面白い本でした。・・・と言うか、けっして「面白い」とは言えないような現実を伝えている本なのですが、知っておかなければならないことを伝えてくれているものだと思いました。
「トランプではなく、トランプという怪物を支持する、いや、支持してしまう現代アメリカに関心を持った」という著者が、トランプが大統領選挙で大勝した地域を中心に1年間かけて取材したルポです。そこで伝えられる事実は、いささかショッキングです。
たとえば、「ラストベルト(さびついた工業都市)の象徴的な街」と言われるオハイオ州のある街で、去年の元日に次のように言っていた人がいます。
2か月でこのような変化が起きたことが、その後さらに続き、8か月後の本選挙での「トランプ当選」に至ります。
このようなことが起きてしまうのは、「民主党は勤労者から集めたカネを、本当は働けるのに働こうとしない連中に配る政党に変わっていった」(元民主党員尾トランプ支持者)という認識によるところが大きいようです。
ここで言われる「本当は働けるのに働こうとしない連中」というのは、「不法移民」とか向けられる言葉でもありますが、さらには「エスタブリッシュメント(既得権層)」に向かうものであるようです。政党に関係なく、いったん『既得権層』との認識が広まってしまうと、もう挽回が不可能」になった、と分析されます。
それは、実際の利害にかかわることであるとともに、「名誉」にもかかわることです。クリントンが「トランプ支持者の『半数』は人種差別や男女差別主義者など「デプロバル(deplorable)な人々の集まりだ』と発言」(失言)したことがトランプ支持者や潜在的支持者の怒りを書き立てた、と言われています。「オバマ大統領にもヒラリーにも『あなたに必要なことを、私はあなた以上に知っている』という姿勢を感じる。私はそれが大嫌いです」と言う人も出てくるわけです。
そのような怒りが、「かつての豊かな暮らしが終わる、低所得層に転落しそうだ、という不安を抱くミドルクラス」を「『規格外の行動力を持った指導者に変えてほしい』という願望」へ向かわせるのであり、それが「トランプ」になった、というわけです。
アメリカの人々が、あのトランプを大統領に選んだ、ということは、本当に信じがたいことなのですが、本書を読むとその理由が少しわかったような気がします。「エスタブリッシュメント」という言葉は、辞書を引くと「既存の体制」とか「支配層」などと出てくる言葉ですが、それがまさに「既得権層」になってしまい、国民のことを顧みなくなった時に、「民主主義」はこのような「抵抗」をする、ということなのでしょう。
それが「民主主義の健全さ」をしめすものにとどまり、それ以上の大きな悲惨な事態をまねかないことを望むばかりです。
「トランプではなく、トランプという怪物を支持する、いや、支持してしまう現代アメリカに関心を持った」という著者が、トランプが大統領選挙で大勝した地域を中心に1年間かけて取材したルポです。そこで伝えられる事実は、いささかショッキングです。
たとえば、「ラストベルト(さびついた工業都市)の象徴的な街」と言われるオハイオ州のある街で、去年の元日に次のように言っていた人がいます。
「アメリカ人はそんな人間が好きだ。だから、トランプが当選する可能性は大きい」「でも個人的には、それが正しい選択とは思わない。彼が良い政治家になれるとも思わない。」「まだ誰に投票するか真剣に考えていないけど、トランプではないのは確かだ。彼のことをオレは好きになれない。」
とてもまともな考え方です。しかし、その人が2か月後には「オレ、やっぱり(予備選で)トランプに投票したよ」となったのだそうです。2か月でこのような変化が起きたことが、その後さらに続き、8か月後の本選挙での「トランプ当選」に至ります。
このようなことが起きてしまうのは、「民主党は勤労者から集めたカネを、本当は働けるのに働こうとしない連中に配る政党に変わっていった」(元民主党員尾トランプ支持者)という認識によるところが大きいようです。
ここで言われる「本当は働けるのに働こうとしない連中」というのは、「不法移民」とか向けられる言葉でもありますが、さらには「エスタブリッシュメント(既得権層)」に向かうものであるようです。政党に関係なく、いったん『既得権層』との認識が広まってしまうと、もう挽回が不可能」になった、と分析されます。
それは、実際の利害にかかわることであるとともに、「名誉」にもかかわることです。クリントンが「トランプ支持者の『半数』は人種差別や男女差別主義者など「デプロバル(deplorable)な人々の集まりだ』と発言」(失言)したことがトランプ支持者や潜在的支持者の怒りを書き立てた、と言われています。「オバマ大統領にもヒラリーにも『あなたに必要なことを、私はあなた以上に知っている』という姿勢を感じる。私はそれが大嫌いです」と言う人も出てくるわけです。
そのような怒りが、「かつての豊かな暮らしが終わる、低所得層に転落しそうだ、という不安を抱くミドルクラス」を「『規格外の行動力を持った指導者に変えてほしい』という願望」へ向かわせるのであり、それが「トランプ」になった、というわけです。
アメリカの人々が、あのトランプを大統領に選んだ、ということは、本当に信じがたいことなのですが、本書を読むとその理由が少しわかったような気がします。「エスタブリッシュメント」という言葉は、辞書を引くと「既存の体制」とか「支配層」などと出てくる言葉ですが、それがまさに「既得権層」になってしまい、国民のことを顧みなくなった時に、「民主主義」はこのような「抵抗」をする、ということなのでしょう。
それが「民主主義の健全さ」をしめすものにとどまり、それ以上の大きな悲惨な事態をまねかないことを望むばかりです。