大分単身赴任日誌

前期高齢者の考えたことを、単身赴任状況だからこそ言えるものとして言ってみます。

境界問題の専門家としての土地家屋調査士―日調連役員選挙で問われること③

2013-05-30 17:05:31 | 調査士会

私は、土地家屋調査士が(したがって調査士会が、そしてその連合会が)、専門資格者としての自らの社会的存在意義を発揮できる最大のものは、「土地境界問題」の領域だと思っています。したがって、今後の制度改革を、「境界問題の専門家」としての立場から推進していく、という姿勢をとることが重要なにるのだと思います。

土地家屋調査士は、制度発足以来土地の境界(筆界)を取り扱って分筆登記などを行ってきました。しかし、「筆界」についての考察を深め、「境界問題」への取り組みを本格化させたのは、この20年くらいのことだと言えるでしょう。20年ほど前から、その取り組みを開始し、一定の力を蓄えたところで司法制度改革、行政改革の動向との関係もあって、平成17年の不動産登記法・調査士法の改正での筆界特定制度、境界ADRへの関与がなされるようになった、という経過をたどったものと言えます。

それから7年余を経過して、特に筆界特定制度への関与は、実際の境界問題の解決へ向けた寄与という成果とともに、さまざまな教訓をも含めた大きな経験を私たちに与えてくれました。

この教訓と経験は、土地家屋調査士の世界全体から見るとまだまだ一部のものに限られているのが現実であるように思えますが、これを質的にも量的にも全体のものにしていくことが今後の課題なのだと私は思っています。

それは、分筆登記等の一般的な登記事件における「筆界認定」において、この間の「境界紛争解決への取り組み」の中で培ってきた力を全面的に展開していくこと、として課題にするべきことだと思います。

この課題は、内外の二つの課題として現にあります。一つは、調査士内部の問題です。すべての調査士が、境界紛争解決に取り組むときの質をもって一般登記事件における「筆界認定」を意識して行えているか、という問題です。私は、少なくとも現時点における調査士の一般的な水準は、これをなしきれるだけの力を持つものとしてある、と思っています。しかし、それが実際に十分になしえているのか、ということは問いなおさなければならないものとしてある、と言えるでしょう。旧来通りの業務スタイルのままの方が楽だから、というような姿勢でいたのでは、調査士の発展も、またこれから述べることとの関連で言えば「存続」さえも危ぶまれる、と言わなければなりません。

もう一つの課題は、外部的な認知における問題です。よく一般的に「表示に関する登記の95%は調査士が代理している」というようなことが言われます。どのような根拠をもつものか知りませんが、これは少なくとも「申請事件の」ということに限られる話なのだと思います。すなわち、「嘱託事件」については含まれていません。そして、その含まれないものの中で「筆界」が多く取り扱われています。そこでは、はたしてきちんとした「筆界認定」がなされているのだろうか?・・・はなはだ疑問のあるところです。

これは、不動産登記が土地の境界問題に対して有効に機能しうるのか、という極めて実質的な問題です。現在のような形を続けていたら、その機能は大きく損なわれてしまいます。それに対して、私たち土地家屋調査士が適正に関与(本当の「95%以上」)して、不動産登記制度の有効性を向上させることが必要です。このことは、必要だし、可能なことであるはずです。そのための土地家屋調査士のもう一段の努力と、現実を踏まえた柔軟な対応が必要なのだと考えるべきだと思います。

「登記事件数の減少」を前にして他へ飛び移ろうとするのではなく、また「非調査士排除」の形式論だけで押し通そうとするのではなく、社会的現実を見据えて自らの業務の充実を追求する中で展望を開いていくことが私たちに求められています。そして、そのために日調連における、先頭を切っての努力が必要なのです。


日調連事業計画大綱案―日調連役員選挙で問われること②

2013-05-29 06:06:22 | 調査士会

今回の日調連総会に提案されている「事業計画大綱(案)」について考えます。

まずは、「事業計画大綱(案)」そのものです。 

平成25年度事業方針大綱(案)

土地家屋調査士は、適正な業務を行うことにより、権利の客体となる不動産の表示に関する登記手続の円滑な実施に資し、国民の権利の明確化に寄与する立場にあり、このことは、各土地家屋調査士に、不動産登記法、関係法令等を遵守し、土地家屋調査士としての職責を果たすことを通じて、国民が安心して生活を営めるような基礎を作ることを求めている。これを受けて、平成25年度の事業方針大綱では、土地家屋調査士制度の推進を図り、昨年度に掲げた事業方針大綱を具現化することに主眼をおく。

数年来、表示登記の事件数は半減しており、この原因は、景気の低迷だけではなく少子高齢化による世相の変化であり、これからの住宅事情を鑑みたとき、不動産の流通に大きく期待することはできない。

