帯に「持ち主がわからない土地が九州の面積を超えている」
とあるように、「所有者不明土地」問題をテーマとしたものです。
私たち土地家屋調査士にとっても「必読」の本だと思います。是非、読んでいただきたいと思います。
「所有者不明土地」問題については、近年ようやくその重要性が認識されるようになった問題であり、「全国の私有地の約2割はすでに所有者の把握が難しくなっている」と言われています。
なぜこのような問題が起き、そして放置されてきてしまったのか、ということについて、著者は
「日本の土地制度」そのものが問題になるわけですから、問題は多岐にわたるわけですが、私たち土地家屋調査士にかかわる問題としては、次のようなことが指摘されています。
この「登記簿と台帳の一元化」こそが、「不動産の表示に関する登記」という領域をつくったものであり、それによって土地家屋調査士の存在と業務が大きな転換を遂げて今日に至っているわけですので、自らの存立基盤そのものを顧みる視点をも含んて、このような指摘を受け止める必要があります。
所有者不明土地問題は、日本の土地制度そのもののもたらす問題ですので、その解決のためには多岐にわたる問題点を解決していかなければなりません。私たち土地家屋調査士は、土地にかかわる専門家の一人としてその一翼をになっていかなければならないわけですが、同時に「所有者不明」に起因して現実に生じる具体的な問題に対して、現実的な解決の方策を、自分たちの固有の業務領域においても目指していかなければなりません。
「土地境界問題」が、そのような領域の問題になります。
本書で紹介されている石川県小松市の調査によると、森林所有者7367人に調査票を発送したところ950人(12.9%)には郵便が届かず差出人戻りになり(所有者不明)、回答のあった2554人のうち「所有している森林の場所がわからさい」とする回答が570人(23%)もあった、ということです。
所有している森林自他がどこにあるのかわからないわけですから、その「境界」がどこにあるのか、わかるはずもありません。森林自体の所在はわかるにしても、その境界がどこであるのか、ということについての認識がない人はさらに多いことでしょう。
このような土地についての境界を確認しようとするときに、「所有者の立ち合いを求める」ということに意味があるとは言いにくいでしょう。これまでの隣接者との「立会」に頼った「境界確認」のありかたを根本的に見直す必要があるのだと思いますし、実務家としてその具体的なあり方を提言する必要があるのだと思います。
・・ということは、「所有者者不明」に起因する「境界確認不能化」という事態に対して、「固定資産税情報を利用しての隣接地所有者の探索可能化」という方策ぐらいしか思い浮かばなかったわが業界の認識の程度というものを問い直す必要がある、ということでもあるのだと思います。
最後に、所有者不明土地問題が実に根の深い多岐にわたる問題であることが示されれば示されるほど、出口がどこにあるのかがわからず、絶望的な気分にもなってしまうのですが、それに対して本書で「先進諸外国」でのありかたが示されていることが参考になります。よく「実証実験」ということが言われますが、よその国でわが国と違う制度をとっておこなわれていることは「壮大な実証実験」なのであり、そこからさまざまなことを引き出しうる可能性を持つものなのだと思います。先日の日調連総会で、「諸外国の研究は不要」というような意見が出され、気分的にそれに賛成する向きも強くある、ということのようなので、「やはりそのようなことはない」ということで、蛇足的に思ったところです。
とあるように、「所有者不明土地」問題をテーマとしたものです。
私たち土地家屋調査士にとっても「必読」の本だと思います。是非、読んでいただきたいと思います。
「所有者不明土地」問題については、近年ようやくその重要性が認識されるようになった問題であり、「全国の私有地の約2割はすでに所有者の把握が難しくなっている」と言われています。
なぜこのような問題が起き、そして放置されてきてしまったのか、ということについて、著者は
「現在の日本の土地制度は、・・地価高騰や乱開発など『過剰利用』への対応が中心であり、過疎化や人口減少に対応した制度になっていない。『所有者不明化』は、こうした社会の変化と現行制度のはざまで広がってきた問題である。」
としています。「日本の土地制度」そのものが問題になるわけですから、問題は多岐にわたるわけですが、私たち土地家屋調査士にかかわる問題としては、次のようなことが指摘されています。
「1960年の登記簿と台帳の一元化は、日本の土地制度の大きな分岐点になった。それは、土地所有者の把握を国が行わなくなったからである。」「こうした登記簿と台帳の一元化は、それまで土地台帳が独立して担ってきた土地の物理的現状の把握という公的な役割が、私的な権利を保護するための登記制度に吸収された過程だったともいえる。」土地の測量の意味も、国の税務の基礎情報の把握という公的なものから、個人の権利の客体(対象)を明確にするためのものに大きく変わった。」「半世紀以上前の登記簿と台帳の一元化は、いまの『所有者不明化』問題にもつながる大きな分岐点だった。
この「登記簿と台帳の一元化」こそが、「不動産の表示に関する登記」という領域をつくったものであり、それによって土地家屋調査士の存在と業務が大きな転換を遂げて今日に至っているわけですので、自らの存立基盤そのものを顧みる視点をも含んて、このような指摘を受け止める必要があります。
所有者不明土地問題は、日本の土地制度そのもののもたらす問題ですので、その解決のためには多岐にわたる問題点を解決していかなければなりません。私たち土地家屋調査士は、土地にかかわる専門家の一人としてその一翼をになっていかなければならないわけですが、同時に「所有者不明」に起因して現実に生じる具体的な問題に対して、現実的な解決の方策を、自分たちの固有の業務領域においても目指していかなければなりません。
「土地境界問題」が、そのような領域の問題になります。
本書で紹介されている石川県小松市の調査によると、森林所有者7367人に調査票を発送したところ950人(12.9%)には郵便が届かず差出人戻りになり(所有者不明)、回答のあった2554人のうち「所有している森林の場所がわからさい」とする回答が570人(23%)もあった、ということです。
所有している森林自他がどこにあるのかわからないわけですから、その「境界」がどこにあるのか、わかるはずもありません。森林自体の所在はわかるにしても、その境界がどこであるのか、ということについての認識がない人はさらに多いことでしょう。
このような土地についての境界を確認しようとするときに、「所有者の立ち合いを求める」ということに意味があるとは言いにくいでしょう。これまでの隣接者との「立会」に頼った「境界確認」のありかたを根本的に見直す必要があるのだと思いますし、実務家としてその具体的なあり方を提言する必要があるのだと思います。
・・ということは、「所有者者不明」に起因する「境界確認不能化」という事態に対して、「固定資産税情報を利用しての隣接地所有者の探索可能化」という方策ぐらいしか思い浮かばなかったわが業界の認識の程度というものを問い直す必要がある、ということでもあるのだと思います。
最後に、所有者不明土地問題が実に根の深い多岐にわたる問題であることが示されれば示されるほど、出口がどこにあるのかがわからず、絶望的な気分にもなってしまうのですが、それに対して本書で「先進諸外国」でのありかたが示されていることが参考になります。よく「実証実験」ということが言われますが、よその国でわが国と違う制度をとっておこなわれていることは「壮大な実証実験」なのであり、そこからさまざまなことを引き出しうる可能性を持つものなのだと思います。先日の日調連総会で、「諸外国の研究は不要」というような意見が出され、気分的にそれに賛成する向きも強くある、ということのようなので、「やはりそのようなことはない」ということで、蛇足的に思ったところです。