もっといいのにな、と思います。また、時期ももうちょっと早い方がいいですよね。私は、たまたま三重県からの帰路の車中で「回答」を書けたのですぐに答えられましたが、選挙期間34日間の26日をすぎたところでのアンケート発送というのは、遅すぎて、答えられない候補者の方が多くなってしまうのではないか、と思われます。
・・・と、ついつい文句を言わずにはいられない性格を露わにしてしまったところで、アンケート・回答です
<連合会役員選挙アンケート>
1.日調連役員になり、任期中に絶対実現すべき目標は何ですか?
また、目標実現に向けてのプランを明らかにして頂ければ幸いです。
(所信表明のみでは、なかなか理解が難しいという事かと思います。)
? 組織の民主的運営への転換、情報の共有化と活発な議論
「絶対に実現すべき」こととなると、まずは自分たちの中でできること、になります。これが、すべての施策の基礎になるものと思っています。
? 不動産登記制度を土地制度の全体の中に位置づけ、調査士がそれに責任を持って改革への提言を行えるようにしていくこと
2.今後の土地家屋調査士の業界ビジョンは?
まずことわっておきますが、 「業界ビジョン」という言葉に私は違和感を持ちます。「業界」的に考えるのであれば、「土地家屋調査士業界」ではなく、資格の枠を超えて、資格横断的なことを含めてもう少し広い考え方をするべきなのだと思います。
「土地家屋調査士のビジョン」ということとしては、「不動産登記制度に責任を持つ民間資格者」としての確立を基礎にして、「登記制度のみを媒介として国民に対するのではなく、直接国民生活に寄与しうる業務形態の確立」を目指して行くべきなのだと思います。
3.候補者が考える次の組織などについて、変えなければならないこと、変化しなければならないことはありますか?
連合会
単位会
会員個人
分けて考えずに全体として、「社会全体に責任を持つ」という姿勢が必要であり、現在それが希薄である、という意味において「変えなければならない」のだと思います。
それは、「会員個人」において言えることですが、それが「調査士会」という組織になった時にはより一層強くなるものです。「連合会」は、制度そのものを取り扱う機関としてもともと作られているものですから、さらにより一層明確なはずですが、そうなっておらず、「事務所経営基盤の確立」「帰属意識の高揚」という自分たちの利害追求を中心に考えるようになっている現状はとても危機的なものだと思い、是非とも変えていかなければならないと思っています。
4.調査士法人及び司法書士法人の調査士の雇用に対しての議論が一部で取りざたされているようですが、現在のような社会情勢の中で、調査士が生き残っていくためには組織化も必要な時期に来ているのではないかと思います。調査士を雇用する制度や調査士法人等の雇用形態の変化についてどう思われますか?
いちいち設問にケチをつけるようですみませんが、「調査士が生き残って行くために組織化が必要」という考え方は、違うように思います。社会が求めているものに対応するために何が必要か、ということを考える必要がある、ということであり、その中で「組織化」が必要になるところもあるのだと思います。そのようなものとして、法人化や調査士の雇用ということも積極的に考える必要があるのだと思います。しかし、言わば新自由主義的に競争と淘汰だけが目指されるべきではなく、個人の資格業としての意義も軽視するべきものではない、と思っています。
5.スキャナーデータみたいな画像データではなく、土地建物情報の電子化推進を考えていますか?
質問の趣旨がよくわからないのですが、答えとしては「考えています」。
6.TPPの影響をどのように考えておられますか?
正直言ってTPPについてよく知っているわけではありませんが、日本の社会・経済構造全体に対する影響の中で、不動産登記制度や資格制度に対する影響は当然にあるのだと思います。
私たちが直接に関わるこれらの制度が、不合理な障壁としての性格を有しているのだとしたら、その部分の改革が求められるでしょう。これについて、「官」のみに委ねるのではなく、民間の資格者として責任を持った対応をして行くことが必要なのだと思っています。
7.新たな職域の可能性・国の出先機関廃止後の土地家屋調査士の役割についてはどう思います?