また、全国の会員数は減少傾向にはあるものの、表示登記の事件数の減少はその比ではない。

そこで、土地家屋調査士の将来を見据えたとき、専管業務である土地家屋調査士法第3条業務の拡充を図るとともに、土地家屋調査士の知見と経験を生かすことのできる不動産に係る基礎資料としての基盤情報の構築を通じた新たな業務領域の拡大の創成が求められている。

平成25年度は、各種施策の実施において、制度対策戦略会議の充実を図ることはもとより、行動を起こすことに力点を置いていくこととする。全国の各土地家屋調査士会においても、所属する会員に対する多くの情報提供と、加えて、土地家屋調査士制度への帰属意識の高揚に努めていただくようお願いしたい。

そこで、次の4項目を重点課題としての方針とする。

1 土地家屋調査士制度の推進

土地家屋調査士制度を推進するに当たり、適正な業務を行うための指針となる調査・測量実施要領の改定及び執務規程の策定に取り組み、日常業務はもとより適正な公共調達の基盤の拡充を図ることとする。それには、全国の土地家屋調査士会の協力はもとより各土地家屋調査士政治連盟と共に、発注官公署を始め多方面への働きかけを行い、これらの実現のため努力する。

2 事務所経営基盤の確立

土地家屋調査士の知見と経験を生かした新たな業務開拓の施策として、不動産業界等に対して、不動産の取引又は管理について、土地家屋調査士の専門性の活用を推進する他、中央官公庁に対する委託業務等の掘起しを引き続き行う。

3 帰属意識の高揚

土地家屋調査士制度の発展と新たな事業の展開を模索するためには各土地家屋調査士会及び会員のカを結集することが不可欠である。土地家屋調査士という専門資格者であることに誇りを持ち、信頼ある適正な業務と適切な報酬を通して国民生活の安心安全のために務めることが使命であり、これらの施策を実現するための制度基盤として、土地家屋調査士会が行う事業、研修会等を通して、会員の帰属意識の高揚の推進に努める。

4 研究所体制の充実

平成24年度に引き続き、研究所体制の充実を図るとともに、研究所の研究成果の実現に向かって邁進する。

この「事業計画大綱(案)」について、私の感想を一言で言えば「これでいいのか?」、です。全国の土地家屋調査士は、自分たちの会の連合会が、これを「大綱」として事業を行っていくことをよしとするのか?いいわけないじゃないか、と思わずにいられません。

内容としては、文中で言われているように、今年度のものは基本的に昨年度の「事業計画大綱」と同じです。したがって、昨年度に言ったのと同じ問題点を指摘することができます。これについては、昨年の6月6日にこのブログで書いたので、よろしければ読んでみてください。

昨年との繰り返しになりますが、昨日書いたこととの関係で言うと、これは「資格者団体」のではなく「業者団体」の方針だ、と私には思えてしまいます。

「事業計画大綱(案)」で言われているのは、「表示に関する登記事件数」が激減している、だから「土地家屋調査士の将来を見据え」ると「新たな業務領域の拡大」が最大の課題だ、というロジックです。

これは、「調査士のための」方針、として考えられているものだと言えるでしょう。目的は、「調査士の将来を安泰にすること」です。

しかし、それは筋が違うと言うべきです。資格者団体としては、「調査士のため」ではなく、あくまでも「社会のため」「国民のため」の事業計画を第一に立てるべきなのです。

そして、それこそが最終的には「調査士のため」にもなる、ということになります。調査士(の行う業務)を社会に必要なもの、有益なものとしてつくりあげていくことこそが、調査士会(連合会)の役割であり、それができれば調査士という資格(業)もその存在の基礎を確固たるものにすることができる、という構造です。

今更こんな「書生論」みたいなことを言うのは大変気が引けるのですが、社会の構造としてはあくまでもそういうものです。他の資格者団体の方針などを見ても、表現の仕方はいろいろですが、内容的には同様のものです。

調査士会(連合会)も、そのような「基本中の基本」の方針に戻らなければなりません。目先の利益を追って、中長期的な展望を閉ざしてしまうようなことをするべきではないのです。

その上で、今回の「事業計画大綱」では、昨年かろうじてあった「境界紛争解決への取り組み」という項目がなくなってしまっていることが、実に象徴的なように思えます。

私は、調査士(の行う業務)を社会に必要なもの、有益なものとしてつくりあげていくためには「境界問題」が最も大きなポイントになるのだと思っています。そこを外してしまって、どのように展望を描けるのか?とも思います。次回は、そのことについて書くことにします。

 


「資格者団体」か?「業者団体」か?―日調連役員選挙で問われること①

2013-05-28 06:14:07 | 調査士会

6月18-19日の、日調連総会・役員選挙へ向けて、「何が問われているのか?」。・・・私の考えを何回かに分けて書いていきたいと思います。

1回目は、「組織としての基本方針」についてです。

調査士会(連合会)において、今問われている基本方針の違いというのは、「資格者団体として進んでいくのか、業者団体として進んで行くのか」という点にある、と私は思っています。

調査士会(連合会)が、「資格者団体」としてある、ということは、誰でも知っていることです。調査士法の規定を見ればすぐにわかることです。何を今更そんなことを言ってるんだ、と思われてしまうかもしれません。

しかし、これが結構忘れられてしまいがちです。

10年ほど前の「規制改革」の議論の中では、「資格制度」というものが一定分野の業務を資格者に専権的に委ねることが国民の生命・財産の保護のために必要だからつくられ、その実質を保証するために「資格者団体」による指導連絡を定めたはずにもかかわらず、実態がそのとおりになっておらず、資格者による既得権益の保護(資格者エゴ)、非資格者への過度の参入規制に走り、かえって国民生活にとって弊害になっているのではないか、という指摘がなされていました。

この意見というのは、それこそ行き過ぎた新自由主義的な考え方を基礎に置くもので、全体として正しいとは思えませんし、だからこそ10年前に実現に至らなかったのだと思いますが、一半の真実を突いている、という面もなくはありません。

調査士会(連合会)のような団体に関してに戻っていえば、調査士会(連合会)は「資格者団体」として生まれ育ってきたわけですが、「資格者」が「資格業」を行って生計を立てている人間である以上「業者」としての性格をも持ちますので、「業者団体」的な性格をも持つようになるのは自然のことです。これは、調査士会だけに限らず、他の資格者団体すべてにあてはまることです。

同一業者としての利害を問題にし、その利益のために活動する団体としての「業者団体」の性格です。

この性格は、特に景気の悪い時期が長く続いたりすると強く前面に出てくるようになります。「あれやこれやのきれいごとはいいから、今日明日生きて行けるようにしてほしい」ということで、短期的な業界利益の追求を、その団体の最大の課題にしてしまう、ということも出てくるわけです。

しかし、このようなあり方そのものが、自分たちの「資格者」としての存立の基礎を崩れ去らせてしまうことにつながります。このような進み方をしていたら、自ら「資格者エゴ」批判を引き寄せることにもなりかねないのです。

苦しい時期だからこそ、資格者団体(連合会)は、自分たちがどのような理由で存在するものなのか、ということを、もう一度原点に返って考え、それに基づいた行動に結び付けなくてはならない、ということを強く意識する必要があるのだと思います。次回、このことを、今現在の調査士会(連合会)の方針について、具体的に考えたいと思います。


今週の予定 と リレーマラソン報告

2013-05-27 08:13:13 | インポート

今週の会務の予定はありません。

会務とは少し外れますが、土曜(6.1)に、福岡で、私の日調連副会長立候補に伴う「意見交換会」が開かれます。

土地家屋調査士会の今後の課題はどのようなものとしてあるのか、私が何をしたいと考えているのか、お話しさせていただくとともに、皆様が連合会に何を望んでいるのか、どのように進んで行くべきと考えているのか、ご意見を伺い、議論できるような会にしたいと思っています。

日 時 平成25年 6月 1日(土曜日) 15:00~

場 所 福岡市博多駅そば 深見ビル地下B会議室

 福岡市博多区博多駅前4丁目141

 http://www.fukami-kousan.jp/

「参加自由」ですので、関心のある方は是非おいでくださるよう、お願いいたします。

続いて、昨日の「第1回別府シーサイドリレーマラソン」の結果発表。

9人(一人風邪のため欠席)でタスキをつないで、予想を上回る「3時間01分30秒」(くらい)という好タイムでゴールできました。完走後の打ち上げを含めて、実に満足。次回は、2チームで参加できれば、と思って、ランナー募集中!です。こちらもよろしくお願いします。


総会終了―新執行体制

2013-05-26 04:47:56 | 調査士会

24日大分県土地家屋調査士会の総会が無事終了しました。ありがとうございます。

総会後の理事会で執行体制を決めましたので、報告します。

総務部  部長:安部晴夫(大分)副会長兼務

財務部  部長:小野剛志(別府)

業務部  部長:小手川保彦(大分)副会長兼務  吉岡恵治(佐伯) 甲斐伸治(別府)

研修部  部長:三宮浩輝(大分)  大久保秀一(宇佐) 河合清次(鶴崎)

広報部  部長:大野保洋(大分)  安東典夫(臼杵)

社会事業部 部長:城戸崎修(中津)副会長兼務 阿部清英(大分)

1名増員した副会長にそれぞれ担当部を持っていただくことにしました。これによって「常任理事会メンバー」は、これまでより1人減ることになります。これまで、理事会の構成として「常任」に集中しすぎる傾向があったのをあらためて、理事会全体として動いていくような形をつくっていけたら、と思っています。

会員の皆様には、各部、委員会のメンバーとしてのご協力をお願いすることがあるかと思います。よろしくお願いします。