質問者がこの二つのことを繋げて考えているのであろう、ということは推察できるのですが、私は区別して考えるべきことだと思っています。その上で、
「新たな職域の可能性」ということについても、さらに次の区別の上で考えるべきことだと思います。
①調査士法3条業務(法定独占業務)の拡大。平成17年改正で筆界特定、ADR代理が加わったことの上で、さらに筆界確定訴訟の代理権等司法領域への取り組みが目指されるべきだと思います。②付随・関連業務については、位置付けを明確にすれば、あえて「職域」の問題として考える必要はないのだと思いますが、先にも書いたように「登記を媒介にしない業務」に積極的に取り組むことは必要でしょう。ただし、あまり「職域拡大」的発想はしない方がいい、というのが私の考え方です。
「国の出先機関廃止後」というのは、おそらく「登記事務の地方移管後」という意味合いなのかと思われます。これについて、どのようになるのかわかりませんが、それに備えて行くことは必要、と考えるべきでしょう。土地家屋調査士が、より大きな責任をになって行く、という姿勢で考えるべきものなのだと思います。
8.連合会の選挙制度についてあなたはどう思われますか?
「選挙制度」については、「制度」そのものと、その「運用」に分けて考える必要があると思います。
「連合会の選挙制度」そのものについては、基本的なところでは、大きな問題があるとは思っていません。たとえば、「日弁連のように調査士の全員投票にするべき」といった考え方があるかと思いますが、私としては少なくとも現時点においてはその必要性を強く感じるものではありません。
制度の細かいところについては、改善の余地もあるのかとは思いますが、これもさほど大きなものではありません。
選挙制度の運用実態については、「政策」の議論とそれへの選択、という形になるっておらず、「地域代表」的な考え方が色濃くあるように思えて、もう少しどうにかならないのかな、と思います。そこで、運用をよくして行く、という観点での制度的手当てがあるべきかと思っています。
9.法25条2項は重要に思います。土地家屋調査士の収集された情報が各事務所で保有されとどまったままになっていること(情報のカプセル化)が起こっていますが、ご意見はありますか?
土地家屋調査士の業務情報を適切に共有化(公開)できる方法を考えることが必要だと思います。
その場合、第一に考えるべきことは、「不動産登記制度の改善」だと思っています。不動産にかかる情報を公示する制度として不動産登記制度について、現在のままで社会の要請に十分に答えられるものになっているのか、ということを私達も責任を持って考える必要があるのだと思います。あくまでもその上で独自の方法の必要性について考える、ということなのかと思っています。
10.昨今、不在地主が増加しており、登記業務に支障を来たす事件が増加していると感じています。現在、筆界特定制度を利用した解決方法はありますが、今後、さらに不在地主は増加傾向にあり、土地家屋調査士の調査権限等の強化(法改正)が必要と考えますが、如何でしょうか?
「 不在地主の増大」については、わが国の土地問題全体の大きな問題だと思いますので、そこでの対策として管理のあり方を考える必要があるのだと思います。これについて、土地所有者が不在であったり、不明であったりすることによってどのような問題が生じているのかを、現場で現実として知る土地家屋調査士が、積極的な提言をすることが求められているのだと思いますが、それが単に「境界立会が滞りなくできる」というような問題に集約されてしまうのでは狭すぎるように思います。その意味で、質問者の考えているであろうような「土地家屋調査士権限の強化(法改正)」には、私としては積極でありません。
11.ADRセンターの公益法人移行はできないのでしょうか?
ADRセンターの公益法人化(公益社団法人としてのADRセンターの認定取得)が望ましい、と考えられるのであれば、それを推進すればいいのであり、「できる・できない」の問題ではなく、「できる」のではないかと思います。
しかし、私自身としては、その追求の必要性を感じてはいません。
12・センター、認定調査士について意見があればお願いします。
調査士会ADRについて、発足以来の実績への検証をしっかりと行う必要がある、と思っています。利用率が低い、ということに端的に表れている問題について、その根本的な原因をしっかり考え、この分野について社会が求めているものは何なのか、という観点で考え、方向性を明らかにしていく必要があるでしょう。
認定調査士制度は、調査士が、「民事紛争」に関われるようになった(狭い領域の問題についてであれ)、という点において画期的な意味を持つものだと思っています。しかし、その評価と取り組みという点において、調査士の世界の受け止め方が、あまりにも弱いように思えます。「民事紛争」関係にも対するものとしての認定調査士の意義をより強く打ち出す必要があり、そこから土地家屋調査士の業務全般を見直す方向で進めて行くべきだと思っています。
なお、以上の質問事項を含むさまざまな問題に関する私の考え方について、私のブログ(http://oita-chousasikai.de-blog.jp/blog/)で明らかにしているところもありますので、そちらも読んでいただけると幸いです。また、このアンケートについて、ブログに掲載させていただきますので、お断りしておきます。
ご協力有難うございました。